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最終章:その果てに残るもの
第二百二十六話 始まり
しおりを挟むカケル達がアウロラの待つ聖華の都アウグゼストへ向かう中、各国も当然暗闇に覆われていた――
<ヴァント王国>
「空が急に……?」
「まだお昼前なのに」
レリクスとソシアが学院の廊下を歩いていると空が突然暗くなり、二人は窓へと向かう。
「特に変わった様子は無いか? いや、月が出ていないな。ソシア、庭へ出てみよう。嫌な予感がする」
「はい」
まだ正式ではないが、ほぼ確定となった王女候補のソシアはあの誘拐騒ぎ以降、こうしてレリクスに付き従うことが多くなっていた。それと引き換えに、対抗心を燃やしていたレムルはあまり姿を見せない。
それはともかく二人が庭に出ると同時にグラウンドで悲鳴が上がった。
「きゃあぁぁ!」
「しっかりしてー。あ!?」
「今のはネーレ先生か、グラウンドだな!」
レリクスが走ってグラウンドまで赴くと、そこで運動をしていた生徒達がバタバタと倒れている光景が目に入る。ネーレ先生は無事なようで、仰向けに寝かせたり背中をさすったりとせわしなく動いていた。
「先生、どうなされましたか!」
「あ、ああ、レリクス王子! それが空が暗くなってから急に気分が悪いって言い出して……医務室へ連れて行こうと思ったら次々と――」
「……倒れたのですね? レリクス王子、これはただごとではありません。医師を呼んできます」
「頼むよソシア」
レリクスがそう言うと、コクリと頷き再び校舎へと走る。その背中を目で追いながら、レリクスは大声をあげる。
「他に何も無い……訳は無いだろうね。ペリッティ!」
「こちらに」
レリクスが叫んだ直後にメイド服姿のペリッティはおじぎをしながらスカートの裾を摘まんで上げる。慣れたもので、レリクスは驚いた素振りも見せずにペリッティへ指示を出していた。
「町の様子を偵察を頼む。それとユニオンに何か情報が無いか確認してくれるかい? 多分だけどグランツあたりから連絡があってもおかしくない。僕は城へ戻るから、ペリッティも一時間で城へ戻って欲しい」
「かしこまりました」
バサッ!
ペリッティはメイド服を翻すと、たちまち黒の戦闘服へと変化し、スッと姿を消した。
「(結局脱ぐのか、メイド服……さて、僕も動かないといけないかな。父上に報告をしないと)ネーレ先生、ソシアが戻ってきたら僕は城に戻ったと伝えてください」
「わ、わかったわー。気を付けてねー」
レリクスは早々とグラウンドを後にし、城へと帰還するのだった。
◆ ◇ ◆
「怪しい空ね。雲も見えないし、本当に真っ暗闇ってやつかしらね」
学院を出てひた走るペリッティ。
ウェハーの町まではそれほど遠くないので、魔物と出会うことは殆どない。もし出会ったとしてもこの近辺の魔物でペリッティに敵う魔物は居ない。
「ん? あれは――」
入り口付近だと思っていた矢先、森から大きな影が飛び出しペリッティの前へ躍り出てきた。
グルルル……
「フォレストボア、か。この程度なら……」
ペリッティが速度を緩めずにダガーを両手に構えてフォレストボアへと突き進む。向こうが突進してきたら素早く飛びあがり眉間にダガーを刺せばそれで終わりと考えていた。
しかし、ペリッティの予想とは違い、フォレストボアはその場で立ちつくし、ガクガクと足を震わせており、ペリッティが近づいたその時……
グ、グルォォォ……
ズゥゥン……
大きな音を立てて倒れてしまった。予想外の出来事に、ペリッティは急ブレーキをかけて止まり、恐る恐るフォレストボアに近づいてみる。
「痙攣しているわね……泡も吹いてる。この子は多分あまり長くは持たないわね。……う?」
びくびくと震えるフォレストボアを置いてその場を去り、再び走っているとペリッティは自分の体が異変を起こしていることに気付いた。ほんの僅かだが体が重く感じたのだ。
「これは……魔力が減った? ……!?」
違和感はほんの少しと構わず町へと入ったペリッティが、違和感の正体を思いつき、先程のフォレストボアの様子を思い出す。
「魔物は魔力を吸収した動物が変化する……そして減った私の魔力……魔力が、マナが消えている……? だとしたらかなりまずいことだわ。グランツやエリンがカケルさんと出会っていればいいけど……恐らくこの暗くなった正体とも関係があるはず」
「う、おえ……気持ち悪ぃ……」
「おい、しっかりしろよ……確かに、頭が痛いな……」
見れば、町に活気がなくベンチに座ったままだったり、お互い肩を貸しあって歩く者達などが居た。学院の生徒の症状と似ている。これは間違いないとペリッティはまずユニオンへと駆けこんだ。
「ふう……だるいですね……いらっしゃいませ……あ、ペリッティさん」
「ここも結構な感じね」
「ええ……ペリッティさんは平気なんですか?」
受付の女性が辛そうな顔で尋ねるが、ペリッティはそれに答えず自分の目的を果たすため話を続けた。
「ごめんね、急いでいるの。燃える瞳というパーティのグランツって人から連絡が無いか調べてくれる? あて先は私かレリクス王子」
「あ、は、はい……ただいま……え、っと。あ、少し前に来ていますね」
「読ませて」
ペリッティがひったくるように魔法板を奪い、内容を読む。斜め読みだったが、思った通り、カケル関連。そして女神が復活したという知らせだった。以前関わったことのあるメリーヌが言うには恐らく女神アウロラが世界中の魔力を吸収して完全復活しようとしているという。
「で、カケルさん達はアウグゼストへ……なら解決してくれるかしら? 魔物は弱っているし、援護を向かわせるか王子に相談ね」
ありがとう、と外へ出ようとしたその時――
ドゴォォォン!!
「何の音!?」
慌てて飛び出すペリッティ。音の正体を確かめようと目を動かすと、家の屋根より上の角度で、巨大な柱が立っているのが見えた。
「何? あれ……ぐ!?」
柱が落ちてきた直後、ペリッティの体から魔力が急激に失われ、その場で膝をつく。外を歩いていた人たちは何人か気絶していた。
「(あれが魔力を吸っている? 嫌な感じがするわね、あれは破壊しないといけない。そんな気がする――)」
自分でこれならレリクスも危ない。ペリッティは重い足取りで今度は城を目指しはじめた。
そして、フエーゴにいるニド達にもグランツの伝言は伝わっていた――
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