前世は不遇な人生でしたが、転生した今世もどうやら不遇のようです。

八神 凪

文字の大きさ
79 / 258
ツィアル国

幕間 ③


 「ああああああああん! うわあああああああん! アルにいちゃぁぁぁぁ!」
 「にいちゃぁぁん!」
 「ほら、ママが抱っこしてあげるからおいで」
 「「うわああああん! ままぁ!」」

 双子を両腕で抱えて背中を撫でてあげるが、一向に泣き止む気配が無い。
 少し前に泣きながら屋敷に戻って来たルーナに事情を聞いて現場に行くと、倒れたルークを発見し、慌てて助け起こしたのだ。

 ……近くには潰れたケーキの箱と、アルが買ったであろうプレゼントが散らばっていたけど、肝心のアルの姿はどこにも見えなかった。

 あたしはすぐに町の人に情報提供と、屋敷のメイドに城に居るゼルへ伝令を依頼し、ルーナとルークにアルを探しに行くと言い町中を奔走したんだけど――

 「カーネリア!!」
 「ゼル! アルが変な連中に連れて行かれたって!」
 「今、兵士達も出ている、どれくらい前の話だ?」
 「ルーナがあたしのところへ帰って来たのが30分くらい前だったはずだよ」
 「……急ごう、町から出られたら終わりだ」

 ゼルは二か所ある出口の内、ツィアル国へ続く橋がある出口を抑えに行き、あたしは再び町中を駆け巡ることに。

 「カーネリアさん、こっちには居ないぜ」
 
 「裏路地も見たけどダメだ……」

 「あん? 子供? いやあ、みてねえな」

 「随分急いでいた冒険者四人組が居たけど、子供は見なかったな」

 だけどその甲斐も空しく、日が暮れた後も見つけることは出来なかった。

 あたしとゼルが屋敷に戻ると、お義父さんとお義母さんがルーナ達と共に出迎えてくれ、リビングへと集まる。
 
 「アルが……!?」
 「一体誰がそんなことをしたというのだ! ゼルガイド、犯人はわからんのか?」
 
 お義父さんが激昂してゼルに尋ねるも、首を振って答える。
 珍しく肩を落としている姿は痛々しいね……

 「はい。事件後に門を出て行こうとした人間は調査しましたが、見つかりませんでした。子供とはいえ、アルを連れて行くのは目立つと思うんですが……」
 「手がかりか目撃者は?」
 
 あたしの方はまったくだったけど、ゼルはなにか聞いているかもしれないと尋ねてみる。

 「特に無い。だが、ちょうど俺達に話が回って来た時間帯に、商人の護衛をする冒険者の一団が出て行ったらしい。そいつらが怪しいんじゃないかと」
 「追手は?」
 「もちろん出している。だが、計画的な犯行だ、すでにまかれている可能性は高い」
 「そんな……ああ、本当の孫だと思っていたのに……」

 お義母さんが泣き崩れたのであたしは背中をさする。
 膝に座るルーナとルークは泣き疲れてしまったのか酷く大人しい。
 するとルーナがあたしに抱き着いて見上げてくる。

 「アルにいちゃ連れて行かれちゃったの?」
 「……そうね。どこへ行ったか分からないわ……」
 「まじんに連れていかれちゃったんだ……ぼく達がわがままを言うから連れて行こうとしたけど、にいちゃが助けてくれたんだ……」
 「ルーク、そうじゃない。お前達はいい子だ。アルもな」
 「ぼく、にいちゃを助けたいよう……うえええん……」

 ルークがそんなことを言い出し、ルーナも泣き出してしまう。
 今は追撃の騎士達から報告を待つしかないと、あたしは双子の頭に手を乗せて頬を擦り寄せる。

 「……大丈夫、アルは帰って来るよ。そんな顔してたらアルが悲しんじゃうから、ご飯を食べてゆっくり寝よう? ね?」
 「あう……」
 「ごはん……食べる。ルーナ、アルにいちゃを助けに行く……」

 ルーナが泣きながら食卓につき、あたしは用意したパーティーの料理を振舞うため準備を進め始めると、そこでメイドが声をかけてきた。

 「あの……ラッド王子とライラ姫様、それとイワン様が見えられましたが、如何いたしますか?」
 「ああ、来てくれたのか……アルが誘拐されたからパーティは無しになると言っておいたんだけど……。折角きてくれたんだ、通してくれ」
 「かしこまりました」

 ゼルが苦笑しながらそう言い、すぐに三人が食卓へやってきた。
 特にラッド王子の落胆ぶりは目に見えて分かりやすく、双子と同じくらいだと思う。

 「あの、アルはやっぱり……?」
 「うん、見つからないみたいだ。あたしも探しに行きたいけど、この子達を置いて行けないからね」
 「俺は飯を食ったら隣町まで行ってくる。部下たちに任せてくれと言われたが、ウチの息子だ。指をくわえて待っているわけにもいくまい」

 ゼルは静かにそう言うと、窓の外に目を向けた。
 本当はもっと早く出たいと思っているんだけど、罠かもしれないと待機を命じられたらしいのよね。

 そんな中、あたしは料理を温め直し、テーブルに広げていく。
 沈んだ表情の双子を並べて座らせ、全員が着席。
 あたしが主導を取って、二人の後ろで声を出した。
  
 「それじゃ、ケーキは潰れちゃったけど、ルークとルーナ、お誕生日おめでとう!」
 「「「おめでとう!」」」
 「おめでとう、ルーク、ルーナ」

 来てくれた三人と義両親が手を叩き、パーティが始まる。
 
 「あいあとー」
 「ありがとー」

 元気がないものの、祝ってくれているのは分かるようできちんと頭を下げてお礼を口にする双子が可愛い。

 「このお洋服、ルーナちゃんに似合うと思って♪」
 「僕からはペンダントを。魔物に襲われたり……誘拐されそうになったりした時にこれをぶつけたら目くらましになるんだ」
 「俺は大したものじゃないけど、帽子な。アルとお揃いだったんだけど……」
 「ふぐ……」
 「イワン!」
 「あ、す、すみません王子……」
 「大丈夫、大丈夫だからね」

 アルの名を出して泣きそうになったルーナをあたしが宥め、落ち着きを取り戻した後、食事を楽しむ……とはいかないまでも、双子は少しだけ笑うくらいには回復できていた。
 城へ連れて行ったことがここで功を奏するとは思わなかったけど、この際なんでもいい。

 その後、ゼルは出発し、王子達も馬車で帰っていくと屋敷は一気に静かになった。
 義両親は心配だからと泊っていくことにしてくれたが、静かになるとアルが居ないことを痛感する。

 「……にいちゃ……」
 「アルにいちゃ……ルーナが助けに……いく……むにゃ……」
 「どんな夢を見ているのやら……」

 それにしても、まさかアルが攫われるとは思わなかった。
 義理とはいえ騎士団長の息子。
 それにその事実を知る者はごく少数なので、言うことを聞かせるなら双子の方が使い道はあると思う。

 あのテロ事件とシェリシンダ国の騒動からしばらく何も無かっただけに油断したとも言えるかしら……エリベール様やラッド王子ではなく、どうしてアルなのか……

 考えても分からない疑問が浮かんでは、消えていく。
 どうか無事で……これ以上不幸に見舞われないよう……神様……お願いです……
感想 479

あなたにおすすめの小説

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100
ファンタジー
国立大学に通っていた理系大学生カナは、あることがきっかけで乙女ゲーム「Amour Tale(アムール テイル)」のヒロインとして転生する。 自由に生きようと決めたカナは、あえて本来のゲームのシナリオを無視し、実践的な魔法や剣が学べる魔術学院への入学を決意する。 魔術学院には、騎士団長の息子ジーク、王国の第2王子ラクア、クラスメイト唯一の女子マリー、剣術道場の息子アランなど、個性的な面々が在籍しており、楽しい日々を送っていた。 しかしそんな中、カナや友人たちの周りで不穏な事件が起こるようになる。 前世から持つ頭脳や科学の知識と、今世で手にした水属性・極闇傾向の魔法適性を駆使し、自身の過去と向き合うため、そして友人の未来を守るために奮闘する。 「今世では、自分の思うように生きよう。前世の二の舞にならないように。」

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。