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最終部:タワー・オブ・バベル
その213 謀反
しおりを挟むヴァイゼが三人の上忍を圧倒していた頃、ディクラインとカイムの元にアネモネも援護に入っていたが……。
「こいつのらりくらりとしやがって!」
「ふっふ……当たれば一撃でやられそうだな、危ない危ない」
「はあ!」
キィン!
「ふ、いい刀だな? しかし使い手がこれではな。それ!」
ディクラインの攻撃は避け、カイムの攻撃は受けて捌いていた。自身の能力がどの程度の実力か良く知っているからだ。おもむろにキルヤはカイムに蹴りを入れて体を入れ替え、攻撃をディクラインへ向けさせた。
「っと!? 危な! カイム、しっかりしろ。同じニンジャなんだから俺より有利に動けるだろ?」
「す、すいません……」
するとそこでアネモネがキルヤに襲いかかった。
<その隙、もらったよ!>
ドン! と巨体がぶつかりキルヤは空中へ吹き飛ぶ。しかし自分から飛んで衝撃を逃がしたため、空中で一回転し音も無く着地をする。
<チッ……>
「くそ、手ごたえが無さすぎる……」
「ふっふ、その顔……いいぞ……焦り苦しんでいる顔だ。俺は女にうつつをぬかしているヤツを苦しませるのが楽しくてな。女など足手まといだとは思わんか? 所詮、征服欲を満たす道具にすぎんということだ」
「ふざけるな!」
ガキン!
「ふっふ、軽いな……檻の中はもう半分以上水に浸かったぞ? いいのか、そんな悠長にしていて……」
「そのままおさえてろカイム! だありゃあ!」
<シャァァァ!>
「そろそろ飽きてきたな……もう少し遊べると思ったが……熱波!」
ゴォ! 目を細めたキルヤがカイムを突き放し、ディクラインとアネモネに向かって叫ぶと手から炎が吹き荒れた。
「構うものか!」
「む! ぐぬ……」
炎を受けながらもディクラインはキルヤを捉え、真正面から斬りかかった。すると突っ込んでくるのは予想外だったのか、肩に剣が食い込んでいた。
<巻きつくよ!>
「ぐ、が……!?」
「ナイスだ、このままトドメを刺すぞ!」
少し小さくなったアネモネが足元からキルヤに巻きつき締め上げると、キルヤは小さく呻く。ディクラインがトドメを刺そうと突きかかったところで後ろから声がかかった。
「ふっふ、仲間を殺すつもりか?」
<な!?>
「カ、カイム!?」
慌てて軌道を逸らしたため、ディクラインはすっころぶ。何と、アネモネが締め上げていたのはカイムだった! ディクラインの一撃を受けた後すり替わっていたのだ。
<……いつの間に……>
「さあ、いつからかな……? ふむ、同士討ちか、面白いな。おい、貴様等。女を助けたいか?」
「当たり前だ! そこを動くな!」
キルヤがにやにやと笑いながらカイムに尋ねると、カイムは激昂して刀を逆手に構えた。しかし、キルヤは尚も話し続ける。
「ふそれなら貴様等お……互い殺し合え。生き残った方の女を助けてやろうじゃないか……!」
「なんだと!?」
懐に手を入れ、キルヤは注射器をチラつかせながら二人に言う。さらに指を鳴らし、フレーレの檻の水を止めていた。
「どうだ? 俺は約束は守るぞ……?」
「……」
<(聞くんじゃないよカイム。冷静に見極めてあの注射器を奪うんだ、そうすれば……)>
近くにいたカイムへアネモネが小声で話しかけると、カイムはアネモネに向かって刀を振ってきた!
「カイム!? お前……!」
「……私はフレーレさんを助けたい……このままでは時間が……申し訳ありませんが……」
「ふっふっふ! そうだ! 自分の欲に忠実に生きろ!」
すると、アネモネがぶるぶると体を震わせながら静かに呟いた。
<……本気かい?>
「……はい」
アネモネは赤い眼をカイムの目と合わせ、しばらくじっと見ていた。そしてため息をついて口を開く。
<そうかい、アンタはもう少しできるヤツだと思ったけど見込み違いだったか。ニンジャにとって裏切りは万死に値する……>
「アネモネ? どうした?」
まだ震えているアネモネの様子がおかしいと思ったディクラインが声をかけるが、アネモネは答えない。さらに震えが激しくなったところでアネモネが呟いた。
<我が偽りの体よ、その皮を破りて真の姿を顕現せしめん……>
「む!? 怪しげな!」
アネモネが言い終わると、その体がカッと光り目が開けていられないほどの輝き始めた! キルヤが何かを悟りシュリケンを投げるが光の壁に弾かれた。やがて光がおさまり、アネモネが居たところを見て全員が驚愕した。
<……カイム。アンタのはアタシが引導を渡してやるよ。覚悟するんだね>
そこには銀髪に近い髪の色をし、赤い忍び装束をまとい、顔立ちの整った小柄な女の子が立っていた。指をポキポキと鳴らし、体にはバチバチと雷のようなものを帯びていた。
「アネモネ、か?」
<ああ、そうだよ。これが再調整されたアタシ達の最終手段。人化の法さ。アタシはカイムをやる、ディクラインはキルヤを頼めるかい>
チラリと横目で見るアネモネの視線の先にはヴァイゼが雑魚を全滅させているところだった。合流して倒せばいいと言いたいのだと思い、ディクラインは頷いた。
「しかし……」
<? なんだい?>
「喋り方がアレだからもっと熟女っぽいと思っていたが、まさか子供だったとは……」
<子供じゃないわい!? これでも22歳で死んだ時の体なんだけどね!>
しかし見た目は完全に子供で、身長もそれほど高くない。さらに胸にあるはずのものもかなり残念なレベルだった。ディクラインの視線でだいたい把握したアネモネはカイムに向き直り鋭く冷たい声で言った。
<……カイムの次はお前の番だからな……(胸なんて戦いの邪魔なだけなんだ……)>
「おお、怖い怖い……」
「茶番は済んだか? カイム、と言ったか。期待しているぞ……だが、まだ信用できんからな……」
ディクラインとアネモネの会話を聞き終えた後、カイムへ声をかけるキルヤ。そして再び指を鳴らし、檻に水を流し込み始めた。中に居るフレーレがまた焦り出す様子が見えた。
「!?」
「さあ、殺し合え。さもなくば女は二人とも死んでしまうぞ? ふっふ……」
「……約束は守ってもらうぞ」
刀を構え、アネモネを睨むカイム。目を合わせたアネモネが口元を歪ませて笑いながら叫んだ。
<アタシを怒らせたんだ、アンタら二人、七回輪廻を巡っても帰って来られないようにしてやるよ!>
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