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第六部:救済か破滅か
その170 本性
しおりを挟む<ぴー。ということがあったのよ>
「また飛ばしたですね!? その姿はいつなったんですか!? ってこのやりとりデジャブ感がすごいです!」
<ははは、チェーリカは賑やかだなあ>
「ファウダーさんは壮絶な最後でしたけどね!? よく笑って話せますね……まあいいです。お二人の言いたいことはよく分かったですよ」
<ぴー。なら話したかいがあったかしら?>
<あ、待ってよジャンナ>
何かを掴んだチェーリカを置いて、前を歩くディクラインとフォルサの肩へ止まる二人。今日はとりあえず屋敷に戻り休む事になる。そして守護獣になった経緯はいまくはぐらかされていた。
そして二ーナを病院へ連れて行ったソキウスは食事以外で姿を見せる事は無く、特にチェーリカと話す事は避けていた。
「……っ」
チェーリカは悲しそうな顔をするが、自業自得というのは頭では分かっていたので追うことはせず、黙って部屋に戻っていった。まずは謝る、そう決めたはずだがソキウスの前に出ると硬直して何も言えなくなってしまっていた。
その後、ソキウスは二ーナと共に過ごし、ディクライン達はホープとタークの情報を元にダンジョンや遺跡を巡っていた。
最初の洞窟で襲われてから5日ほど経過したが、その後妨害をされるということは無く、今日は3つ目の遺跡に足を踏み入れていた。
「(ぶ、ぶひ……あいつらは、お、俺に手を貸すのをやめたから手駒がない……ど、どうすればいいんだな……)」
タークは相変わらず悪事を働こうとしたが、最初の協力者は(主にフォルサ)派手にやられたため、タークの依頼はすべて断っていた。懸命な判断である。
「(あのブ……坊ちゃんは諦めたかしらね?)」
「(どうかな? まあ、何かしたとしても返り討ちにできると思うが)」
遺跡の奥へ歩き続けていると、祭壇のような広場に出る。丁度チェイシャやジャンナが居た場所に似ている。するとジャンナがフォルサの肩へ飛んできて言う。
<……ぴー、ここが女神の封印だったみたいね。ビンゴ。でも……>
<気配が無いや、やっぱりここを守っていた人はやられちゃったのかな>
「そう、あなたたちが何も感じられないなら恐らくそうでしょうね。まあ愛の剣は神裂とかいうのが持っていたわけだし、その可能性はあったもの」
ジャンナ達の言葉にフォルサは気にした風も無く、言い放った。ディクラインが祭壇を調べるが、何かが砕け散った後があるだけで目ぼしい物はなさそうだった。
「……残念だが、守護獣は跡形も無くなったみたいだな……」
「できれば全員揃っていて欲しかったけど……仕方ないわね。ここでこうしていても時間が勿体無いわ。戻りましょう。そろそろホープさんがマジックディビジョンを探し出してくれていると助かるんだけど」
<そういえばその名前を出した時、ホープさんの顔色が変わってなかった?>
ぞろぞろと来た道を戻り始める一行。相変わらず浮かない顔をしたままのチェーリカがその後ろに着いていこうとした所でタークに話しかけられる。
「チェ、チェーリカちゃん、げ、元気を出すんだな! そ、そうだ、戻ったらス、スイーツでも食べに行くんだな!」
「いえ……間に合ってるです(美味しいもの……ソキウスが新しい町に着くたびよく連れて行ってくれたですね……)」
横を通り過ぎようとしたが、タークに回り込まれて肩を掴まれる。そして激昂して鼻息を荒くしたタークがチェーリカに八つ当たりをする。
「お、お前も! ニーナも! お、俺を見下してるんだな! や、優しくしていれば付け上がりやがってなんだな!」
「ちょ!? 痛いです!」
騒ぎに気づいたフォルサが戻ってきてその光景を見ながらチェーリカに言った。
「チェーリカ、近寄られた時に使うと教えたアレを使いなさい」
「え!? あ、はいです」
ワン、ツー、スリーといった感じで、右足と左足を順に踵で踏みつけ、トドメにみぞおちへと肘が入る。ポイントは踵を踏み抜いた後一歩下がり、踏み込みながら肘を入れる事である。その時右足か左足は相手の踵の後ろに置いておくのが望ましい。引っ掛けて転ばす意味合いもあるのだ。
「ぶひぃぃぃ!?」
「お腹が邪魔で肘がうまく入らなかったです……」
うまくヒットし、転がっていくターク。祭壇の台へ頭をぶつけて大の字に倒れた。フォルサがそれに近づき、しゃがんでからタークを見下ろす。
「何か企んでいるようだけど、私達には通用しないからそのつもりでね? あなたがニーナに振られようが知ったことではないけど、そんな態度をするからじゃないかしら? ホープさんのコネで今の地位があることを忘れない事ね」
それだけ言ってチェーリカを撫でながら戻っていくフォルサ。むくりと起き上がったタークは涙目で地面をどんどんと叩きながら叫んだ。
「ぶひ……ば、ばばあが調子に乗って! くそ、何がなんでも一泡吹かせないと気がすまないんだな! くそくそ!! ニーナもチェーリカも、お、俺のものにしてやるんだな!」
地面を叩いていたら少し気が晴れたのか、それとも置いていかれたら魔物に襲われてしまうと思ったか、頭を冷やして立ち上がろうとしたその時だった。
「……こ、これは何なんだな……?」
台の下にある隙間に、黒い指輪が落ちていた。太い指を伸ばし、何とか取ると黒というよりは黒紫といった輝きを放っていた。
「き、キレイなんだな……そうだ、これをニーナにプレゼントすればきっと喜ぶんだな! ふひひ……いいもの拾ったんだな!」
<(……どこかで愛の匂いがするぴょん……ふ、むふふ……)>
「!? だ、誰か居るのかだな!?」
どこからか声が聞こえてきて焦るターク。しかし周囲には誰も居ない。
「ま、待って欲しいんだな!!!」
指輪を拾ったタークはうすら寒くなり、慌ててディクライン達を追いかけるのだった。
---------------------------------------------------
<ホープの部屋>
「……マジックディビジョン、よもやこれを欲する者が現われるとは」
ホープの手には赤く輝く宝玉があった。話があった時動揺したのは、自分が持っているということが悟られているのか? と、焦ったからだった。
カッ! ゴロゴロゴロ……
ホープはとある部屋の遺影の前で宝玉を手に一人呟く。
「曾爺さんの代から受け継がれてきた宝玉……別に特別という訳でもない……ちょっとレアだが、手に入れようと思えば何とかなる……ニーナを助けてくれた恩人の頼み……惜しくはない……うん、手放そう」
そうと決まれば、とちょっと豪華な布で包み、樹齢千年の杉の木で作った木箱へと入れ、渡す準備が整った所で窓の外にディクライン達が帰って来たところを見つけた。
「ナイスタイミング、か。では早速……ハッ!」
振り返ろうとしたその時、窓に人影が映りこんでいるのを発見したホープ。その姿はタウィーザだった。知った顔だと安堵して振り返ってタウィーザに話しかける。
「驚かせないでくれ、ノックも無しに入ってくるのはマナーがなっていないんじゃないか?」
「……あの男とニーナを結婚させるのかしら……?」
「うん? 何を言っている……ああ、ソキウス君の事か! そうだな、ニーナは気に入っているし、ソキウス君も満更では無さそうだ。彼らが旅立つ前に話をするつもり……な!? その鈍器をどうするつもりだ!?」
「タークをニーナと結婚させなさい! どこの人間かもわからない冒険者風情を選ぶなんて許さない……! 妹もきっとそう思っている!」
じりじりと近づいてくるタウィーザ。後が無いホープ。お互いの間に緊張が走る。しかし間一髪。ちょうどその時二ーナが部屋へ入ってきた。
「お父様、ディクライン様達が戻られ……あら、おば様? どうしたんですか埴輪なんて持って?」
「あ、あら、ニーナ! い、いえね、お金が無いからどうしても引き取ってくれって人から買い付けたんだけど、価値が分からなくてホープに聞くところだったのよ」
「ああ、そうなんですね! それじゃ下で待ってるから、お父様、早く来てくださいね」
「うむ、すぐ行くよ」
そう言うとニーナはニコッと笑って部屋を出て行く。外に出るため、タウィーザの横を通り過ぎようとしたホープは立ち止まり、耳元で言った。
「先程の件は覚えておく。妻の姉だと思って今まで支援して、甘やかしてきたがそれも終わりだ。今の売り上げ状況を私が知らないとでも思っているのか? うまくちょろまかしているようだが私の目はごまかせんぞ。今後はこの屋敷に足を踏み入れる事は許さん」
そう告げると、ホープは箱を持ったまま外に出て行った。
「くっ……まずい、ホープに切られたら商売を続けるどころか借金を背負う羽目になるかもしれない……何とかしないと……」
だが、特に策は出ないまま、ひとまず帰って来た一行の元へ顔を出すタウィーザ。そしてタークが持ち帰った指輪がこの後とんでもない事態を引き起こす!
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