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最終部:タワー・オブ・バベル
その380 あと一息
しおりを挟む<バベルの塔:95階>
呆然自失――
その言葉が表す通り、私達は力なく階段を上り、怖い顔をしたレイドさんが95階への扉を開ける。
九人。たった5階上ってきただけなのに、パパとママ以外で九人も犠牲になった。
もちろん今までにも危機はあったし、同行しているノゾム達に殺されそうになったこともある。でも何だかんだで居なくなったのはチェイシャ達守護獣やパパたちだけだったのに……
「ずいぶん、少なくなりましたね……」
「そう、だね……」
フレーレの言葉に何とか声を絞り出す。私、フレーレ、レイドさん、エクソリアさん、アルモニアさん、ノゾム、ユウリ、アイリにお父さん。
たったこれだけ。
賑やかに野営を繰り返していたみんなはもう居ないのだと、上ってきた階段へ振り返る涙が出そうになる。だけど、私はそれをぐっとこらえて前を向く。
「行きましょう。残り五階、まだ終わったわけじゃないわ」
私の言葉に全員が頷き、再び歩き出す。
このフロアは95階。今までならボスのような敵が居たけど、ここはがらんとした何もない空間で、94階と同じく螺旋階段が目に見えたいた。
それでも油断はせず注意深く進んみ、恐らく次に狙われるのは、と考えていたところに声が響き渡った。
『よおう、元気かお前達?』
「神裂……!」
「父さん!」
『おう、俺だ。何だなんだ、ちょっと見ないうちに人が居なくなったな? 怖くなって逃げ帰ったか? それとも……死んだか?』
「白々しいことを……あんたのせいで……! 待っていなさい、すぐに辿り着くわ」
『はっはっは、怖い顔だぜルーナ。だが、それでいい! ダメ押しといくかあ?』
「きゃ……!?」
「きゅきゅん!?」
神裂がそう言った直後にフレーレの足元の床がフッと消えた。やっぱりフレーレを狙ってきたわね!
「ノゾム!」
「任せろ<フェンリルアクセラレータ>!」
「ユウリ!」
「分かってるよ!」
「ひあああ!?」
フェンリルアクセラレータをかけられたユウリが、ワイヤーで引っ掛かったフレーレを持ち上げて一気に駆けだす。私達もそれを追って階段を目指した!
『ぎゃっはっは! やるじゃねぇか、このフロアはこれで終わりだ。ノゾム、ユウリ、アイリ。お前達もせいぜい気を付けるんだぞ? ぎゃははは!』
「はあ……はあ……クソ親父が! 首洗って待っていろよ!」
『その意気だ、それなら生き残れるかもしれねえなあ!』
「くそ……今ほど相手を憎んだことは無い……セイラ……みんな……仇は必ず取る……」
そのセリフの後は神裂が何かを発することはなく、レイドさんが珍しく……ううん、初めて本当の怒りの表情を浮かべていたので、そっと背中を撫でる。
「説得をするつもりだったけど、これじゃ倒すことになりそうね。聞いてくれる気がしない。というか同じ人間気がしないわ」
『……神裂はズィクタトリアの体を使って復活したことを考えるとあながち間違いではないかもしれないよ』
「肉体に引っ張られているということか?」
『可能性としてはあるよ。腐っても神だ、取り込んだつもりでも、とかね』
エクソリアさんの推測に、ユウリが水を飲み干してから口を開く。
「そんなのは関係ない。それも含めて父さんの責任だろ? 説得に応じないなら僕は引き金を引くよ」
「全ては辿り着いてからだ」
ユウリの宣言にレイドさんは一言だけ呟くと階段を上り始め、私は慌ててその横につく。
「無茶、しないでねレイドさん」
「……大丈夫、俺が死んでもルーナは必ず守るよ」
険しい顔で言い放ったレイドさん。私はたちまち頭に血が上り、
「シルバ!」
「わん!」
ガブリ!
「いたたた!? 何をするんだシルバ! なんのつもりだルーナ!?」
シルバに噛まれたレイドさんが振り払いながら私に向いたので、立ち止まったレイドさんを追い抜きながら返す。
「こんな状況だからこそ『死んでも』なんて言わないでレイドさん。残ったみんなで神裂のところへ行くくらい言ってよね?」
「う……」
「わん!」
シルバに吠えられて焦るレイドさんに、父さんが肩をポンと叩いて言う。
「確実なことは言えないができることはしよう。ルーナを守ってくれるのは嬉しいが、お前が死んだらルーナが悲しむ。それを忘れるな」
「あ……は、はい……すみません……」
「……気にするな。俺を倒しに来たお前のパーティがあんなことになったんだ。昂るのも無理はない。だが、神裂の思うつぼだとしたら?」
無言で頷くレイドさんを見て笑い、お父さんは先へ進み私達もその後を追う。
そして96階へ到着しフロアへ躍り出るも、魔物も出ず、罠も無い一本道が続いているだけで一気に駆け抜けて97階への階段を上ることに成功。さらに97階も静かなまま、フロアを抜けることができた。98階へ至る階段を上りながらエクソリアさんが背後で声をかけてくる。
『油断を誘ってるとしか思えないね。残り2階でボク達全員を殺す罠があってもおかしくない』
『案外、100階まで来させる気かもしれないわよ』
『それは安易すぎると思うよ姉さん。っと、期待の98階か……時間は?』
「え? えっと……今は夜の11時、ですね」
アイリが時計を見て答えると、エクソリアさんが腕組みをして何かを考え、やがて喋り出した。
『時間は惜しいけど、ルーナとノゾムの補助魔法が使えないのは正直痛いね。朝まで休んで魔力回復をしてから進まないかい?』
「でも、神裂が神様になる一歩手前まできていますよ? 急いだほうがいいんじゃないでしょうか……」
フレーレの言うことももっともだ。だけど罠があった場合、それと神裂と戦う時にあるのとないのとでは雲泥の差なのも明白。なので私は提案する。
「エクソリアさん。2時間だけ休みましょう。残り2階なら時間的に神裂のところへ到着するときには朝になっていると思いますから、使用できるはずです。それに女神二人は力を残しているんでしょ? 神裂とやりあう時に戦ってくれるなら残った中級補助魔法で戦う手段はありますよ」
『……』
補助魔法は惜しい、けど時間は確かに無いといった感情が見える表情を私に向けた後、エクソリアさんは『それじゃあ2時間だけ』と言って座り込む。
ご飯はもう食べず、人数も減って口数も少なくなった私達は少し体を休めた後、98階の扉を開けた。
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