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第一章:賢者なのにアホ
その16 策士、ラナ
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「大量……! やっぱりレーゲンさんは凄いです!」
「ふう……今日はまあまあだったな」
なんだかんだとヒュージアント相手に大立ち回りとなり、地面には合計三十匹の死体が転がっていた。
両手を合わせて喜ぶラナに、まあまあだったと声をかける。
というのも……
「結局、何匹倒した?」
「えっと……五匹、ですね?」
「……」
そう。
ラナは三十匹中、五匹しか倒していないのである。後は殆ど逃げ回っており、俺の魔法で倒していたりする。
おかげで俺のギルドカードにはレベル2の文字が浮かんでいた。
「レベル2、おめでとうございます!」
「ありがとう……と言いたいところだが、ラナはもっと倒せよ? 俺は見ての通り魔法でなんとかなるが、お前はしっかりレベルを上げないと恩恵が受けられない」
「はーい!」
まったく……分かっているのかと思うくらい元気な声と笑顔を見せるラナ。とりあえず小言はこれくらいにしておくかと魔石の回収をして蟻酸を瓶に詰めていく。
剣ですっぱり斬ってくれたらありがたいのだが、俺が魔法で焼いたので意外と取れなかった。
「それは?」
「ボーナスだな。そこそこ高く売れるんだ。魔法で燃やさなければもうちょっと手に入ったんだが……」
「い、いくらくらいで……?」
俺はひと瓶、五百トールと告げる。
するとラナは引き攣った顔でヒュージアントの焦げた死体と瓶を見比べて冷や汗をかく。
「なんで言ってくれなかったんですか!? めちゃくちゃ美味しいじゃないですか……!!」
「後でいいかと思っていたから仕方がない。死体を完全に処理して引き上げるとしよう」
「多分、そういうところも気が利かないって言われる要因では……?」
「……むう」
珍しくジト目で俺を見るラナの口はへの字になっていた。確かに稼ぐならこういう小技も必要だなと考えを改める。ひとまず今日のところは五本だからまあまあ悪くないと思って欲しい。
確かに言っていなかったのは俺の落ち度ではあるので次は気を付けるとしよう……
「それじゃ帰りましょうか! これ、大きな魔物を倒して持ち帰るとかになったらどうするんですか?」
「それこそ馬車の出番だ。荷車は持っていないからレンタルになるけどな」
「ううーむ……お金がかかることばかりですね、都会は……」
「まあ、気持ちはわかるよ」
村の自宅だと宿代はかからないし、畑や畜産があれば自給自足は可能だ。川があれば魚も獲れる。
レベル度外視で狩人になり狩りをして村を助けている人間も居るくらいだからな。
世知辛いとラナが剣の血と脂を拭い去り鞘に納めながらぶつぶつ言っていた。
そのままギルドへ帰るとマリアが出迎えてくれた。
「おー、無事に戻ったか。ま、あんたがいればだいたいはなんとかなるよな」
「このレベルならな。だが、棍棒じゃ中々倒しにくさを感じるよ」
「ラナもお疲れさん。レベルはあがったか?」
「あー……えへへ」
マリアと笑い合いながら報告をする。
そこでラナにレベルは上がったか聞くも愛想笑いをしていた。カードを見たマリアは肩を竦めて苦笑していた。
「ま、ボチボチか? 清算するぞ」
「瓶が五本だ、よろしく頼む」
「お、いいじゃん」
そしていつも通り報酬を貰いギルドを後にする。
「瓶の分と合わせて五千二百五十トールも一人で貰えたのは大きいですね……!」
ラナと入り口に戻ると、彼女は目を輝かせてそんなことを言う。昨日のほぼ倍は貰っているのでこの反応は当然である。
「落とすなよ? それじゃ今日はこれくらいで」
「はい! 明日稼げたら夕飯一緒に食べませんか? 今日までは貯金するので」
「ん? ああ、いいけど奢るか」
「……いえ、そこは自分で稼いだお金で一回は食べたいです!」
「そうか。多分、それは美味いはずだ」
俺はフッと笑い、片手を上げて立ち去る。俺もああいう時期があったなと首を鳴らした。
◆ ◇ ◆
「またー!」
と、振り返らずに手を振るレーゲンさんに声をかけ、見えなくなったところで私も宿へ戻るため踵を返した。
今日は稼げた……まさかボーナスがあんなに高いとは思わなかった。
「知っていたらもっと上手くやったんだけど……」
私は逃げ回るフリをしてレーゲンさんの魔法を頼っていた。そうすることで私のレベルは上がりにくくなるし、時間も短縮できるからだ。となるとしばらく組んでくれるため、お金を貯めるには絶好の機会というわけ。
バレないようにするのがなかなか難しいかもしれないのである程度は戦うようにしているけどね。
それにしても蟻酸の瓶詰とか知らないため焼いてしまった個体は勿体なかった。
「ちょっと本屋さんに寄っていこうかな?」
噂では冒険者の役に立つ本もあるらしい。魔物の弱点や貴重な素材。私は今、嫌いだった勉強をする時が来たのかもしれないと拳を握るのだった――
「ふう……今日はまあまあだったな」
なんだかんだとヒュージアント相手に大立ち回りとなり、地面には合計三十匹の死体が転がっていた。
両手を合わせて喜ぶラナに、まあまあだったと声をかける。
というのも……
「結局、何匹倒した?」
「えっと……五匹、ですね?」
「……」
そう。
ラナは三十匹中、五匹しか倒していないのである。後は殆ど逃げ回っており、俺の魔法で倒していたりする。
おかげで俺のギルドカードにはレベル2の文字が浮かんでいた。
「レベル2、おめでとうございます!」
「ありがとう……と言いたいところだが、ラナはもっと倒せよ? 俺は見ての通り魔法でなんとかなるが、お前はしっかりレベルを上げないと恩恵が受けられない」
「はーい!」
まったく……分かっているのかと思うくらい元気な声と笑顔を見せるラナ。とりあえず小言はこれくらいにしておくかと魔石の回収をして蟻酸を瓶に詰めていく。
剣ですっぱり斬ってくれたらありがたいのだが、俺が魔法で焼いたので意外と取れなかった。
「それは?」
「ボーナスだな。そこそこ高く売れるんだ。魔法で燃やさなければもうちょっと手に入ったんだが……」
「い、いくらくらいで……?」
俺はひと瓶、五百トールと告げる。
するとラナは引き攣った顔でヒュージアントの焦げた死体と瓶を見比べて冷や汗をかく。
「なんで言ってくれなかったんですか!? めちゃくちゃ美味しいじゃないですか……!!」
「後でいいかと思っていたから仕方がない。死体を完全に処理して引き上げるとしよう」
「多分、そういうところも気が利かないって言われる要因では……?」
「……むう」
珍しくジト目で俺を見るラナの口はへの字になっていた。確かに稼ぐならこういう小技も必要だなと考えを改める。ひとまず今日のところは五本だからまあまあ悪くないと思って欲しい。
確かに言っていなかったのは俺の落ち度ではあるので次は気を付けるとしよう……
「それじゃ帰りましょうか! これ、大きな魔物を倒して持ち帰るとかになったらどうするんですか?」
「それこそ馬車の出番だ。荷車は持っていないからレンタルになるけどな」
「ううーむ……お金がかかることばかりですね、都会は……」
「まあ、気持ちはわかるよ」
村の自宅だと宿代はかからないし、畑や畜産があれば自給自足は可能だ。川があれば魚も獲れる。
レベル度外視で狩人になり狩りをして村を助けている人間も居るくらいだからな。
世知辛いとラナが剣の血と脂を拭い去り鞘に納めながらぶつぶつ言っていた。
そのままギルドへ帰るとマリアが出迎えてくれた。
「おー、無事に戻ったか。ま、あんたがいればだいたいはなんとかなるよな」
「このレベルならな。だが、棍棒じゃ中々倒しにくさを感じるよ」
「ラナもお疲れさん。レベルはあがったか?」
「あー……えへへ」
マリアと笑い合いながら報告をする。
そこでラナにレベルは上がったか聞くも愛想笑いをしていた。カードを見たマリアは肩を竦めて苦笑していた。
「ま、ボチボチか? 清算するぞ」
「瓶が五本だ、よろしく頼む」
「お、いいじゃん」
そしていつも通り報酬を貰いギルドを後にする。
「瓶の分と合わせて五千二百五十トールも一人で貰えたのは大きいですね……!」
ラナと入り口に戻ると、彼女は目を輝かせてそんなことを言う。昨日のほぼ倍は貰っているのでこの反応は当然である。
「落とすなよ? それじゃ今日はこれくらいで」
「はい! 明日稼げたら夕飯一緒に食べませんか? 今日までは貯金するので」
「ん? ああ、いいけど奢るか」
「……いえ、そこは自分で稼いだお金で一回は食べたいです!」
「そうか。多分、それは美味いはずだ」
俺はフッと笑い、片手を上げて立ち去る。俺もああいう時期があったなと首を鳴らした。
◆ ◇ ◆
「またー!」
と、振り返らずに手を振るレーゲンさんに声をかけ、見えなくなったところで私も宿へ戻るため踵を返した。
今日は稼げた……まさかボーナスがあんなに高いとは思わなかった。
「知っていたらもっと上手くやったんだけど……」
私は逃げ回るフリをしてレーゲンさんの魔法を頼っていた。そうすることで私のレベルは上がりにくくなるし、時間も短縮できるからだ。となるとしばらく組んでくれるため、お金を貯めるには絶好の機会というわけ。
バレないようにするのがなかなか難しいかもしれないのである程度は戦うようにしているけどね。
それにしても蟻酸の瓶詰とか知らないため焼いてしまった個体は勿体なかった。
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