79 / 86
36-1厚焼き玉子サンドと口の悪い男
しおりを挟む
日曜日のお昼前、家に迎えに来た孝太郎を見た明はにやっと笑った。
「おはよーさん。おれのやったジャケット着てるやん」
「明さんこれ着てるおれが1番男前って言ってたでしょ。でも……やっぱり家に置いてきていいですか。昼は暑いですね。汗かいてきました」
そう言ってジャケットを脱ぎだした孝太郎に明は言った。
「なんや、急に脱ぐから枕すんのか思ったわ」
「しませんて」
「ええよ。置いておいで」
孝太郎がジャケットを家に置きに行くのに付き合いながら明は聞いた。
「彼氏、今日おれと出かけるん知ってるよな」
「もちろん言ってますよ」
そうか、と言った孝太郎がわざと春の家のドアをノックして大きな声で言った。
「コタロー借りるで~。性病移したらごめんなぁ」
「ちょっと明さん!」
春の家は、シン、として反応がない。明はつまらなそうに言った。
「なんや。自分の男が他の男とイチャイチャしに行くとこ見せるのがNTRの醍醐味やのに」
「イチャイチャなんかしませんし。もう行きましょう」
そう言った孝太郎に明がにやっと笑った。
「なんや、お前らもしかして喧嘩してんの」
「してませんよ」
「嘘やろ。だってお前昨日も一昨日もなんか元気なかったやん」
「喧嘩じゃなくて……この件が解決するまで会わないって言われてるだけです」
いやいや、と明が笑った。
「お前もうフラれかけやんけ」
「フラれませんよ」
「もう秒読みやろ。あいつ半日貸すとか余裕やな思ってたけど全然余裕ないやん」
ほな行こか、と明は上機嫌に階段を降りて行った。ハイツの前にタクシーが止まっているのを見て明は言った。
「気ぃきくやん」
「明さん電車乗らないじゃないですか」
2人でタクシーに乗り込み、孝太郎が運転手に行き先を告げると明が眉をひそめた。
「お前、大人の男2人で動物園って正気か」
「明さんよく動物柄の服着てるやないですか」
「別におれ動物が好きで着てるんやないわ」
孝太郎が、行き先変えますか、と明に聞くと明は別にええわ、と言って後ろにもたれかかった。
「お前センスないなー。デートで動物園て。高校生やん。箱根とか横浜とかもっとあるやろ」
「温泉地なんて行ったらやらしい感じじゃないですか。日曜の横浜なんか人多そうやし、人多いの明さん嫌いでしょ」
「おー、よぉわかってるやん」
はは、と明は笑う。タクシーが動物園につき、孝太郎がチケットを買って2人は中に入った。孝太郎が園内の地図を取り、明に言った。
「端から順番に回っていきましょう。おれ全部見れる順路調べできたんで」
「やる気やん。えーよ。任すわ」
孝太郎のリードで2人は動物を順番に眺めていく。アライグマを見ながら明は言った。
「退屈か思たけど久々に来たら意外とおもろいな。変わった動物なんか普段見ぃひんし」
「でしょう。ほら明さんが好きなトラ、あっちですよ」
「別にトラが好きでトラ柄の服着てんちゃうわ」
トラの檻の前に移動しながら孝太郎は言った。
「でも明さん動物は好きですよね。大阪のとき野良猫可愛がってたじゃないですか」
「別に可愛がってへんやろ、飼うてへんし」
「あんなに野良猫にちゅーる買ってた人おれ知りませんよ。痛」
膝の後ろを蹴られて孝太郎が、かくん、と、なる。
「腹減ったわ。飯持って来てんねやろ。出せ」
「気づきました? サプライズのつもりやったんですけど」
「不自然にかばんでかいやん。なんやねんその絶対に水平保ってるトートバッグ」
お弁当を広げてもいいテーブルと椅子のあるエリアに移動して、孝太郎はトートバッグから大きめのお弁当箱2つとスープジャーを取り出した。孝太郎がお弁当箱を2つとも開くと明は、おい、と孝太郎に言った。
「手抜きやんけ。なんやねん全部たまごサンドって」
「手抜きちゃいますよ。明さん厚焼き玉子のサンドイッチ好きでしょう」
「好きやけど……」
「喫茶店行ったら、ハムやトマトやいらんから全部これにせぇって店の人に言ってたじゃないですか」
「お前しょうもないことよぉ覚えてんな」
「しょうもなくないですよ。おれ……ほんまに楽しかったですもん。明さんといるの。ゲイやってわかった上であんなに仲良ぉしてくれる人おらんかったし……」
あっそ、とつまらなそうに言って明はぼやいた。
「音信不通にした癖に」
「おはよーさん。おれのやったジャケット着てるやん」
「明さんこれ着てるおれが1番男前って言ってたでしょ。でも……やっぱり家に置いてきていいですか。昼は暑いですね。汗かいてきました」
そう言ってジャケットを脱ぎだした孝太郎に明は言った。
「なんや、急に脱ぐから枕すんのか思ったわ」
「しませんて」
「ええよ。置いておいで」
孝太郎がジャケットを家に置きに行くのに付き合いながら明は聞いた。
「彼氏、今日おれと出かけるん知ってるよな」
「もちろん言ってますよ」
そうか、と言った孝太郎がわざと春の家のドアをノックして大きな声で言った。
「コタロー借りるで~。性病移したらごめんなぁ」
「ちょっと明さん!」
春の家は、シン、として反応がない。明はつまらなそうに言った。
「なんや。自分の男が他の男とイチャイチャしに行くとこ見せるのがNTRの醍醐味やのに」
「イチャイチャなんかしませんし。もう行きましょう」
そう言った孝太郎に明がにやっと笑った。
「なんや、お前らもしかして喧嘩してんの」
「してませんよ」
「嘘やろ。だってお前昨日も一昨日もなんか元気なかったやん」
「喧嘩じゃなくて……この件が解決するまで会わないって言われてるだけです」
いやいや、と明が笑った。
「お前もうフラれかけやんけ」
「フラれませんよ」
「もう秒読みやろ。あいつ半日貸すとか余裕やな思ってたけど全然余裕ないやん」
ほな行こか、と明は上機嫌に階段を降りて行った。ハイツの前にタクシーが止まっているのを見て明は言った。
「気ぃきくやん」
「明さん電車乗らないじゃないですか」
2人でタクシーに乗り込み、孝太郎が運転手に行き先を告げると明が眉をひそめた。
「お前、大人の男2人で動物園って正気か」
「明さんよく動物柄の服着てるやないですか」
「別におれ動物が好きで着てるんやないわ」
孝太郎が、行き先変えますか、と明に聞くと明は別にええわ、と言って後ろにもたれかかった。
「お前センスないなー。デートで動物園て。高校生やん。箱根とか横浜とかもっとあるやろ」
「温泉地なんて行ったらやらしい感じじゃないですか。日曜の横浜なんか人多そうやし、人多いの明さん嫌いでしょ」
「おー、よぉわかってるやん」
はは、と明は笑う。タクシーが動物園につき、孝太郎がチケットを買って2人は中に入った。孝太郎が園内の地図を取り、明に言った。
「端から順番に回っていきましょう。おれ全部見れる順路調べできたんで」
「やる気やん。えーよ。任すわ」
孝太郎のリードで2人は動物を順番に眺めていく。アライグマを見ながら明は言った。
「退屈か思たけど久々に来たら意外とおもろいな。変わった動物なんか普段見ぃひんし」
「でしょう。ほら明さんが好きなトラ、あっちですよ」
「別にトラが好きでトラ柄の服着てんちゃうわ」
トラの檻の前に移動しながら孝太郎は言った。
「でも明さん動物は好きですよね。大阪のとき野良猫可愛がってたじゃないですか」
「別に可愛がってへんやろ、飼うてへんし」
「あんなに野良猫にちゅーる買ってた人おれ知りませんよ。痛」
膝の後ろを蹴られて孝太郎が、かくん、と、なる。
「腹減ったわ。飯持って来てんねやろ。出せ」
「気づきました? サプライズのつもりやったんですけど」
「不自然にかばんでかいやん。なんやねんその絶対に水平保ってるトートバッグ」
お弁当を広げてもいいテーブルと椅子のあるエリアに移動して、孝太郎はトートバッグから大きめのお弁当箱2つとスープジャーを取り出した。孝太郎がお弁当箱を2つとも開くと明は、おい、と孝太郎に言った。
「手抜きやんけ。なんやねん全部たまごサンドって」
「手抜きちゃいますよ。明さん厚焼き玉子のサンドイッチ好きでしょう」
「好きやけど……」
「喫茶店行ったら、ハムやトマトやいらんから全部これにせぇって店の人に言ってたじゃないですか」
「お前しょうもないことよぉ覚えてんな」
「しょうもなくないですよ。おれ……ほんまに楽しかったですもん。明さんといるの。ゲイやってわかった上であんなに仲良ぉしてくれる人おらんかったし……」
あっそ、とつまらなそうに言って明はぼやいた。
「音信不通にした癖に」
1
あなたにおすすめの小説
ヤンキーDKの献身
ナムラケイ
BL
スパダリ高校生×こじらせ公務員のBLです。
ケンカ上等、金髪ヤンキー高校生の三沢空乃は、築51年のオンボロアパートで一人暮らしを始めることに。隣人の近間行人は、お堅い公務員かと思いきや、夜な夜な違う男と寝ているビッチ系ネコで…。
性描写があるものには、タイトルに★をつけています。
行人の兄が主人公の「戦闘機乗りの劣情」(完結済み)も掲載しています。
完結|好きから一番遠いはずだった
七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。
しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。
なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。
…はずだった。
経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!
中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。
無表情・無駄のない所作・隙のない資料――
完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。
けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。
イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。
毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、
凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。
「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」
戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。
けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、
どこか“計算”を感じ始めていて……?
狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ
業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!
思い出して欲しい二人
春色悠
BL
喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。
そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。
一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。
そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
蒼い炎
海棠 楓
BL
誰からも好かれる優等生・深海真司と、顔はいいけど性格は最悪の緋砂晃司とは、幼馴染。
しかし、いつしか真司は晃司にそれ以上の感情を持ち始め、自分自身戸惑う。
思いきって気持ちを打ち明けると晃司はあっさりとその気持ちにこたえ2人は愛し合うが、 そのうち晃司は真司の愛を重荷に思い始める。とうとう晃司は真司の愛から逃げ出し、晃司のためにすべてを捨てた真司に残されたものは何もなかった。
男子校に入った真司はまたもクラスメートに恋をするが、今度は徹底的に拒絶されてしまった。 思い余って病弱な体で家を出た真司を救ってくれた美青年に囲われ、彼が働く男性向けホストクラブ に置いてもらうことになり、いろいろな人と出会い、いろいろな経験をするが、結局真司は 晃司への想いを断ち切れていなかった…。
表紙:葉月めいこ様
【完結】アイドルは親友への片思いを卒業し、イケメン俳優に溺愛され本当の笑顔になる <TOMARIGIシリーズ>
はなたろう
BL
TOMARIGIシリーズ②
人気アイドル、片倉理久は、同じグループの伊勢に片思いしている。高校生の頃に事務所に入所してからずっと、2人で切磋琢磨し念願のデビュー。苦楽を共にしたが、いつしか友情以上になっていった。
そんな伊勢は、マネージャーの湊とラブラブで、幸せを喜んであげたいが複雑で苦しい毎日。
そんなとき、俳優の桐生が現れる。飄々とした桐生の存在に戸惑いながらも、片倉は次第に彼の魅力に引き寄せられていく。
友情と恋心の狭間で揺れる心――片倉は新しい関係に踏み出せるのか。
人気アイドル<TOMARIGI>シリーズ新章、開幕!
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(2024.10.21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる