俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪

文字の大きさ
230 / 253
第八章:エスペランサ動乱編

第二百二十二話 後継者クロウ

しおりを挟む
 
 
 <リンデの村近くの森>


 ガッ! ガッ! ドォォォン……!

 グルォォォ……

 クロウの攻撃でゴブリン達が息絶える。帰り道の森でゴブリンが住処を作ろうとしていたので、これをクロウ一人に壊滅させる訓練を課していた。

 「そうじゃ。その感覚を忘れるな」

 「分かった。でもこれじゃ僕、神官じゃなくなっちゃうよ……聖女様、ごめんなさい!」

 村へ戻りながら戦闘技術を学ぶクロウも、この五日間でかなりの技能を習得した。だが、日に日に力が上がるのと引き換えに、神官というよりはすでに格闘家の域に達していた。

 「はっはっは、そう言うな。力はあって困るものではないぞ? 使い方次第で守りたいものを守れるようになる。正直なところ、魔王の力を持った男がカケルで良かったと思っておる」

 「ふうん? 悪いヤツじゃないのは確かだけどさ」

 「そこじゃ。力を持つ者は総じて顕示欲に溺れることが多い。特にあやつの寿命を出しいれする力は地味だが、かなり強力じゃ」

 フェアレイターがゴブリンの死体を埋めながら言う。それにクロウは眉を潜めて反論した。

 「うーん、確かに若返らせたりできるみたいだしから凄いと思うけど、そんなにかな?」

 「うむ。あやつが積極的に使わないから脅威が分からんが、例えば人知れず道ですれ違うだけで殺せる暗殺者や、指名手配されている者を老いさせてから国外へ連れ出し、元に戻すこともできる。そして、老いさせたものから元に戻りたければもっと金を出せ、なども考えられるな」

 「な、なるほど……」

 「大なり小なり、人は楽になりたかったりお金が欲しかったりするものじゃ。しかし普通の冒険者として生きる道を選んだのは凄いと思う」

 カケルの評価が高いのはクロウ尊敬しているため鼻が高いと思いながら聞いていたが、ふと気になったのでフェアレイターへ尋ねる。

 「でもカケルの話と僕の力の話は何の関係があるんだい? これ以上筋肉がついたらアニスに嫌われそうで嫌なんだけど……」

 するとフェアレイターがピタリと動きを止め、ゆっくりとクロウへ向いた。

 「……関係は、ある。お前次第ではあるが、実を言うとわしの力をお前に託したいと考えておる。だがお前はまだ若い。力を得ればもしもということもあろう」

 「力……って、破壊神の力!? そ、そんなことできるのかい!? と、というより僕に渡したら師匠はどうなるんだ!」

 クロウが慌ててフェアレイターに言うと、木に背中を預けて聞いていたグラオザムが口を開く。

 【ふむ。無論、朽ちる。元々300年も前の人間だからな。それに病気が一気に進行してその場で死ぬ可能性が高いだろう】

 「そんな……!? だ、だったらそんな力は要らないよ! このまま生きていけばいいじゃないか」

 「そうもいかんのだ……見よ」

 「う……!?」

 フェアレイターが服をまくり上げると、へその辺りがどす黒く変色していた。服で隠している部分にちらほらと黒い斑点が広がっていた。クロウ達には分からなかったが、デルマドロームという内臓どこかが侵されている証拠だった。

 「……破壊神の力を持ったしもべなのに病気には勝てないのかい……?」

 【ふむ。あくまでもべ―スは『人間』だから必然と言える。私のようにエアモルベーゼ様から造られた存在であればそんなことは無いのだがな】

 「あとどれくらい持つんだ?」

 「もう長くは無かろう。月島影人の戦いで無理をしたせいもある。このままでひと月もつかどうか……その前に力を託さねばならん。そしてわしを心配してくれるお前に託したい。受けてくれるか?」

 クロウは俯いて考えていたが、やがて顔を上げて頷いた。

 「……分かったよ」

 「すまんのう。エアモルベーゼが力を取り戻さないのか戻せないのか、それは分からんがこちらには拒否権がある。もしやつと戦うことになっても操られたりはせんから安心せい」

 「うん。アニスには会っていくのかい……?」

 クロウが短く尋ねると、フェアレイターが首を振って答えた。

 「城に戻る前に力を託す。恐らくすぐに死ぬじゃろうから、わしは旅に出たとでも言ってくれ」

 「そんな……」

 クロウがぐっと顔を歪めると、フェアレイターはクロウの頭に手を置いてフッと微笑んだ。

 「だが、まだお前には教えることがある! それまでは死ねんぞ! ふわっはっはっは!」

 【……】

 
 ――やがてクロウ達は村へ到着し、ヘルーガ教徒達を無事引率することができた。話し合いの結果、元々イヨルドと一緒に出奔した教徒達と合流する者と、村に残る者が半々になるということになり、さらに町までの引率を頼まれるクロウ達だった。

 しかし――


 ◆ ◇ ◆


 <トーテンブルグ城:謁見の間>

 
 「この度は申し訳ありませんでした」

 『魔王のフェロモン』がルルカ達が色んな意味で克服してからさらに二日――

 休息を終えて、俺達は国王に呼び出されて謁見の間へ赴いていた。開口一番、俺は今回の騒動について謝罪を述べる。

 「うむ。元に戻ったようでなによりだ。リファルも傷一つなく治療してくれたこと、感謝する」

 「いえ、あれは俺のせいですから……」

 「殊勝よな。月島影人なる人物と破壊神が仕掛けた罠というのに。リファルの命を盾に要求を飲ませることもかのうだろうに……いや、むだ話はいいか。休養している間にウェスティリア殿と芙蓉殿から聞いている。この世界いおいてお主がイレギュラーであること、そして魔王と呼ばれる存在は実はお主一人であることをだ。芙蓉殿が初代光の勇者というのも聞いた。それで女神アウロラを復活させるということだが……?」

 「ええ。一応ここに魔王……アウロラの英雄と破壊神エアモルベーゼの力が集まりつつあります。残りはフエーゴの封印のみ。それが解ければ何かしらの動きがあると思います」

 そこでグランツが一歩前へ出てから膝をついて国王へ告げる。

 「今は私達の知り合いであるパーティ"ブルーゲイル”がフエーゴの封印へ向かっています。何かあればユニオン経由で知らせが来るはずですから、しばらくお待ちください。昨日まではまだなにもありませんでしたが……」

 収穫の無いグランツが悔しそうに言うのに続けてエリンが喋り出す。

 「それと、ヴァント王国のレリクス王子もこの件は存じており、協力していただけることになっています」

 「(あの事件だな。おめぇも関係あるなあ)」

 エリンがフェルゼン師匠がへっと笑いながらボソッと横に居るシュラムに笑いかけると、シュラムは嫌そうな顔をして睨み返していた。

 気にせず俺は続けて国王へと話す。

 「エリアランドのハインツ国王や、闇狼の魔王ベアグラートも女神の封印は知っているので協力出来ると思います」

 「なんと……お主たち顔が広いな……」

 「あちこち旅してきましたからね。それはそうと、この天井どうしたんですか? 大穴が開いてますけど」

 「お前がやったんじゃないか!?」

 「え!? そうなの!?」

 ジェイグの言葉に驚いたその時だった。


 ゴゴゴゴゴ……

 「なんだ? 地震か? おわ!?」

 ゴゴゴゴゴゴゴ……

 「大きいです! みなさん穴の開いた天井から離れて!」

 ティリアが叫び散り散りになると、直後天井が少し崩れてきた。ティリアが叫ばなければ危うく誰かの頭が潰れていたかもしれない。

 そして――


 フッ


 ついさっきまで明るかった空が、一気に闇に包まれた。







                                      NEXT Last Episode……

しおりを挟む
感想 586

あなたにおすすめの小説

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

【本編完結】転生隠者の転生記録———怠惰?冒険?魔法?全ては、その心の赴くままに……

ひらえす
ファンタジー
後にリッカと名乗る者は、それなりに生きて、たぶん一度死んだ。そして、その人生の苦難の8割程度が、神の不手際による物だと告げられる。  そんな前世の反動なのか、本人的には怠惰でマイペースな異世界ライフを満喫するはず……が、しかし。自分に素直になって暮らしていこうとする主人公のズレっぷり故に引き起こされたり掘り起こされたり巻き込まれていったり、時には外から眺めてみたり…の物語になりつつあります。 ※小説家になろう様、アルファポリス様、カクヨム様でほぼ同時投稿しています。 ※残酷描写は保険です。 ※誤字脱字多いと思います。教えてくださると助かります。

Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。

処理中です...