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最終章:その果てに残るもの
第二百二十四話 迫る足音
しおりを挟む「息はしているな……」
「ええ、助かったみたい。ありがとうカケルさん……クリーレンはこっちに来てからの私の友達だったのよ」
「そうだったのか?」
「うん。大丈夫、息はしているわね」
ネーベルとクリーレンは目を覚まさないが、何とか一命を取り留め。騎士達がベッドまで運んでくれた。一連の流れが終わった後、ティリアが空から帰ってきた。
「おかえり、どうだった?」
「空から見る限りだと特に何も無いですね。お昼前なのにずいぶん静かでしたけど……」
それを聞いて、国王が呻くように声を出す。
「むう……とんでもないことになったようだな……女神アウロラが封印された仕返しをするというのか?」
「あの口ぶりだとそうでしょう。何にせよ俺達は『世界の中心』とやらに行ってみます」
俺がハッキリ言うと、リファが寄ってきて俺に尋ねてきた。
「場所は分かるのか?」
「……大丈夫、それは分かるわ。カケルさん、地図はある?」
「ん……これでいいか?」
芙蓉に言われるまま地図を広げると、芙蓉はペンを取り出して俺達のいるエスペランサ国を指しながら話を続ける。
「クリーレンの封印があったのはここ……で、ベオグラートの国にあった封印がここ……他に封印の位置が分かる人はいる?」
「俺のいるヴァント王国はこのへんだったな」
「エリアランドはこの村の近くでしたね」
芙蓉とフェルゼン師匠、ティリアがそれぞれ知っている場所を記載し、極北に住むラヴィーネもそれにならう。
「わらわがあのアホを目覚めさせたのはここじゃ。で、これに何の意味がある?」
「全部で封印は六つ。フエーゴの封印は多分このあたり……」
芙蓉がそこまで位置を書き、地図を上からみていた俺は気付く。
「……なるほどな」
「どうしたのカケルさん?」
納得した声を出した俺にルルカが尋ねてくるが、それには答えず、芙蓉からペンを取り、線を描いていく。
「ここをこうして……こう結べば……」
「あ!」
リファが声をあげたと同時に完成する。
「六芒星……」
「だな。点をすべて結べばそうなる……そしてその中心は――」
地図のほぼ中央に位置する島をペンで指すと、ティリアがハッとして俺に振り向いた。
「ここってアウグゼストじゃありませんか!?」
「そう。あの聖堂の奥深く……そこが最後の封印の在り処よ」
芙蓉が目を瞑って静かに呟くが、そこに違和感を感じて俺は芙蓉へ聞いた。
「最後……? まだ封印は解かれていないのか? それに、お前は知っていたんだな?」
「うん。封印自体はそれぞれの勇者がやったんだけど、私だけはアウロラとエアモルベーゼの決戦に立ち会っていたわ。クリーレンが大人しく封印されたせいもあってね」
元々クリーレン自体、貴族のお家が別の貴族の罠にかかって落ちてしまった恨みで破壊神の力を手にしたのだそうだ。だけど、それが済めば特に世界をどうこうしたいわけでもないので、エアモルベーゼの力を削ぐため、芙蓉に大人しく封印されたのだそう。
「それを見届けた後、アウグゼストを立ち上げ、聖堂を作った。私は初代聖女となる人を見つけた後、各地を旅してまわったのよ。いつしか勇者が魔王になり、恐怖の象徴となっていた原因を探る旅に変わったけどね」
「そうだったのか」
「結局のところヘルーガ教徒が撒いた、という感じで文献が残っていたけど、復活したアウロラがあれじゃ、どうもキナ臭い感じがしてきたわ。どっちにせよ、私達の目的であるアウロラは目を覚ました。すぐにでもアウグゼストへ向かいましょう」
「うむ。わしらも勿論ついて行くからの?」
「……あんまり無茶しないでくれよ?」
「大丈夫。カケルとならきっと」
「クロウ君とわたしも役に立つよ」
アニスまでそんなことを言い出し、仕方ないと俺が肩を竦めた瞬間、異変が起きた。王妃が苦しそうにして、玉座の手すりに体を預けるように倒れたのだ。
「どうした!? ……む……!? ごほ……これは……」
「あ、あなた……く、苦しい……」
「父上! 母上! あ、兄上まで!?」
リファが慌てて両親の介抱へ向かうと、脇でジェイグ、果ては騎士達も膝をついて苦しみ始めた。
「一体……」
グランツがジェイグを支えると、ジェイグが咳き込みながら口を開く。
「ごほ……急に力が抜けた様になった……分からんが、身体から魔力が抜けているゆな感じがする……」
「魔力が!?」
「まさか!」
ティリアが思い出したように空へ飛び、町へ出て行く。俺達も嫌な予感がし、その後を追う。
「ジェイグ、悪いが俺達はアウグゼストへ行く! なんとか持ちこたえろ」
「あ、ああ……任せる……ごほ……」
「父上、母上、私も向かいます。必ず助けます……!」
「う、うむ。私達も動けぬわけではない……死ぬでないぞ……リファル」
「はい! 行ってきます!」
◆ ◇ ◆
「ティリア!」
「あ……ああ……カケルさん! ま、町のみんなが!」
「う……!?」
広場に降り立ったティリアに駆け寄ると、散歩していた人達だろうか? あちこちで呻き声を上げていた――
「ぐ、うう……力が抜けていくみたいだ……」
「き、気持ち悪い……」
阿鼻叫喚。その言葉が一番合うと思う。昼前なのに静かなはずだ、町中で苦しんでいる人がいるのだから。しかし、そんな中でも動き回れている人もいることに気付く。
「全員、ってわけでもないのか?」
「そういえばボク達も大丈夫だよね」
そこでメリーヌがポツリと口を開く。
「……恐らくじゃが、魔力量の差じゃろう。少ない者から徐々に弱っていうとみた」
「これは一刻を争う事態だ、アウグゼストへ行くぞ。ファライディに乗れ……るかな……」
「むう、わらわは魔王として行かねばならんぞ!」
俺、芙蓉、ルルカ、ティリア、リファ、アニス、グランツ、エリン、トレーネにラヴィーネ……割とオーバーワークか? ファライディ次第だと思うけど、と考えていた所でグランツから声がかかる。
「クロウ君はどうしますか?」
「そういやまだ戻ってきて無いな、ユニオンと城に伝言を――」
「その必要はないよ」
「あ、クロウ君、おかゑり。あれ、お爺ちゃんは?」
俺が声を出すと、広場にクロウが現れ、アニスが片手を上げて出迎えていた。やはりというか、爺さんとグラオザムの姿は無かった。
「無事だったかクロウ。爺さんは――」
「うん……戻ったよカケル。……アニス、聞いてくれ。師匠は……爺ちゃんは……死んだ……」
「え?」
アニスがクロウの手を握ってポカンと口を開ける。クロウは涙をこらえながら、アニスの手を握り返してから続ける。
「爺ちゃんの最期の言葉だ。ぼ、僕とアニスに会えて、良かっ、たって……う、うう……」
「嘘……お爺ちゃん……」
「アニス……!」
無表情な顔はいつも通りだったが、アニスの目から涙が毀れ落ちた。
そしてクロウを抱きしめ――
「死んじゃった……お爺ちゃん……う、うう……うわぁぁぁぁん!」
「うう……うううう……」
皮肉にも、今まで感情の無かったアニスが大声で泣いたのだった――
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