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第一章:賢者なのにアホ
その2 飛躍
しおりを挟む「浮かない顔をしてるなレーゲン。仲間はどうした?」
「……解散した」
「あ?」
「パーティは昨日解散した。だから今日から俺一人だ」
「マジかよ」
まさかの『俺一人だけの解散宣言』から一夜明けた今日、俺はギルドへ顔を出していた。
解散したとはいえ、魔王討伐を諦めた訳じゃないし金も必要だ。なんなら新しいメンバーを見つけなければならない。
正直、忙しい。
だから今日はギルドでそのあたりも相談しようと思ったのだが、顔なじみのギルド職員のディーは目を丸くしながら言う。
「はあ……あいつらはこの町でも手練れだし性格もいい。だから今回は上手くいくと思ったんだがな」
「俺が軒並み討伐してしまうのが悪いんだ。だから似たレベルの人間と組めとスミソに叱責されたよ」
「仕方ねえな。そりゃ魔王討伐を目指しているのに修行をさせないってのと同じだ。金を稼ぐだけの連中ならそれでいいが、あいつらもお前と同じで討伐目的だから、魔法で一掃したらキレるだろうよ」
「むう……」
ディーに盛大なため息を吐かれて俺は顔を顰める。
実を言うとパーティ解散、いや、俺だけが外されるのは別に初めてじゃない。そして都度、別の人材を斡旋してくれているこの男がこういう態度を取るのは致し方ない。
この町に来て一年ほどだが、最初は概ね「凄い」「頼りになる」といった羨望のまなざしを受ける。
しかし少し経つと「やりすぎだ」に変わり、最後には「出て行ってくれ」となってしまう。
反省して一時期、やりすぎないように力を抑えて回復のみに専念していたこともあるがやはり時間がかかるので俺がしびれを切らして一掃してしまうのだ。
スミソ達は強かったが強い魔物相手ともなればやはり手こずる。
手伝えば修行にならないと分かっていても仲間がみすみすやられているのを見ているだけというのも悪いことをしているようで中々難しいものである。
もちろん回復はするが、それでも痛々しいのはあまり見ていられない。
「とりあえず新しいメンバーを募集していると掲示板に出しておいてくれるか?」
「おお、構わないぜ。……だけど、期待はするな。お前はもうある意味有名人だからな――」
◆ ◇ ◆
そして――
「……誰も誘ってこない……!!」
「だから言ったろうが。お前はこの町で『最強の役立たず』の通り名がついているんだ、仲間にしようとは思わないだろうな」
「なんだその不名誉な通り名は……ほ、本当に誰もいないのか……?」
「ああ」
パーティ解散から一週間……どうやら本気らしいディーの言葉に愕然とする。
どうやら本当に俺に近づいてくる者は居なくなってしまったらしい。
呆然としていると、近くで聞きなれた声が聞こえてきた。
「皆さん凄いですね! ロックフロッガーをあんなにあっさり倒せるなんて!」
「いやいや、君とタウラスが前衛をしっかりやってくれたおかげだからだぜ?」
「そうそう!」
「回復も早かったですし、ジグリードさんも凄かったです。バランスがいいんですね」
……スミソ達だった。
あれから顔を合わせて居なかったが、女の子の戦士を仲間にしたようで、わいわいとカウンターで報酬の受け取りを行っているところだ。なんとなく俺は物陰に隠れて様子を伺うと、楽しそうに『あの時はああするんだ』とか話しながらギルドを去って行った。
ケガはそれなりにしていたようだがしっかり修行も兼ねることはできているらしい。
「……」
「なあレーゲン。お前は悪いやつじゃねえ、それはみんな知っている。だけど硬すぎんだよ」
「硬すぎる?」
「なんというか一緒に居ると肩がこるって感じだな? あんまり冗談も言わねえし、真面目過ぎるのかもしれねえな」
あやふやな言葉を口にするディーに対して俺は顔を顰める。しかし、スミソ達より以前にパーティを組んだ女性にも『つまんないやつ』『この鈍感』だと言われたことが確かにあった。
母親から『女の子で冒険者はきついから優しくしてやれ』と言われていたから大事に扱っていたんだが……。
顔を赤らめてなじってくるから嫌われていたのだろう、きっと。
「まあ、お前のジョブは『賢者』だし、両親も魔王討伐を志した魔法使いと神官だったんだろ? お堅い育てられ方をしてそうだもんな」
「ああ、修行続きで近所の子供と遊ぶ機会もなかったと思う……困ったことは無かったが……」
俺がそう言うとディーが『そりゃ人を気遣うのは難しいかもな』と呟いていたのを聞き逃さなかった。
一番感受性の強い時期が少年時代になり、本来であれば友人と遊んだり勉強をすることで他人に対して興味を持つものだという。
しかし俺はずっと両親と魔法の訓練ばかりしていたので他人と関わることがほぼ無いまま旅に出たのが良くなかったらしい。
「足並みを揃えるってことができねえんだろうな。まあ、お前が仲間を庇って敵を倒すってことは悪いことじゃないんだが、剣を振らなきゃ腕力は鍛えられないし、魔法も使わなければ応用もできん。そこがスミソ達、ひいては歴代の仲間が気に入らなかったんだろ。むしろ余裕で敵を倒せるなら見守るのも大事だってこった」
「ぬう……」
「もうちょっと気楽に構えてもいいんじゃねえか? 遊び心と余裕を持てよ、レーゲンが強いのは間違いないんだし」
呻く俺の肩をポンと叩いて笑うディー。
なるほど余裕を持つ、か。
そこで俺はひとつ、閃くことがあった。
「俺は強く、魔王討伐はしたいが仲間は必要。だが仲間と足並みを揃えることができない……遊び心が必要なら、俺がこれからやるべき、導き出される答えはひとつだな」
「お、なんだよ?」
「俺は遊び人にジョブチェンジをしようと思う」
「な、なんだと……!?」
慌てるディーに俺は手で制して口を開く。
「もっとも使えないとされる職業、遊び人。だが今の俺にはちょうどいいと思わないか? 一から再出発ということであれば少し弱い仲間が見つかるかもしれないし、遊ぶということを学べばたりないものが見えてくるかもしれない」
「そりゃあ……」
「というわけで行ってくる!」
「あ、おい!? マジか、マジなのか!? ……天才と馬鹿は紙一重っていうけど、ありゃどっちなんだろうな――」
なにやらディーがなにかを言っていたが、俺はこのひらめきに確信を持ってギルドを後にするのだった。
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