229 / 253
第八章:エスペランサ動乱編
第二百二十一話 手遅れ
しおりを挟む――ルルカ達を救出してからすでに三日が経過していた。治療してすぐにも動ける『還元の光』の光ではあるが、国王やジェイグが(主にリファ)を心配し、大事を取ろうと言ったので俺達は城に厄介になっていた。
魔王であるフェルゼン師匠やティリア、こういう場に慣れているのか芙蓉やメリーヌ師匠は臆した様子もないが、グランツやエリンは恐縮して部屋からなかなか出てこなかった。
一方、トレーネやルルカ、メリーヌ師匠はというと――
「そこじゃ、凍らされている時から肩の調子が良く無くてのう」
「カケル、次は私」
「カケルさん、スマホ借りるよー」
俺の部屋に入り浸っていた……
「……なあ、ちょっと騎士さん達の目が痛いからもうちょっと自粛してくれないか……? 女性をとっかえひっかえしているとかひそひそされているんだが……」
「言わせておけばええ。男の嫉妬など醜いものじゃ」
「私達はカケルのせいでケガをした。だから癒してもらわないと困る。ねえ、へっくん?」
「~!」
コクコクと頷くハニワに若干イラっとしつつ聞いていると、ルルカがスマホを机に置いてこっちへ来る。ちなみにパジャマ姿だったりする。
「そうだよー。リファは来れないから一人少ないし、いいんじゃないかな?」
「でもケガは治しただろう?」
「う、いたたたた」
「~!?」
俺が言うと、トレーネがわざとらしくお腹の辺りを抑えながらベッドへうずくまる。絶対大丈夫なんだけど、こうリアクションされると心が痛い。
こうなったらアレを使うしかないか……
<あ、カケル様……!>
ナルレアが何か言いかけたが、とりあえず先にこの三人を何とかするのが先だ。意を決して俺は三人に向かって告げる。
「……その、お前達の好意は分かっている。分かっているんだが……俺はその気持ちに応えられない……! だから、諦めておれから離れてくれ!」
言った! 決まった! ハッキリ言ってやったぞ! あの村娘、リンデから分かったことだが、こっちに気が無いことをハッキリ告げることで『魔王のフェロモン』から解放することができるのだ。
スキルで好意を操るのは良くない。後でリファにも言うとして、これで俺から離れてくれるだろう。
……と、思っていたのだが!
「何を言うておるのじゃ? 前にも言ったが、わしの復讐を止めさせておいてあげく若返らせておいてはいさようならは無いじゃろう? お主はその責任があるのじゃ」
パキィン!
「へぶ!?」
謎の力で俺は弾かれ鼻血を出す。続けてトレーネが口を開く。
「私はカケルに命を救われた。私はそのお礼をしたい。だからいつまででも、カケルが私を嫌いでも何かを返す為に追いかける。必要ならこの体を使ってもいい」
「ごべ!?」
またも何かに殴られたかのように脳が揺らされ、鼻血がパタパタと飛び散って行く。そこへルルカが上目づかいで俺に言う。
「……最初はスカートは覗くし、お嬢様のお願いを突っぱねたりして変な人だなぁとしか思っていなかったけど、一緒にいると楽しいし、優しい人なんだよね。アヒルにされた時も必死で戻してくれたし」
「……」
「ボクは『魔王のフェロモン』とかいうスキルなんて関係なく、カケルさんが好きだよ?」
「その感情がすでに操られているかもしれないじゃないか」
「ううん、それはないよ!」
何故か誇らしげにルルカが肯定すると、鈍器で殴られたかのようなダメージを受けた! あれだ、『ガーン』ってやつだ。後、鼻血がすごいことになっている。
俺が頭を押さえてクラクラしていると、ナルレアが慌てて声をかけてきた。
<ああ、遅かったですね!? 『魔王のフェロモン』ですが、スキルを調査したところ『相手が本当にカケル様を想った場合』はもちろん解除されません。これが嘘から出た誠……>
うまいこと言ってないで!? 何とかならないのか?
<こればかりは……でもスキルで好かれたわけじゃなくて良かったじゃないですか! 芙蓉様もきっとそうだと思います!>
これ以上増えてたまるか!? 俺は脳内でナルレアと格闘していると、ずいっとルルカが顔を赤くして言う。
「……ダメ、かな?」
「ずるいよその顔!?」
「フフフ、お主、こういうの好きなんじゃろ? 洞窟で過ごしていた時の寝言は忘れんぞ?」
「あ!? 柔らかい感触が背中に!? あと、俺って何言ってたの!?」
「カケルはエロい。もとい偉い。すぐに手を出さないところもいい」
ぴったりとくっついてくるトレーネと師匠。
「嫌いってわけじゃないんだ……ただ、俺は魔王になっちまったから、この先……ああ、ダメだ……もう何がなんだ、か……」
ドサリ……
「きゃー!? カケルさん! カケルさん!?」
「むう、いいところじゃったのに……」
「このまま襲う?」
「それはちょっとダメだと思うよ、トレーネちゃん……でも、押せばいけそうだよね」
「何もかも終わったら国のしがらみがないアウグゼストでみんなで暮らせばええじゃろ。あそこなら多妻でも文句は言わん」
「それいい」
遠ざかる意識の中で俺は最終的に誰かを決めないと体がもたん……? などと考えていた。
◆ ◇ ◆
<道中>
「よし、フォレストボアなら栄養もあるし肉も結構取れるかな」
「うむ。魔法無しでよくぞ頑張った」
フェアレイターの訓練の一環として、魔法を使わず魔物を倒すということを行っていた。クロウはその期待に応え、最初にカケルを苦戦させたフォレストボアを仕留めてみせた。フェアレイターが肉を切り分けているのを横で学習しながら、気になっていたことを尋ねる。
「……どうして僕をこっちに回したんだい?」
「今、城に戻っても修行は難しいじゃろう。実戦経験を積むのと、この行軍はいい訓練になる」
「そうかもしれないけどさ……」
「ごほ……ごほ……ふん」
クロウが続けて言いかけた時、フェアレイターが咳き込み、血をぺっと吐き出した。
「え!? 師匠、あれは演技じゃなかったのか!?」
「……見ぬいておったか……そのつもりだったんじゃが、かなり体が弱くなってきたようじゃ」
「破壊神の力を持っているのに、そんなことが?」
「うむ。わしとネーベル、そしてクリーレンという光の力を持つ者は元は人間。月島影人のように不死に近いがそうではない。というのも、エアモルベーゼがくれたのは常人よりも強い力と寿命なだけで、普通に病気になったりするのじゃ」
クロウがごくりと唾を飲みこみ、恐る恐る尋ねた。
「じゃ、じゃあもしかして師匠……」
「うむ。体はもう病魔に侵されておる。その前に、お前にわしの技を全て託さねばと思ったのじゃ」
するとそこで後ろからグラオザムから声がかかる。
【その小僧はデヴァイン教徒……アウロラの手の者だぞ? いいのか?】
「どういうこと?」
「……クロウなら、と思っておる」
フェアレイターはゆっくりと目を閉じて、語り出す――
10
あなたにおすすめの小説
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
【本編完結】転生隠者の転生記録———怠惰?冒険?魔法?全ては、その心の赴くままに……
ひらえす
ファンタジー
後にリッカと名乗る者は、それなりに生きて、たぶん一度死んだ。そして、その人生の苦難の8割程度が、神の不手際による物だと告げられる。
そんな前世の反動なのか、本人的には怠惰でマイペースな異世界ライフを満喫するはず……が、しかし。自分に素直になって暮らしていこうとする主人公のズレっぷり故に引き起こされたり掘り起こされたり巻き込まれていったり、時には外から眺めてみたり…の物語になりつつあります。
※小説家になろう様、アルファポリス様、カクヨム様でほぼ同時投稿しています。
※残酷描写は保険です。
※誤字脱字多いと思います。教えてくださると助かります。
Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜
橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?
転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!
nineyu
ファンタジー
男は絶望していた。
使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。
しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!
リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、
そんな不幸な男の転機はそこから20年。
累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!
おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。
お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる