夢旅

ひより

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悪夢の始まり

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「――――!」
目を覚ますと自分の部屋のベッドで横になっていた。天井をにらみながら荒い呼吸を整える。そして、落ち着いたころ体を起こし、顔の冷や汗を拭う。
「なんだ・・・あの夢は」
優馬は体を起こし、顔の冷や汗を拭う。机の上に置いてある置き時計を見ると、六時前だった。普段より早く起きてしまった。
優馬はベッドから降りて机の上にある一冊のノートに夢の出来事を綴った。
「すごく・・・リアルな夢だったな・・・」
独り言のようにつぶやく優馬は、本当に夢なのか?と考えた。今までリアルな夢は何度も見てきた。しかしなぜか、夢じゃないt思ってしまう。
はっきり見た、ひかるの悲しそうな顔
「・・・・」
優馬は目をこすり、部屋を出てダイニングに向かった。
「・・おはよう」
「おはよう。今日は早いじゃない。学校でなんかあるの?」
ダイニングの入ると弁当と朝食の準備をしていた母がいた。
「別に、夢見が悪くて早く目が覚めただけだよ」
椅子に座って机の上に置いてあるテレビのリモコンを持ってテレビをつける。
テレビからは笑顔に振る舞う女性の天気キャスト。
『今日は全国的に晴れ!絶好の洗濯日和になるでしょう!』
そう聞いて、優馬は外の様子を見る。カーテンから光が差し込んでいる。雀の囀り、車の走る音が聞こえてくる。所々、蝉の鳴き声が聞こえてくる。夏休みまであと二日だ。
外の様子を見ていると、目の前にサラダとトーストと目玉焼きと牛乳を用意してくれた。
お箸を持って
「いただきます」
いつもとかわらない生活。
食べ終わると、自分の部屋に戻って学校に行く支度をする。
時間に余裕をもって、家に出た。
「あれ?優くん今日早いじゃない!今日ってなんかあった?」
「・・・・・・・・」
優馬はひかるの顔を見た途端、固まってしまった。
「・・・どうしたの?」
「あーー・・・いや、なんでもない。母さんと同じこというな。今日はたまたまだ、ちょっと夢見が悪くて目が覚めただけ」
ひかるの家の前で待ってた。
いつもひかるは優馬が来るのを待っていた。これ小・中校と変わらない。
「どんな、夢を見たの?」
ひかるは声を弾ませて問う。優馬は一歩前に出て歩き出す。
後からひかるが追いかける。
「・・・・学校の帰り道に、車道の真ん中くらいに猫がいてさ、来て車が通っていないときに・・・・」
優馬は止まった。一歩前に出たひかるは振り返る。
「どうしたの?」
「・・・いやなんでもない」
優馬は大丈夫と言って、再び歩き出した。

(たかが夢の出来事だ。気にしない方がいい。忘れよう。)


学校についても優馬とひかるは会話がなかった。
下駄箱で上履きに履き替える。
「それじゃ、またね」
「うん」
ひかるは2年C組。広原は2年A組でクラスは別々である。
ひかるは手を振って教室へと向かった。
優馬は手を振り返してして見送る
自分の教室に向かおうとした時に、いきなり後ろから飛びかかってきた。
「おっはよう!優馬」
「孝司うるさい、あと重い」
優馬に飛びかかったのは、同じクラスの山根孝司。体育の時にたまたま余り者同士で組まされただけで、特に仲がいいわけではない。なのに、
「めっちゃねみーんだよー。このまま教室まで運んでよ。優馬」
「人の話を聞け」
優馬より五センチくらい高い孝司は、優馬の肩に腕を回しまま動こうとしない。
仕方なく、優馬はそのままの状態で教室に向かった。


これが広原優馬の日常生活。
ひかると登校して
孝司にじゃられる
優馬にとってこれがつまらない世界だろう。
何の面白いこともなく、刺激がある日々に飽きていた
今でもそう思ってる。

昼休憩
優馬と孝司は、学校の校舎から離れた旧校舎の中にある教室でお昼ご飯をとっていた。
昨年、広原は誰もいない静かな場所を探していたところ、旧校舎を見つけた。
中に入れないものかと校舎を回ってみる。玄関らしき扉はあったが、頑丈な施錠をかけられていて開かない。他に入口がないか探すと低い位置に、人ひとりくらい入れるくらいの穴があった。
多分、誰かが遊んで開けてしまったのだろう。
優馬は穴を潜り、中に入ることができた。木造で造られたこともあって、歩くたびに
ギシギシと音が鳴る。隅には蜘蛛の巣。窓ガラスには白い汚れが付いている。
優馬は「1年3組」と描かれたプレートの教室に入る。
綺麗に整頓された机と椅子。外は今の校舎が見えない。
音も何も聞こえない。優馬にとって理想とする場所だった。
雨の日以外は、昼休憩に見つけた旧校舎で過ごしている。
そして一年経って、新たに孝司を加わったことで静かな教室が騒がしくなった。
たくさん机があるのに、なぜか一つの机に弁当箱を並べ向かいながら食べる。
「そういえば、もうすぐ夏休みだよな?夏休みはどっか行こうぜ」
「夏休みの前に期末があるだろう。それが終わなければ夏休みは来ねぇよ」
優馬と孝司は空になった弁当箱を隣の机に置いて一緒に外を見てのんびりと過ごす。
梅雨が明けて数日後、湿気でジドジドすることはなくなったが、夏の日差しが皮膚に伝わって痛い。教室に居ても太陽の日差しが伝わる。
外を見れば大きな積乱雲。青々した空。そびえたつ木に風に揺れる葉。
「いやだぁ!!テストしたくねえ」
「駄々こねるな、子供か」
「なんで日本にテストが存在するんだよ!生徒に対するいじめだ!体罰だ!」
孝司は、椅子にしがみついて椅子ごとを左右に揺らす。
たが、優馬は無視して読書をしている。
「テストは日本だけじゃないし、いじめでもない、体罰でもない」
優馬は冷静に突っ込む。
「なんだよー。冷静に突っ込んでさ、優馬はテストが好きなのかよ」
「好きか嫌いかの問題じゃねぇよ。学生でいるうちは避けられない運命だし、俺は諦めてる」
「ふーん。・・・大人だね。それよりさ」
孝司は椅子を揺らす動きを止め、真顔で広原を見る。
「・・・・なに?」」
「優馬と九条と付き合ってるの?」
言葉を聞いた途端、優馬が本のページをめくる手を止めた。
「い、いきなりなんだよ」
「別に、ただちょっと聞きになっただけだし。実際のところはどうなんだ」
「・・・・別に付き合っていないよ。」
続けて本を読むが内容が頭に入ってこない。
「・・・本当か」
「あー、ひかるとは隣同士の幼馴染だ」
そう答えると、孝司はニヤニヤと意味深な笑みで優馬を見る。
「な、なんだよ。何が言いたいんだ」
「いや、別に。それにしても九条もかわいそうだな・・・」
「かわいそう?なんでだ?」
きょとんと聞き返す優馬に、今度は重い溜息をする孝司
「鈍感だな」
「んな!?」
「その調子だと、ほかの男に取られちまうよ」
肝心なところを言ってもらえないまま、昼休憩が終わり、午後の授業を受けた。


午後の授業を終えて、放課後
正面玄関の前で待っていたのは、ひかるだった。
「お待たせ」
優馬が言うと、光は嬉しそうに笑う。
「ううん、そんなに待ってないから」
「じゃ、帰ろうか」
二人は靴を履きかえて、正面玄関を出る。
グラウンドには、すでに部活を始めているサッカー部と陸上部。
その様子を見ながら正門を通る
登校時と変わらない道を通って、光は教室にあった出来事を話す。それをただ聞く広原。
優馬は、昼に孝司が言っていた事を思い出した。
「なぁ、ひかる」
「ん?何」
「俺達ってさ・・・・」
言葉が詰まった。付き合っているのか?その言葉を言うだけなのに、なぜか言い出せない。
「どうしたの?」
「あ・・・その・・・お、俺達って幼馴染だよな」
「え、うん、そうだよ」
「・・だよな」
しばらく沈黙になってしまった。
そして、公園の前を通った時だった。
「あ、あんなところに猫ちゃんが」
ひかるが大声で叫ぶ。指さす方向を見ると、多数の自動車やトラックが通ってるなか、車道の白線の上に白と黒の斑がある子猫がいた。子猫は体を縮み震えながら泣いている。まるで、助けを求めているようだ。
「大変!助けないと!」
黒のガードレールをひかるはまたぐ。子猫を助けに行く気だ。優馬はその姿を見て一瞬、道路に血を流しながら、倒れるひかるの姿が目に浮かんだ。
「ま、まって!」
優馬は光の肩を掴んで止める。
「早く助けないと、猫ちゃんが!」
焦りだすひかる。優馬は落ち着いた口調で言う
「・・・・今行ったら、車に引かれるぞ・・・」
優馬の言うとおり、車は途切れることなく走っている。今飛び出したら確実に引かれる。
優馬の言葉で今の自分の状況に気付いた。
「そ、そうよね・・・ごめん、危ないところだった」
申し訳なさそうな顔でひかるはガードレールから降りる。
「車が通らなくなった隙を見て、猫を助けに行こう。猫は見たところ怪我していないみたいだし」
ひかるが小さく頷き、車が通らなくなるまで、公園に入り車道が見えるベンチに腰掛ける。
(なんだ・・・・このいや予感は・・・なんでこんなに落ち着かないんだ・・・・)
「優馬どうしたの?気分でも悪くなった?」
顔を伏せている優馬に光は心配に覗き込む。
「・・いや、なんでもない。」
優馬は伏せたまま答える。ひかるはそうと言ってこれ以上何も言わず、車道の方を見てまだ走っていないかを確認している。
「あ」
ひかるが声を上げて立ち上がる。ガードレールまで走っていく。どうやら車の走行が途切れたみたいだ。優馬も後を追う。子猫もまだ怯えている様子だが、怪我がないようだ。助けるなら今がチャンスだ。
ひかるは左右の確認をしてからガードレールを跨ぎ、車道に入る。再び車が来ていないかを確認をしてから走って猫を救出した。優馬はホッと緊張から解放された。
(なんだ、さっきの予感が外れか。ならあの既視感はなんだ?)
光は走って歩道にいる優馬のところに戻る。
「優馬、猫ちゃん持ってて、ガードレールを跨ぐから」
「おう」
ひかるは優馬に子猫を両手で渡そうとした時だ。子猫が急に暴れだし、思わず手を放してしまった。猫は飛びだし、再び道路へ逃げてしまった。
「あ、待って!」
ひかりは振り返って猫を追いかける。


そして

予感が的中してしまった。違う、こんなの予想していなかった。


猫を追いかけて飛び出したひかるはワゴン車に

轢かれた。


車体のボンネットがへこみ、フロントガラスには大きなヒビが入っている。車から運転していた男性が出てき、道路に倒れるひかるに駆け寄る。


ひかるの体から血は流れていないものの、手足が逆の方向に曲がって、体中に青い痣がある。男性の呼びかけに答えがない。
「ひ、ひか・・る」
優馬は近くに駆け寄り小さな声で名前を呼ぶ。
しかし、反応が無い。鼻につく鉄の臭いに吐き気が襲わる。さっきまで猫を助けようとしていたひかるが・・・
「わああああああああああ」
優馬は叫んだ。
(なんで、なんでこうなった。夢で見たのと違・・・・・・)

・・・・・・・夢?



優馬は昨日夢を見た。ひかるが猫を抱えて優馬のところに戻ろうとした時に、トラックが来て、優馬は自分を身代りにして引かれた夢だ。
似ている。状況は同じだが、優馬の代わりに光が轢かれた。

本来、道路に倒れるべきなのは、ひかるではなく優馬だ。
「!」
優馬は強いめまいが襲い、その場に倒れた。


「また戻ってしまうね。やっと、見つけたのに」
めまいで視界があまり見えていないが、声からして女の子だ。白のレースのワンピースを着た少女が優馬を見ている。
「けど、顔覚えたわ。次はちゃんと見つけるから」
(君は・・・誰・・・・?)
少女の言葉を聞いて、優馬は意識を失った。
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