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35-1煙草とホスト
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月末、営業終了後に明は孝太郎を捕まえてあっけらかんと言った。
「愛華なぁ、結局200しか用意できひんかったから面接行くことなったわ」
面接、とは風俗の店の面接だ。初対面の男の前で裸にされ、値踏みされる事になる。孝太郎は思い切り顔をしかめた。
「なんで……報告してくるんですか。掛けどうにかする気ないんでしょ」
「無いな。なんでてお前気にしてたから報告してるんやろ。わざわざ嫌ってるおれに話しかけてきたくらいやし」
「嫌ってませんよ」
そう言った孝太郎の肩に明は手を回した。
「ほな、お前体で返すか? 100万やったらそうやな……入れんのは勘弁したってもええわ。それ以外はやらしてもらうけど。本番無しの風俗みたいなもんやな」
「冗談やめてください」
そう言ってすぐに手を振り払った孝太郎に明はさらに続ける。
「大丈夫やって。今回はあの彼氏には言わへんよ。おれ約束破ったことないやろ。パッとホテル行って……せやな、2時間で帰らしたるわ」
「しつこいですって。おれそういう冗談嫌いなん知ってるでしょ」
孝太郎に睨まれた明は、はいはい、と両手を上げた。
「ほな別にええわ。あいつにいろんなオッサンのちんこしばかせて金作らすから。可哀想にな。あいつ処女やのに」
「ちょっと、明さん……胸痛まないんですか」
そう嫌悪感をあらわにした孝太郎に明は笑った。
「痛まんからホストしてるんやろ。お前そんなんでよぉ続けれるな。慣れろや。前の店でもそんなん1人で言ぅてるからおれが繋いだらなずっと浮いてたやんけ」
「慣れたくありませんし、それが普通なら馴染まなくていいです」
孝太郎が心底分からない、という風に明に尋ねた。
「なんで……この店に来たんですか。そういうヤクザみたいな稼ぎ方するならもっと箱もグループも大きいところの方がええでしょ。うちは箱も小型で高額ボトルも少ないし割に合わないと思いますけど」
「別に……どこで働こうがおれの勝手やろ」
なぁ、と明が孝太郎の腕を掴む。
「体で肩代わりするって言えや。現金で払うんは無しやで。そんなんしたらコタローに近い客次々売り掛けやらしてお前のこと破産させたるわ。お前が気合い入れて1発体で払うてくれたらもーやらん。大人しくするから」
孝太郎が眉をひそめて、明に尋ねた。
「手、震えてますよ。お酒抜けたからですか?」
「アル中ちゃうわボケ!! ええから、言うこと聞けって。するって言えや」
少し考えて孝太郎が、あの、と切り出す。
「ホテル以外は、駄目ですか」
孝太郎の発言に明は目を丸くして聞き返す。
「家? まさかな、彼氏の目と鼻の先やし。お前行きたいんやったら旅行でも行こか?」
「そうじゃなくて、デートだけで100万は駄目ですか。性的なことはしません」
明は、はぁ!? と顔をしかめた。
「お前どこの高級ホステスじゃ。なんでお前と遊ぶだけでおれが100積まなあかんねん」
「でもおれが払える対価なんかそれくらいです。身体は無理です。ほんまに、わかるでしょ。ずっと一緒におったんやからおれがそういうの無理やってこと!」
そう言い切った孝太郎に、まぁな、と明は嫌な顔をした。そしてGLOWの吸い殻を捨てて、すぐにまた新しいものに入れ替えて吸い始めたる。
「……色恋どころかオープンゲイやし、サービスでキス1つよぅせん奴やなお前。なぁ、なんで東京なんか行ったん。歌舞伎町なんかミナミよりやばいやつ多いんちゃうん」
「店によりますよ。ここは小箱やけど治安よくて好きです」
「お前なんか飲んだらすぐ吐くし同情したら簡単に金やるし、付き合うてもない男引きずるしおれがどんだけお前守るんで苦労したか」
「もう飲んでも吐かないし、昔よりはしっかりしてます」
明が、へぇ、と笑った。
「あっそ。ほな100万の価値あるデートしてみろや。おれが納得したら売り掛けチャラにしたるわ。次の日曜な」
「ほんまですか!」
笑顔になった孝太郎にすかさず明が釘を刺す。
「おれが納得したら、やで」
「頑張ります」
「フェラチオの練習しとけよ」
「しません!」
そう明とやり合った孝太郎は帰ってから、家で待っていた春に事の顛末を説明した。春は黙ったまま孝太郎の腹をぽこん、と軽く殴った。
「春さん……怒りましたよね……すみません」
「愛華なぁ、結局200しか用意できひんかったから面接行くことなったわ」
面接、とは風俗の店の面接だ。初対面の男の前で裸にされ、値踏みされる事になる。孝太郎は思い切り顔をしかめた。
「なんで……報告してくるんですか。掛けどうにかする気ないんでしょ」
「無いな。なんでてお前気にしてたから報告してるんやろ。わざわざ嫌ってるおれに話しかけてきたくらいやし」
「嫌ってませんよ」
そう言った孝太郎の肩に明は手を回した。
「ほな、お前体で返すか? 100万やったらそうやな……入れんのは勘弁したってもええわ。それ以外はやらしてもらうけど。本番無しの風俗みたいなもんやな」
「冗談やめてください」
そう言ってすぐに手を振り払った孝太郎に明はさらに続ける。
「大丈夫やって。今回はあの彼氏には言わへんよ。おれ約束破ったことないやろ。パッとホテル行って……せやな、2時間で帰らしたるわ」
「しつこいですって。おれそういう冗談嫌いなん知ってるでしょ」
孝太郎に睨まれた明は、はいはい、と両手を上げた。
「ほな別にええわ。あいつにいろんなオッサンのちんこしばかせて金作らすから。可哀想にな。あいつ処女やのに」
「ちょっと、明さん……胸痛まないんですか」
そう嫌悪感をあらわにした孝太郎に明は笑った。
「痛まんからホストしてるんやろ。お前そんなんでよぉ続けれるな。慣れろや。前の店でもそんなん1人で言ぅてるからおれが繋いだらなずっと浮いてたやんけ」
「慣れたくありませんし、それが普通なら馴染まなくていいです」
孝太郎が心底分からない、という風に明に尋ねた。
「なんで……この店に来たんですか。そういうヤクザみたいな稼ぎ方するならもっと箱もグループも大きいところの方がええでしょ。うちは箱も小型で高額ボトルも少ないし割に合わないと思いますけど」
「別に……どこで働こうがおれの勝手やろ」
なぁ、と明が孝太郎の腕を掴む。
「体で肩代わりするって言えや。現金で払うんは無しやで。そんなんしたらコタローに近い客次々売り掛けやらしてお前のこと破産させたるわ。お前が気合い入れて1発体で払うてくれたらもーやらん。大人しくするから」
孝太郎が眉をひそめて、明に尋ねた。
「手、震えてますよ。お酒抜けたからですか?」
「アル中ちゃうわボケ!! ええから、言うこと聞けって。するって言えや」
少し考えて孝太郎が、あの、と切り出す。
「ホテル以外は、駄目ですか」
孝太郎の発言に明は目を丸くして聞き返す。
「家? まさかな、彼氏の目と鼻の先やし。お前行きたいんやったら旅行でも行こか?」
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明は、はぁ!? と顔をしかめた。
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「でもおれが払える対価なんかそれくらいです。身体は無理です。ほんまに、わかるでしょ。ずっと一緒におったんやからおれがそういうの無理やってこと!」
そう言い切った孝太郎に、まぁな、と明は嫌な顔をした。そしてGLOWの吸い殻を捨てて、すぐにまた新しいものに入れ替えて吸い始めたる。
「……色恋どころかオープンゲイやし、サービスでキス1つよぅせん奴やなお前。なぁ、なんで東京なんか行ったん。歌舞伎町なんかミナミよりやばいやつ多いんちゃうん」
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明が、へぇ、と笑った。
「あっそ。ほな100万の価値あるデートしてみろや。おれが納得したら売り掛けチャラにしたるわ。次の日曜な」
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「おれが納得したら、やで」
「頑張ります」
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「しません!」
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