80 / 86
36-2
しおりを挟む
孝太郎はバツ悪そうに言った。
「……それは……理由、言わんでもわかるでしょ。あんなんあった後で何もなかったみたいにおれはできませんでした」
「何もなかったみたいにしろなんか言うてへんやろ。付き合ぅたらよかったやん」
明の言葉に孝太郎は、え!? と声を上げた。明は目をそらしたままさらに言った。
「お前とおるのおもろいし、お前も楽しそうにしてたやん。おれお前と食う飯が1番美味かったし……お前頼りないけどおれしっかりしてるし。悪ない組み合わせや思ったけど」
「……でも、おれ明さんのことそういう目で見たことないです。今も……」
「気持ちなんか後からついてくるもんやろ。セックスして毎日一緒におったら。コタロー情湧きやすそうやし」
孝太郎は、すみません、と明に深々と頭を下げた。
「おれは無理です。今までも、これからも……痛」
明が孝太郎の額にデコピンをした。
「100万のデートの途中に何ばっさりフってんねん。もっとうまいこと流して曖昧にぼやけさせろや。思わせぶりに引っ張れ」
「そんなんできませんよ」
明は、はいはい、と呆れたように相槌を打つ。
「彼氏のこと大好きでメロメロやからそんな不義理できひんねんな、首輪付いたワンちゃんは」
「違いますよ。そうやなくて明さんの事が好きやからです」
は、と明が目を丸くしたので孝太郎は慌てて付け加えた。
「先輩として、です! 恋愛ちゃいます」
「お前大慌てで否定すんなや。感じ悪」
すみません、と孝太郎が萎縮する。
「でもほんまに先輩として、大事っていうのはほんまです。明さん乱暴やし横暴やけど初めての夜の世界で右も左もわからん出来の悪いおれをずっと助けてくれてたし……感謝してます。それにおれがこんなに料理ハマったきっかけ、明さんですよ。いろいろリクエストされて作らされて、大変やったけど腕上がったし今思えば楽しかったです」
お前さぁ、と明は頭を抱えながらたまごサンドを口に放り込む。
「お前色恋かけるかフるかどっちかに絞れや。同時にされたらアタマぐちゃぐちゃなるわ」
「明さんおれのこと、好きなんですか?」
フった後で聞くなや、と明は孝太郎に凄んだ。
「察しろや、わかれ、聞くな」
「だってそんなん何も一言も言うてなかったやないですか。好きとかそういうのも一切なんも言われてへんし」
「お前おれがなんぼ奢ってた思てんねん。毎日ずっとお前のこと気にしてたやろ」
「すごく面倒見いい先輩やと思ってたんですよ!」
ふぅん、と言った明はたまごサンドをどんどん食べ進める。
「……ムカつくくらい美味い。あの喫茶店の味完コピやん」
「よかった。マスターに電話して作り方聞いて練習したんですよ」
わざわざ、と明は目を丸くした。
「だって100万のデートでしょう。コーヒー買ってきましょうか」
「え?その水筒飲み物ちゃうん」
「これスープジャーですよ。豚汁入れてきました」
は? と明は顔をしかめて嫌な声を出した。
「お前なんでサンドイッチに豚汁やねん組み合わせめちゃくちゃやんけ。素直にスープつけろや」
「おれも思ったんですけど明さんの好物考えたらこうなって……まぁ明さんいつも食べたいもん食べるから組み合わせあんまり気にしてなかったしええかなって。お好み焼きにふりかけごはんとかたこ焼きとおにぎりとか」
「アホかそれ考えた上での組み合わせじゃ」
すみません、と孝太郎が謝ると明が言った。
「それ持って帰ってええの」
「え?」
「豚汁」
「いいですよ」
「ほな帰りまで持ってて。夜に食うわ」
はい、と孝太郎が笑うと明は聞いた。
「動物園の後、どこ行くん。まさか終日これちゃうやろな」
「動物園の後は東京タワーに行きます」
「観光客やん」
「だって明さん、こっちきてから観光なんかしてないでしょう」
「してへんけど」
ぐるっと動物園を一周してから、2人はまたタクシーに乗り込む。発車してから明が言った。
「足疲れたわ」
「結構歩きましたからね」
明が孝太郎の肩に、もたれかかる。
「どっか休憩入って脚揉んでや」
「休憩って……」
「なんもせんから。静かなとこで喋るだけ。東京タワーなんか行かんでええわ。おれはお前と行く通天閣の方がええよ」
「……なんかそんな曲ありましたね」
「おれも言いながら思ったけど、茶化すなや。なぁ、喋ろ。何もせんから」
孝太郎が戸惑っていたら、明が言った。
「最後のつもりなんやったらそのくらい、聞けよ。朝起きてお前おらんなってて連絡もつかへんくて、おれ割とショックやったんやで。おれは付き合えると思ってた。だって……途中からはコタローも、してたやん」
すみません、と孝太郎は謝る。
「謝って欲しーんちゃうわ。喋ろ。話すだけやから」
そう言われた孝太郎は少し考えてから、喋るだけですよ、と念押しした。そして運転手に声をかけ、東京タワーから行き先を変更した。
「……それは……理由、言わんでもわかるでしょ。あんなんあった後で何もなかったみたいにおれはできませんでした」
「何もなかったみたいにしろなんか言うてへんやろ。付き合ぅたらよかったやん」
明の言葉に孝太郎は、え!? と声を上げた。明は目をそらしたままさらに言った。
「お前とおるのおもろいし、お前も楽しそうにしてたやん。おれお前と食う飯が1番美味かったし……お前頼りないけどおれしっかりしてるし。悪ない組み合わせや思ったけど」
「……でも、おれ明さんのことそういう目で見たことないです。今も……」
「気持ちなんか後からついてくるもんやろ。セックスして毎日一緒におったら。コタロー情湧きやすそうやし」
孝太郎は、すみません、と明に深々と頭を下げた。
「おれは無理です。今までも、これからも……痛」
明が孝太郎の額にデコピンをした。
「100万のデートの途中に何ばっさりフってんねん。もっとうまいこと流して曖昧にぼやけさせろや。思わせぶりに引っ張れ」
「そんなんできませんよ」
明は、はいはい、と呆れたように相槌を打つ。
「彼氏のこと大好きでメロメロやからそんな不義理できひんねんな、首輪付いたワンちゃんは」
「違いますよ。そうやなくて明さんの事が好きやからです」
は、と明が目を丸くしたので孝太郎は慌てて付け加えた。
「先輩として、です! 恋愛ちゃいます」
「お前大慌てで否定すんなや。感じ悪」
すみません、と孝太郎が萎縮する。
「でもほんまに先輩として、大事っていうのはほんまです。明さん乱暴やし横暴やけど初めての夜の世界で右も左もわからん出来の悪いおれをずっと助けてくれてたし……感謝してます。それにおれがこんなに料理ハマったきっかけ、明さんですよ。いろいろリクエストされて作らされて、大変やったけど腕上がったし今思えば楽しかったです」
お前さぁ、と明は頭を抱えながらたまごサンドを口に放り込む。
「お前色恋かけるかフるかどっちかに絞れや。同時にされたらアタマぐちゃぐちゃなるわ」
「明さんおれのこと、好きなんですか?」
フった後で聞くなや、と明は孝太郎に凄んだ。
「察しろや、わかれ、聞くな」
「だってそんなん何も一言も言うてなかったやないですか。好きとかそういうのも一切なんも言われてへんし」
「お前おれがなんぼ奢ってた思てんねん。毎日ずっとお前のこと気にしてたやろ」
「すごく面倒見いい先輩やと思ってたんですよ!」
ふぅん、と言った明はたまごサンドをどんどん食べ進める。
「……ムカつくくらい美味い。あの喫茶店の味完コピやん」
「よかった。マスターに電話して作り方聞いて練習したんですよ」
わざわざ、と明は目を丸くした。
「だって100万のデートでしょう。コーヒー買ってきましょうか」
「え?その水筒飲み物ちゃうん」
「これスープジャーですよ。豚汁入れてきました」
は? と明は顔をしかめて嫌な声を出した。
「お前なんでサンドイッチに豚汁やねん組み合わせめちゃくちゃやんけ。素直にスープつけろや」
「おれも思ったんですけど明さんの好物考えたらこうなって……まぁ明さんいつも食べたいもん食べるから組み合わせあんまり気にしてなかったしええかなって。お好み焼きにふりかけごはんとかたこ焼きとおにぎりとか」
「アホかそれ考えた上での組み合わせじゃ」
すみません、と孝太郎が謝ると明が言った。
「それ持って帰ってええの」
「え?」
「豚汁」
「いいですよ」
「ほな帰りまで持ってて。夜に食うわ」
はい、と孝太郎が笑うと明は聞いた。
「動物園の後、どこ行くん。まさか終日これちゃうやろな」
「動物園の後は東京タワーに行きます」
「観光客やん」
「だって明さん、こっちきてから観光なんかしてないでしょう」
「してへんけど」
ぐるっと動物園を一周してから、2人はまたタクシーに乗り込む。発車してから明が言った。
「足疲れたわ」
「結構歩きましたからね」
明が孝太郎の肩に、もたれかかる。
「どっか休憩入って脚揉んでや」
「休憩って……」
「なんもせんから。静かなとこで喋るだけ。東京タワーなんか行かんでええわ。おれはお前と行く通天閣の方がええよ」
「……なんかそんな曲ありましたね」
「おれも言いながら思ったけど、茶化すなや。なぁ、喋ろ。何もせんから」
孝太郎が戸惑っていたら、明が言った。
「最後のつもりなんやったらそのくらい、聞けよ。朝起きてお前おらんなってて連絡もつかへんくて、おれ割とショックやったんやで。おれは付き合えると思ってた。だって……途中からはコタローも、してたやん」
すみません、と孝太郎は謝る。
「謝って欲しーんちゃうわ。喋ろ。話すだけやから」
そう言われた孝太郎は少し考えてから、喋るだけですよ、と念押しした。そして運転手に声をかけ、東京タワーから行き先を変更した。
1
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話
タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。
瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。
笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。
学校一のイケメンとひとつ屋根の下
おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった!
学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……?
キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子
立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。
全年齢
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(2024.10.21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
え、待って。「おすわり」って、オレに言ったんじゃなかったの?!【Dom/Sub】
水城
BL
マジメな元体育会系Subの旗手元気(はたて・げんき、二十代公務員)は、プチ社畜。
日曜日、夕方近くに起き出して、その日初めての食事を買いに出たところで、いきなり「おすわり」の声。
身体が勝手に反応して思わずその場でKneelする旗手だったが、なんと。そのcommandは、よその家のイヌに対してのモノだった。
犬の飼い主は、美少年な中学生。旗手は成り行きで、少年から「ごほうび」のささみジャーキーまで貰ってしまう始末。
え、ちょっと待って。オレってこれからどうなっちゃうの?! な物語。
本を読まない図書館職員と本が大好きな中学生男子。勘違いな出会いとそれからの話。
完結後の投稿です。
宵にまぎれて兎は回る
宇土為名
BL
高校3年の春、同級生の名取に告白した冬だったが名取にはあっさりと冗談だったことにされてしまう。それを否定することもなく卒業し手以来、冬は親友だった名取とは距離を置こうと一度も連絡を取らなかった。そして8年後、勤めている会社の取引先で転勤してきた名取と8年ぶりに再会を果たす。再会してすぐ名取は自身の結婚式に出席してくれと冬に頼んできた。はじめは断るつもりだった冬だが、名取の願いには弱く結局引き受けてしまう。そして式当日、幸せに溢れた雰囲気に疲れてしまった冬は式場の中庭で避難するように休憩した。いまだに思いを断ち切れていない自分の情けなさを反省していると、そこで別の式に出席している男と出会い…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる