俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪

文字の大きさ
234 / 253
最終章:その果てに残るもの

第二百二十六話 始まり

しおりを挟む
 
 カケル達がアウロラの待つ聖華の都アウグゼストへ向かう中、各国も当然暗闇に覆われていた――


 <ヴァント王国>


 「空が急に……?」

 「まだお昼前なのに」

 レリクスとソシアが学院の廊下を歩いていると空が突然暗くなり、二人は窓へと向かう。

 「特に変わった様子は無いか? いや、月が出ていないな。ソシア、庭へ出てみよう。嫌な予感がする」

 「はい」

 まだ正式ではないが、ほぼ確定となった王女候補のソシアはあの誘拐騒ぎ以降、こうしてレリクスに付き従うことが多くなっていた。それと引き換えに、対抗心を燃やしていたレムルはあまり姿を見せない。

 それはともかく二人が庭に出ると同時にグラウンドで悲鳴が上がった。

 「きゃあぁぁ!」

 「しっかりしてー。あ!?」

 「今のはネーレ先生か、グラウンドだな!」

 レリクスが走ってグラウンドまで赴くと、そこで運動をしていた生徒達がバタバタと倒れている光景が目に入る。ネーレ先生は無事なようで、仰向けに寝かせたり背中をさすったりとせわしなく動いていた。

 「先生、どうなされましたか!」

 「あ、ああ、レリクス王子! それが空が暗くなってから急に気分が悪いって言い出して……医務室へ連れて行こうと思ったら次々と――」

 「……倒れたのですね? レリクス王子、これはただごとではありません。医師を呼んできます」

 「頼むよソシア」

 レリクスがそう言うと、コクリと頷き再び校舎へと走る。その背中を目で追いながら、レリクスは大声をあげる。

 「他に何も無い……訳は無いだろうね。ペリッティ!」

 「こちらに」

 レリクスが叫んだ直後にメイド服姿のペリッティはおじぎをしながらスカートの裾を摘まんで上げる。慣れたもので、レリクスは驚いた素振りも見せずにペリッティへ指示を出していた。

 「町の様子を偵察を頼む。それとユニオンに何か情報が無いか確認してくれるかい? 多分だけどグランツあたりから連絡があってもおかしくない。僕は城へ戻るから、ペリッティも一時間で城へ戻って欲しい」

 「かしこまりました」

 バサッ!

 ペリッティはメイド服を翻すと、たちまち黒の戦闘服へと変化し、スッと姿を消した。

 「(結局脱ぐのか、メイド服……さて、僕も動かないといけないかな。父上に報告をしないと)ネーレ先生、ソシアが戻ってきたら僕は城に戻ったと伝えてください」

 「わ、わかったわー。気を付けてねー」

 レリクスは早々とグラウンドを後にし、城へと帰還するのだった。


 ◆ ◇ ◆


 「怪しい空ね。雲も見えないし、本当に真っ暗闇ってやつかしらね」

 学院を出てひた走るペリッティ。

 ウェハーの町まではそれほど遠くないので、魔物と出会うことは殆どない。もし出会ったとしてもこの近辺の魔物でペリッティに敵う魔物は居ない。

 「ん? あれは――」

 入り口付近だと思っていた矢先、森から大きな影が飛び出しペリッティの前へ躍り出てきた。

 グルルル……

 「フォレストボア、か。この程度なら……」

 ペリッティが速度を緩めずにダガーを両手に構えてフォレストボアへと突き進む。向こうが突進してきたら素早く飛びあがり眉間にダガーを刺せばそれで終わりと考えていた。
 しかし、ペリッティの予想とは違い、フォレストボアはその場で立ちつくし、ガクガクと足を震わせており、ペリッティが近づいたその時……

 グ、グルォォォ……


 ズゥゥン……

 大きな音を立てて倒れてしまった。予想外の出来事に、ペリッティは急ブレーキをかけて止まり、恐る恐るフォレストボアに近づいてみる。

 「痙攣しているわね……泡も吹いてる。この子は多分あまり長くは持たないわね。……う?」

 びくびくと震えるフォレストボアを置いてその場を去り、再び走っているとペリッティは自分の体が異変を起こしていることに気付いた。ほんの僅かだが体が重く感じたのだ。

 「これは……魔力が減った? ……!?」

 違和感はほんの少しと構わず町へと入ったペリッティが、違和感の正体を思いつき、先程のフォレストボアの様子を思い出す。

 「魔物は魔力を吸収した動物が変化する……そして減った私の魔力……魔力が、マナが消えている……? だとしたらかなりまずいことだわ。グランツやエリンがカケルさんと出会っていればいいけど……恐らくこの暗くなった正体とも関係があるはず」

 「う、おえ……気持ち悪ぃ……」

 「おい、しっかりしろよ……確かに、頭が痛いな……」

 見れば、町に活気がなくベンチに座ったままだったり、お互い肩を貸しあって歩く者達などが居た。学院の生徒の症状と似ている。これは間違いないとペリッティはまずユニオンへと駆けこんだ。

 「ふう……だるいですね……いらっしゃいませ……あ、ペリッティさん」

 「ここも結構な感じね」

 「ええ……ペリッティさんは平気なんですか?」

 受付の女性が辛そうな顔で尋ねるが、ペリッティはそれに答えず自分の目的を果たすため話を続けた。

 「ごめんね、急いでいるの。燃える瞳というパーティのグランツって人から連絡が無いか調べてくれる? あて先は私かレリクス王子」

 「あ、は、はい……ただいま……え、っと。あ、少し前に来ていますね」

 「読ませて」

 ペリッティがひったくるように魔法板を奪い、内容を読む。斜め読みだったが、思った通り、カケル関連。そして女神が復活したという知らせだった。以前関わったことのあるメリーヌが言うには恐らく女神アウロラが世界中の魔力を吸収して完全復活しようとしているという。

 「で、カケルさん達はアウグゼストへ……なら解決してくれるかしら? 魔物は弱っているし、援護を向かわせるか王子に相談ね」

 ありがとう、と外へ出ようとしたその時――


 ドゴォォォン!!


 「何の音!?」

 慌てて飛び出すペリッティ。音の正体を確かめようと目を動かすと、家の屋根より上の角度で、巨大な柱が立っているのが見えた。

 「何? あれ……ぐ!?」

 柱が落ちてきた直後、ペリッティの体から魔力が急激に失われ、その場で膝をつく。外を歩いていた人たちは何人か気絶していた。

 「(あれが魔力を吸っている? 嫌な感じがするわね、あれは破壊しないといけない。そんな気がする――)」

 自分でこれならレリクスも危ない。ペリッティは重い足取りで今度は城を目指しはじめた。


 そして、フエーゴにいるニド達にもグランツの伝言は伝わっていた――
しおりを挟む
感想 586

あなたにおすすめの小説

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ
ファンタジー
 2020.9.6.完結いたしました。  2020.9.28. 追補を入れました。  2021.4. 2. 追補を追加しました。  人が精霊と袂を分かった世界。  魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。  幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。  ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。  人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。  そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。  オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...