The Three copper coin's Tawdry Tales 「異邦人の書」

まるこめX

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混血の放浪者 2-4

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男の登場により、空気が張り詰めた。
さっきまで談笑していた例の3人が慌てて立ち上がろうとするのをその痩躯の男は制した。

「まぁまぁ、紳士諸君、昨日はどうも。まだ飲み足りないだろう?ゆっくりくつろいでいてくれよ」

おどけるように軽やかな足取りでこちらへ近づいて来るが、その所作には隙が無い。放浪者はこの男がただ者では無い事を見て取った。その証拠にいつの間にかジョッキを奪い取られ、一気に飲み干して見せたのだ。

「シェイガン……だったね、あんた。悪いけどあんたは出禁だよ、うちの客をさんざん脅してくれたからね」

「おやおや、そうだったのかい?つれない事を言うもんだねえ、そこのお三方はどうやらオレを歓迎してくれているようだがね」

突然振られた三人は何も見なかったという風に、そそくさと席に座り小さく纏まってしまった。
女主人はそんな姿を見てだらしないねえとため息が出る。
痩躯の男は飲み干したジョッキをカウンターに置いて、挑発するように放浪者に曖気して見せた。

「失礼……ここのエールは格別だな御同輩、あんた確か昨日運び込まれてきた旅人だろう?オレはおたくの2日前ほどここにやってきた、つまりあんたの先輩って訳だ……ところ、で」

あえて沈黙を作り緊張を煽ってくる、痩躯の男は見かけとは裏腹にしたたかな一面を持っているらしい。
カウンターに身を預け、もたれかかっては居るがしっかり出口側を陣取り退路を防がれ、なおかつこちらは右手側を遮蔽物に向けている事で相手よりも一歩得物を抜くのが遅れる。
相手はしっかり腕を組んで見せているが、その右手はカウンターの下で得物に触れているだろう。

「あんたも、ここの村にあるとされる宝を狙っているのだろう?じゃなきゃ、あんな……糞溜め(おぉっと失礼)みたいな荒野をさすらっちゃ居ないだろう」

痩躯の男はこちらの出方を伺っていた、品定めをしているようだ。
己の敵か、そうでないのか。もっとも、味方を求めている風ではないのは明らかだ。
口元は笑っては居るが、その眼光はずっとこちらの喉元を狙っている。

「宝など知らん。おまえが何を探していようともおれには関係の無い事だ」

女主人と客が怯えている、この男には早々にここを出て行って貰わなければならない。
放浪者は細心の注意を払って言葉を選んだ。
もっとも宝がどうのと言う事も初耳であり、嘘偽りない発言だと言う事をこの男なら見抜くと内心で確信していた。だが、自分の探している物の手がかりかもしれないという淡い期待もその色に混じったのは失策だった。

「……つれねぇなぁ!旦那よぉ、もっとこう……ガッ!って突っかかってきてくれやしねえかな、こんだけお膳立てしてるのによぉ」

心底がっかりしたという風に痩躯の男はカウンターに預けた左手でピシャリと顔を叩いた。
その指の隙間からじろりと片目で射抜かれた。

「……ッ!」

次の男の挙動が見えた、右手が抜かれる、その予兆を見て取り緊張が走り身構えた。

「だぁっっっちぃいいあああああ!!!!!」

痩躯の男が背中をさするようにもんどりうってった。
その向こうでは緊迫感から来るショックで息を荒げたカーヤが空になったお椀を持って唖然と立ち尽くしていた。
きっと放浪者に持ってくる予定だった熱々のスープだ、よく染みている事だろう。

「で……出てって……!こっ……この店からッ……!」

カーヤの気概はこの張り詰めた空気を変えてくれた、ただ痩躯の男には火に油を注いだようだ。
ゆっくりと立ち上がるその姿勢は準備万端と言っていた。

「よくもオレの一張羅を!このガッーーー」

沸点が急上昇した、が……、痩躯の男はカーヤの怯える顔を見て振り上げた拳を止めてしまった。
その瞬間を放浪者は見逃さなかった。

「かがめッ!娘ッ!」

止まったような時が動く、カーヤはハッとして頭を抱えるようにしゃがみ込んだ。
痩躯の男はしまったと口走り体をひねり避けようとするがもう遅い。
一歩踏み込んだ放浪者は左手で痩躯の男の胸元を掴み上げ、さらに一歩進み入口から外へ放り投げた。

「くッ……そッ!!!」

ハーフオークの筋力はまさに人外と呼べるものだった。
きりもみに飛び、地面にしたたかに打ち付けられる直前、咄嗟に受け身を取り痩躯の男は砂煙を巻き上げながら二度、三度地面を転がりバランスを保ちながら立ち上がる。
痛みに耐え息を荒げながら、入口を抜けてこちらへやってくる放浪者を見据え―ー笑った。

「……やっとその気になったかよ旦那ァ。そうこなくっちゃあな」

息は荒げているが、ダメージは軽傷も良いところ。放浪者は止む無しと、右手を腰後ろの剣に伸ばし。
鞘ごと剣帯から抜き構えた。

「恨み事は言うなよ。——シェイガン」

「ハッ!名前を覚えてくれて幸栄だねえ……だが、そういう台詞はオレに勝ってから言うもんだぜ……旦那ァ」

両者のにらみ合いが始まった。
その騒動は村中の住民にあっと言う間に広がり、広場は闘技場さながらの熱気に包まれた。
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