パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪

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最終部:タワー・オブ・バベル

その324 やってきた男

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 「これで終わりよ! ≪連魔弾≫!」

 ドドドド! と、私の手から魔力の塊がウェンディに襲いかかる。長剣でそれを弾きながら向かってくるウェンディだったが、数時間前と比べて使いこなせるようになったチェイシャの魔弾はディレイをかけて撃ちだすことができるようになっていた。

 「ぬおおお! 後少し……きゃあ!?」

 「おーウェンディが可愛い声を出したねー」

 近くの岩に座っていたイリスが尻餅をついたウェンディに向かってにやにや笑いながら言う。私はウェンディを助け起こしながらウェンディに告げる。

 「力は強いけど、接近されなかったらそこまで脅威じゃないのよね」

 「腕力馬鹿だと言いたいのでありますか!?」

 「そこまでは言わないけど……世の中にはずる賢い人間も多いから、直線的な攻撃以外も使えるようになったほうがいいわよ?」

 「うーむ……確かに……で、ではもう一本!」

 ウェンディが剣を構えて私に言うが、流石にそろそろお腹もすいてきたし、お昼ご飯の用意も必要だろう。

 「今日はこれくらいにして拠点に帰りましょ? レイドさん達、大丈夫かなぁ……」

 「よっし! カルエラート様が居ないけど、食事は楽しみだよね~♪」

 イリスも岩から立ち上がり、私達に並んだ。その瞬間、木陰から人の気配と、声が聞こえてきた。

 「ガルルルル……」

 「うぉん!」

 レジナとシルバが威嚇すると、ガサガサと慌てて人が出てきた。


 「驚かせてしまって申し訳ない、今『レイド』と言いましたかねお嬢さん」

 金髪で目の細い、無精ひげを生やして大きなリュックを背負ったおじさんが片手を上げながら姿を現す。さて、なんと答えるか――


 「……ええ、言いましたけど。あなたは誰です? 見た感じ商人さんのようですけど、魔物がいるこんなところに何の用ですか? それにレイドさんのことを知っているのはどうして?」

 「ははは、手厳しい! けど、俺みたいに怪しい人物を警戒するのは正しいね、うん」

 うんうん、と、満足そうに頷く謎の人。この笑い方はどこかで見たことがあるような……? そう思っていると、ウェンディが私に耳打ちをしてくる。

 「(どうするでありますか? 倒すでありますか?)」

 「(や、そこまでする必要はないと思うけど……)」

 と、ひそひそ話していると、謎の人が口を開き、その内容に私は驚愕する。

 「ああ、自己紹介がまだだったね。俺の名前はヘスペイト。どうしてレイドのことを知っているか……それは俺がレイドとセイラの父親だからだよ」

 「ちち……おや……? えー!?」

 まさか、そんな……

 「な、亡くなったって聞いてますけど?」

 「ああ、うん。そうだよ」

 あっさり言ってくるヘスペイトさんに私達はガクッと膝を崩す。

 「信じられるわけないじゃないですか。証拠はあるんですか?」

 「そう言われると立つ瀬も無いけど、あまり時間もないし、これでどうかな?」

 「……!?」

 笑いながらヘスペイトさんが近くの木にぶつかる! ……ということは無かった。なぜなら木をすり抜けたからである……

 「どうだい? いわゆるゴーストってやつだね。母さんは聖女だったから精霊になったんだけど、俺は普通の恩恵しかなかったからね」

 「あ、あわわ……ゆ、ゆうれい……!」

 イリスが腰を抜かして目を回していた。どうもこの子はアンデッドの類に弱いらしい。

 「そうでしたか……それじゃあ拠点に案内しますよ。レイドさんとセイラもその内帰ってくると思いますし。≪ストレングスアップ≫っと……」

 私が補助魔法を使い、イリスを背負っているとヘスペイトさんが呟いた。

 「……以外と肝が据わっているね?」

 「そうですか? ウチのお父さんも魔王でスケルトンですから特に気にならないだけですよ!」

 「なるほど。同じ父親同士、是非お会いしたいね」

 「それもおかしいであります……」

 ウェンディが疲れた顔で歩き出した。


 ◆ ◇ ◆


 <拠点:お昼>


 「みなさーん! 今日のお昼は生姜焼きですよ! これで元気をつけてくださいね!」

 夜はチェーリカに任せることにして、昼は私が作った。まずは好物から入るのが無難だろう。カルエラートさんほど料理は上手くないからね。

 「おお、美味しいな」

 「うん、カルエラートさんのも美味しかったけど、たまには違った味付けもいいな」

 うんうん、概ね好評のようで何よりだ。

 ……まあ、100人単位の食事だからかなり時間はかかったけどね……

 それはともかく、広場に残してきたウェンディとイリス、それとヘスペイトさんの元へ生姜焼き定食を持って戻ると――


 「わおん?」

 「きゅきゅん」

 「きゅふん?」

 「……わふ……」

 「ははは、困惑しているね」

 シルバ達がヘスペイトさんの体にじゃれようとして体を近づけるが、ふわっとすり抜けてしまい、何度も体当たりをしたり、シロップがちょんちょんとヘスペイトさんの体を触ろうとしていた。とてもかわいい。

 二人の前にごはんを置きながら、ヘスペイトさんへと尋ねる。ちなみにイリスはヘスペイトさんと一番遠い所へ座っている。

 「それで、どうしたんですか? 確かセイラの中にお母さんがいるとか言ってましたけど、会いに?」

 「近いかな? とはいえ、本当は成仏するつもりだったんだけど、どうも世界の危機ってやつみたいだし、レイドは勇者だから行くだろうな……と思ってここまで」

 「死んでるのに無理しましたね……」

 「……そうだね……君の父上も相当だと思うけど……それで、レイドには俺の作った剣を一振り渡してるんだけど、もう少し強化できそうだから、最後の仕事をしにきたんだ。今は塔の中かい?」

 「ええ、いつもの調子なら三日、四日くらいで転移陣のあるボスを倒しているから、ちょっと待たないといけませんけど」

 私がそう言うと、ヘスペイトさんは顎に手を当て、考え始める。それを生姜焼きを食べながら見ていると、やがて口を開いた。

 「帰って来るなら待ってみるか……鍛冶場はここにあるかい? 帰ってきたらすぐ試せるようにしたいんだけど……」

 「うーん、鍛冶場は流石にないですね。ブラウンさんに相談してみましょうか」

 私は昼食後、もはやシーフの面影がないブラウンさんを訪ねると、二つ返事で了承してくれた。明日にはできるとか言ってたけど……

 ともあれ、まさかの来訪者を迎えた私は、みんなが帰ってくるのを待つ。

 「ふふ、帰ってきたら驚くだろうね、レイドさんとセイラ」

 「わんわん♪」

 「きゅきゅん♪」

 「きゅふーん!」

 シルバ達ものんびりと私と拠点の中を散歩する。

 ヘスペイトさんが父親ということもあり、パパ達のことを少し思い出して胸が痛む。怒りで心がざわつくことは無かったけど、きっと神裂を見たら飛び掛かるに違いない。

 「次は一緒に行かないとね」

 ベッドに寝転がり、目を瞑ると心地よい睡魔に襲われる。みんなの無事を祈りながら眠りについた。



 ――しかし、レイドさん達はこの時、まさかの苦戦を強いられていた。
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