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最終章:その果てに残るもの
第二百二十五話 アウロラの元へ
しおりを挟む「泣きやんだのか?」
「はい。そのまま泣き疲れて眠ってしまいました……フェアレイターさんはクロウ君とアニスちゃんを大事にしていましたし、二人も本当のお爺さんみたいに接していましたからね……」
ティリアが残念そうに目を伏せて俺に言う。
帰ってくるはずの人が帰ってこないのは受け入れがたい――。ただ、アニスは両親が目の前で殺されているから、死ぬところを見なかったのは良かったのかもしれないなと思う。結果論だが、ショックで感情が戻ったのも爺さんの思惑に入っていたような気もする。
「で、どうすんだカケル?」
「ああ、ちょっとファライディに交渉してみるから待っていてくれ」
とりあえず一度城へ戻り、町の人達の様子を国王に伝えてから庭にいるファライディに声をかけるため集まっていた。グランツとエリンはユニオンでニド達が何か残していないかと、俺達はアウグゼストへ向かうこと伝言してもらうため今は不在だったりする。
「寝ているところすまない。ファライディ、大人10人、子供3人乗せられるか?」
【ガオウ(無理っす)】
即答だった。でしょうね。
「だよなあ。月島の要塞から帰って来るときはルルカとリファ、トレーネにメリーヌは居なかったからな……」
月島の要塞から帰る時より明らかに多くなっているのだ。
「カケル、私を子ども扱いした?」
「吾輩が数に入っていないぞ」
「~!!」
とりあえずトレーネ達は無視して、今は移動方法だ……船で行くにはちと遠いし……
「私は飛んでいきますけど……」
「それだと魔力が勿体ないわ。メリーヌさんの言うとおりなら、アウロラは魔力を吸収しているんだし」
【ガガウ(それなら、何か大きな籠のようなものはないですかね? 別に力が無いってわけじゃないんでさ。背中に乗れる人数に限界があるってだけで)】
「おお、なるほど! って今から造れるものでもないな……」
「何て言ってるの?」
俺が頭を抱えているとルルカが寄ってきて話しかけてきた。
「背中にこの人数は無理だから何か荷車みたいなのを作ってくれってさ。馬車の荷台に紐でも結ぶか?」
「うーん、そうだね。ボクがちょちょいっと作って来るよ」
「手伝うか?」
「ううん、大丈夫! ちょっと待ってて」
ルルカが鼻歌交じりにいそいそとどこかへ去って行き、入れ違いにグランツとエリンが戻ってきた。何やら慌てた様子だがどうしたんだろうな?
「カケルさん! フエーゴの神殿を解放した後、ニド達も無事に下山できたみたいです。ですが、破壊神の力を持った者は即座に消滅してしまったとか。一応アウグゼストに行くことは伝えましたが、フエーゴの人達もここと同じく倒れたり気分を悪くした人が多数出ているみたいで、アウグゼストには火焔の魔王であるグリヘイド様だけ向かうそうです」
グランツがそう報告し、続けてエリンが口を開いた。
「で、町を少し見回って来たけど芳しくないわ。命にかかわ程じゃないけど、少しずつ病気になっている、そんな感じよ」
「ううむ、いかんのう……ルルカ、急いでくれ……」
メリーヌが呟き、動けない状況の中をやきもきする俺達。適当に昼飯を食った後、まだ元気な騎士を引き連れたルルカが庭へ戻ってきた。
「お待たせ! 馬車の荷台を改造して来たよ!」
ルルカの持ってきたソレは、荷台の幌を外し、両脇の板を落ちないよう少し高めに組んでいた箱のような感じのものだった。
【ガウガウ(お、あれならいけますぜカケルの旦那。首と尻尾に切れにくい紐を引っかけてください)】
そう言いながらファライディが馬車の荷台部分の上に四つん這いになり、紐を通しやすくしてくれる。
「オッケー。よし、ファライディにロープをくくりつけるぞ!」
「おー」
トレーネが元気よく声をあげ作業に入る。騎士達も手伝ってくれて、すぐに簡易ドラゴンタクシーが完成。ファライディが少しだけ飛び上がり、荷台を浮かす。
【ガウガウ(さ、乗ってくんな! できれば誰か女の子を背中に乗せてくんな!)】
こいつは……ま、まあ運んでくれるしいいか……
「誰か背中に乗らないか? できれば女の子に乗って欲しいそうだ」
「ふえ? 何でですか?」
「聞くなティリア。男とはそういうものなのだ」
「よく分かりませんけど……私でいいなら」
【ガウ! (ありがとうございます!)】
鼻息を荒くしてファライディが頭を垂れる。早く雌のドラゴンを見つけてあげたい……
「いいらしいぞ」
「それじゃお願いしますね」
ティリアがふわりと浮かび、背中に飛び乗ると、アニスを背負ったクロウ、ルルカ、フェルゼン師匠が荷台に乗りこんでいく。
「それじゃグランツ達も」
「はい! え? 何か落ちてきます!?」
「何!?」
俺が飛び乗った後、グランツ達に声をかける。するとその直後、空から大きなものが降ってきた!
ドゴォォォォン!
グラグラグラ……
「おわ!? な、なんだ!? ……あれは……柱、か?」
「あの方向……光の神殿があった場所ですぞ」
すると近くにいたギルドラが目を細めて呟いた。
「いたのかギルドラ。それはマジか?」
「ずっといましたけどね!? ……こほん、ええ間違いなく……うぐ……!?」
「どうした?」
ギルドラが倒れ、地面に手をついて呻きはじめる。横には荷台を持ってきた騎士も苦しそうにしていた。
「く……急に力が……あの柱……良くないもののような気がします……」
「どうする? わらわが見に行っても良いぞ?」
ラヴィーネがそう言ってくれるが、魔王達はアウグゼストへ連れて行きたい。アウロラが呼んだ異世界の勇者の力を受け継いだ者達なら何らかの意味があるはずなのだ。
「……いや、このまま俺達はアウグゼストへ向かう。嫌な感覚はあるが、柱は置いておこう。ファライディ! 行ってくれ!」
俺が叫ぶと、ファライディがコクリと頷きふわりと浮かび始める。地上から離れ始めた時、庭にジェイグが飛び出してきた。
「リファルを頼むぞ魔王! あの柱は我等トーテンブルグの騎士団で調査をする!」
「……すまん! 頼んだ! 無理は絶対にするなよ!」
体調は完全ではないだろうに、ジェイグのやつはグッと親指を立てて笑っていた。もちろん全員生きて帰るつもりだ。俺も親指を立てて返す。小さくなりつつあるジェイグに、ルルカが思い出したように叫ぶ。
「何かあったら『スマホ』で連絡してね! 簡易版だから通信状態は保証できないけど、いざって時に使って!」
「お前……完成させていたのか……」
「うん。急ピッチでいくつかね。これでも賢者なんだから!」
ローブの下にあるポケットからスマホをチラリと見せながら舌をペロッと出すルルカ。大した賢者だよ、お前は。
俺達がそんな話をしていると、ある程度浮いたところで前進を始めるファライディ。全速力なら早く辿り着けるだろう……こいつには無理をさせてばっかりで申し訳ないな。俺がファライディを見ながら考えていると、横で芙蓉が呟く。
「アウロラ……真意を聞かせてもらうわよ」
ある意味この中でアウロラを一番知っているのは芙蓉だ。後で昔のアウロラがどうだったのか聞いてみるのもいいかもしれない。
そして、あの落ちてきた柱のようなものはエスペランサ国だけではなかった。各国が、蝕まれ始めていた――
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