前世は不遇な人生でしたが、転生した今世もどうやら不遇のようです。

八神 凪

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異世界へ

プロローグ

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 「痛い……それに、寒い……。死ぬってのは……あ、案外楽じゃねぇな……」

 俺以外息をしていない山中の別荘は、惨劇とも言えるような状況となっていて、床一面に血の絨毯を作っていて、近くには血に濡れたマチェットと裏で手に入れた弾丸を撃ち尽くした銃が落ちていた。
 
 殺したのはもちろん俺。そして相手は轟財閥の一人息子の『轟 英二』こいつは――

 「が、はあ……き、貴様、な、何者だ……!? こ、こんなことをして――」
 「はあ……はあ……。ま、まだ息があるのか……」

 俺は裂けた腹を抑えなが立ち上がると、マチェットを掴んでヤツの前に立つ。

 「た、タダで済むとは思って、ね、ねえ……。このザマだしな。だが、例えこれが最後でも、お前だけは生かしておくわけには……いかない……そのために俺はこの十年……はあ……い、生きてきた……! 久我 瞳……の、名を……忘れたとは言わさねえ……」
 「……!? よ、よせ!? あの女が悪いんだ僕を拒んだりす――」

 その言葉は最後まで言えず、轟の頭にマチェットが突き刺さり今度こそ絶命する。

 「に、人間の屑には……その姿がお似合いだよ……」

 俺がこいつを追っていた理由……それは、肉親を殺されたからに他ならない。
 同じ大学だった妹の瞳に告白したが、それを拒否。逆上した轟が自宅で妹を襲おうと襲撃したが、ちょうど帰って来た両親に焦り全員を殺した、というわけだ。
 家が火事になったと当時遠くで暮らしていた俺が戻ると、実家と家族は変わり果てた姿になっていた――

 事件は公になったが犯人の目撃証言が無く、事故で片づけられ――
 
 「げほ……ごほっ……!? 痛い……まだ死ねないのか……」
 
 視界はだんだん薄れていくのに痛みで意識が飛ばないので、地獄の苦しみを味わっていると、不意に声がした。

 「派手にやったな。目標は……達成したか」
 「よ、よう、親友……おかげで……」
 「礼は言うな。オレはお前を利用して、利用された。それだけだ。おかげで轟財閥は衰退するだろう」
 「そう、か……。それでも、この計画を立ててくれたこと……は……感謝している……ありが、とう……」
 「……っ。喋るな、今から病院に――」
 「い、いい……俺はもう、これでどうでもいい……終わったんだ、俺は……生きていても犯罪者……このまま死なせて、くれ……」

 ごほっと喋りながら血を出す俺に駆け寄ってくる。

 「……すまない、もっと上手くやれれば……」
 「……なに、言ってるんだ……これで、いいんだよ……死んだら妹に両親に会えるか、な……? ……いや俺は地獄行きか……」
 「オレもな」
 「ああ、どうやら最後が来たらしい……じゃあな、怜香……俺の、しんゆ――」
 「……!? 和人! おい、和人! ……逝ってしまったか……オレは親友以前に……お前のことが好きだったよ。ごほっ……ごほっ……かず――」

 こうして俺、久我 和人の生涯は幕を閉じた。最後に親友……いや、好きだった女に看取られて……

 俺は最後笑っていられただろうか……? 

 今となっては、もう、どうでも……いいことだが――――
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