17 / 20
第一章:賢者なのにアホ
その17 転職神官の接触
しおりを挟む「やあ、レーゲンさんごきげんよう」
「ん? ああ、神殿の転職してくれる人じゃないか」
「バスレイですね……!?」
「……」
宿に帰る途中、何故か腕組みをして家屋を背にバスレイが話しかけてきた。名前は今、思い出したな。
もう会うことは無いと思っていたがまさかこんなところで顔を合わせるとは。
俺は片手を上げて挨拶をすると脇を抜けるためすれ違う。
「もうどこか行くつもりですか!? ここは『なんの用だ?』とか聞く場面でしょうに!」
「いや、たまたまかと……」
転職神殿の神官が俺に用があると思うかといえば難しいところである。慌てて俺の前に回り込んで来たバスレイがコホンと咳ばらいをしてから続ける。
「夕飯はまだですかね? ちょっとお話をしませんか?」
「話? 俺にか。生憎、遊び人になったとはいえまだまだ面白い話などできそうにないが」
俺は棍棒を担いでいるため、空いた手でネクタイを直しながらそう返すと、バスレイが呆れた笑いをしながら肩を竦める。
「いやあ、すでに存在そのものが面白いんですが……」
「よく分からないが……」
何が言いたいのか分からないので俺は首を傾げる。後は飯を食って風呂に入るだけなので、休ませてほしい。
しかし、誰かと飯を食うというのも悪くないか。今日はラナも居ないしな。
「どうせこの後は暇だから飯くらいなら付き合うぞ」
「お、ありがとうございます! では行きましょうか、こっちにいい店があるんですよ」
バスレイがそう言って俺の手を引いて歩き出す。頭一つと少し違うため、ラナよりも小さく見えるなと思いながらついていく。
そのまま黙って歩いて行くと、屋台の並ぶ通りに出た。そういえばこっちの方は来たことが無かった。
「親父、鶏の串焼きを適当に焼いてちょうだい。後、ビアーを二つ!」
「お、バスレイさんかい。ちょっと待ってな」
「おい、俺は明日も依頼に行くんだ、酒は控えたい」
「かぁー! ダメですねえ! 真面目すぎですよあなた!」
「む……!?」
大通りに広げられた席に着いた瞬間、テーブル叩きながらバスレイがそんなことを口にする。眉をぴくりと上げて俺は続きを待つ。
「今までは賢者! 賢い者! しかし今は遊び人ですよ! 昼は適当に働き、夜は酒を飲んで楽しむ! それこそが醍醐味ではありませんか!」
「そういうものか……? いや、さすがに二日酔いで依頼はダメだろう……」
「甘い! そういうのを乗り越えて遊び人になるんですよ」
分からん……だが、真面目という部分は確かに刺さる部分ではある。
「ふむ……」
「例えば、飲んだ翌日にパーティに合流しても『そういうものだ』と認識してくれます。それに手伝わなかったら、仲間が経験ポイントを取れるでしょう?」
「ああ、そういう」
「へいお待ち!」
そこでジョッキがテーブルに置かれて俺達は乾杯をする。なにに乾杯するかは分からないがひとまず俺のレベルが2になったことでいいかと飲む。
「ふう」
「お、いい飲みっぷり! ぐっといきましょうぐっと!」
「まったく……しかし、遊び人とはこういうのでいいのか?」
よく考えれば転職をする人間を導くのだからなにか知っている可能性はあるか。適当に話を合わせて情報を引き出してみるとしよう。
「そうですねえ。私も詳しくは知らないのですよ。少なくともこの町で遊び人になった人間は居ませんからね。ただ、レーゲンさんが困っていたことはある程度解決できそうですけどね。こういう『遊び』を交えて戦うことで自然と味方を頼らざるを得ませんし」
「それだと今度は頼りにならない仲間ってことにならないだろうか?」
「塩梅ですよ。ガチで窮地に陥っているのに助けないのはさすがに疎まれるとは思いますが、元・賢者であるあなたならすぐに助けられるでしょう」
「むう」
そうならないように先に敵を倒す……のだが、それだと仲間が成長しない。それはさっきラナとの立ち回りで良く分かる。
「それほど難しい話ではないんですが、メリハリですかねえ。魔王を倒すという話ですがあなた一人では無理ですし、協力してやっていくならきちんと話をし、なにを求めているかを考えないと」
「……そうだな」
ぐびぐびとビアーを飲みながら真面目なことを口にするなと俺もジョッキを傾ける。するとそこでバスレイが懐からなにかを取り出した。
「これを差し上げましょう」
「こいつは……笛か?」
俺の言葉に彼女は頷く。
「遊び人のスキルに楽器を使うのがありますよね? これを使ってみてください。なに、プレゼントですよ」
「……よく分からないがいいのか?」
「ええ。まあ、転職させたのはわたしですし、少しくらい援助してみようと思った次第です」
なにを考えているか分からないが、笛は鉱石で出来ているようでまあまあ悪くない感じがする。
「魔王もなかなか手をこまねいているようですし、少しくらい遊んだらいいんですよ! あ、おかわりもらえます?」
「だが、ラナはまだレベル1だ。そこまで遊ぶわけにもいかないさ」
「そういえばそうでしたっけ? なおのこと前に出てもらってどんどん倒してもらえばいいんですよ。笛でも吹いて見守るくらいで」
「……うーむ」
「へいお待ち!」
「ああ、ありがとうございます」
そんな話を聞きつつ、俺は焼き鳥を口に入れるのだった。ラナは無理じゃないかな……
10
あなたにおすすめの小説
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる