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しおりを挟む「嫌です……だって考えるって別れるか考えるって事じゃないんですか。冷静になったら男となんか付き合われへんでしょ。お願いです、ごめんなさい。もう隠し事しません、許して下さい……お願いします」
孝太郎は泣きそうな声でそう訴え春の服を抱きしめたまま頭を下げて、土下座するように床にうずくまった。そんな必死な孝太郎に春は言った。
「孝太郎くん、ぼくで物足りなくないんですか。だって、キスしかできてないじゃないですか……。セックスしたくならないですか」
「ッそんなの、わかりません! だってセックスなんかおれやって人生で1回しかしたことないし……おれはそんなんより春さんに愛想つかされる方が恐ろしいです。お願いします……行かないで下さい……」
春は、顔を上げてください、と声をかける。
「1つ答えてください。狐塚さんと浮気することはありますか?」
孝太郎は顔をしかめて、するわけないやないですか、とすぐに答えた。
「 絶対、絶対無いです!! そんなんありえへん、ないです」
「本当ですか?」
「仮に春さんと付き合ってなくても……あの人とは寝ません。自分は気持ちのないセックスは向かないって気づいたんです。する前の何倍も寂しくて、虚しくて、自分のことがめちゃくちゃ気持ち悪くて大嫌いになりました。だからもうしません。キスも……好きな人しかしたくないです。それ以上も全部、おれは春さんしか……」
そう言って頭を抱えてうずくまった孝太郎に春が、来てください、と孝太郎の腕を掴んで引いた。そのままベッドに誘うが孝太郎は、待って下さい、と声を上げて抵抗した。
「いったんやめましょう。無理しないでください。春さんがセックスしなくてもおれは浮気しないって言ったやないですか。だから…」
違います、と春は否定した。
「ただ……くっつきたいだけです。だめですか?」
そう言われ孝太郎は、駄目じゃないです、と答えてそっと掛け布団の中に滑り込む。裸の春が抱きしめると、硬直した。するといきなり腕の中で唸りだしたので何かと思って春が顔を覗き込むと孝太郎は泣いていた。手で涙を拭って、孝太郎は言った。
「ごめんなさい。フラれなくてホッとして……かっこ悪くてごめんなさい。おれほんまはかっこ悪いんです……春さんの前でかっこつけよとしてるけど、おれもう好きすぎて……余裕ないし、1日連絡ないだけで不安やったし」
そう言って泣く孝太郎の頬に触れ、春が口づけた。
「不安にさせて、ごめんなさい」
そう言って春は孝太郎の上に乗り上げるように押し倒す。馬乗りになるように抱きついて、積極的に唇にキスを繰り返した。
「は、春さん……」
孝太郎が春の肩を押して止めた。
「めちゃくちゃ嬉しいんですけど春さん裸やし……ベッドでそんなことされてたらおれ、もうめちゃくちゃ変な気分なってくるんでそろそろ服着て下さい……」
「変な気分、なってくれないと嫌です。ぼくそのつもりで今日ここに来たんですから」
春に覆いかぶさられたままそう言われて孝太郎は、でも、と躊躇いを見せる。そして布団の中で孝太郎が春の腰に手を触れると春がビクッと震えて硬直した。
「ほら、春さんちょっと触っただけでこんな……」
固まってるじゃないですか、と言おうとした孝太郎が違和感を覚えて布団の中を覗こうとしたら春に顔を押さえつけられた。
「今!!! 見ないでください!!!」
「でも……あの……気のせいでなければその……春さん、勃……」
「言わなくていいです!!」
「えっと……」
孝太郎がそっと背中に触れるとまた春はビクッと身体を震わせて硬直する。そして孝太郎の腹に当たる春のペニスもビクン、とはっきりと反応していた。
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