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イレギュラー
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優馬は正夢を見ることが多い。日常生活のすべては夢と同じだ。しかし、知らない人物、イレギュラーな出来事は起こることはなかった。優馬は突然の変化に戸惑うだろう。これから起こる恐怖に。
「夢か・・・・・」
優馬はいつもの自分のベッドから目を覚ます。全身から冷や汗が流れる。
「まさか、二重夢を見るとは思わなかったな。これは貴重な体験だな」
独り言を言いながら、机の上にあるノートを広げる。
(あれ・・・・?)
ペンを持つ手を止める。
(二重夢を見た場合はどの出来事を書けばいいんだ?最初の夢か後の夢か?でも、夢の話が繋がっているから見たままを書こう。)
優馬はノートに夢の事を書く。一階のダイニングに降りた。
「・・おはよう」
「おはよう。今日は早いじゃない。学校でなんかあるの?」
ダイニングの入ると弁当と朝食の準備をしていた母がいた。
「・・・・うん、たまたま早く起きただけだ」
椅子に座って机の上に置いてあるテレビのリモコンを持ってテレビをつける。
テレビからは笑顔に振る舞う女性の天気キャスター。
「『今日は全国的に晴れ!絶好の洗濯になるでしょう!』」
天気キャスターの声に合わせて、ハモるように声を出した。
「あらすごい、よくわかったね」
朝ご飯をテーブルに並べながら驚く母。自分でも驚いた。夢で見たセリフを覚えている。
同時に恐怖を覚えた。
「なんとなくだけどな」
優馬そう言って誤魔化した。
優馬は外の様子を見る。カーテンから光が差し込んでいる。雀の囀り、車の走る音が聞こえてくる。
所々、蝉の鳴き声が聞こえてくる。
外の様子を見ていると、空の色、雲の形、夏の温度。夢で見た物と同じ。正夢がここまで正確なことは一度もない。
(気のせいだろう・・・)
優馬はそう言い聞かせ、お箸を持って
「いただきます」
いつもとかわらない生活。そのはずなのに、違和感があるのはなぜだ?
食べ終わると、自分の部屋に戻って学校に行く支度をする。
時間に余裕をもって、家に出た。
「あれ?優くん今日早いじゃない!今日ってなんかあった?」
「今日はたまたまだ、ちょっと夢見が悪くて目が覚めただけだ」
「ね、どんな夢を見たの?」
「あーー。たしか・・・・」
優馬は黙り込んだ。ひかるは首を傾げた。暫くして優馬が口を開く。
「内緒だ」
「えーー、なんでー!」
案の定、ひかるの不服を買ってしまった。
「なんでもだ」
「・・・私に言えないような夢なの?はっ、まさかスケベな夢でも・・・」
「それなない」
ひかるの考えをスッパリ言い切った。
「だ、だよねー」
ひかるは愛想笑いをする。
もし、正夢の通りになってしまったら、放課後ひかるは・・・・
だとしたら、放課後はひかると一緒にいるのはダメだ。
「・・・なぁ、ひかる」
「なに?」
「今日、寄るところがあるから一緒に帰れないから」
「・・・うん、わかった」
「帰る時、あの公園の近くを絶対に通るよ。絶対に」
「う、うん・・わか・・・った」
急に遠回りをしろと言われ、戸惑うひかるだけど、承諾してくれた。
(ごめん、ひかる。これはひかるのためなんだ・・)
高校の校舎が見えてきた。正門を通って靴箱にはたくさんの生徒がそれぞれ教室に向かっている。優馬は上履きに履き替えるころに、息を切らしたながら詰め寄るひかる。
「優くん、歩くの早いよー」
「わ、わりぃ・・・・」
今にも疲れで崩れそうなひかるに、申し訳さそうに謝る。
「わたしを置いてくなんてひどいよ」
「だから、わりぃって」
「今度、昼飯おごってやるよ」
「おっはよう!優馬」
優馬の後ろから孝司の声が聞こえた瞬間。優馬は横に反らして回避した。
「うおっ?よく避けれたな。」
「おはよう孝司。朝から元気だな」
「んなわけねぇだろう。めっちゃねみーんだよー。俺をおぶって運んでくれ」
「嫌だよ」
そう言い優馬は早々に歩き、孝司は後を追うように歩き出す。
教室に入ると、クラスの男子5人くらいが優馬に群がる。
「なあ広原、今日は誰がどんなことが起きるか予言してみてくれよ。」
群れの中の右端の男子が聞いてきた。他の男子は好奇な目で広原の答えを待っている。
「おい、来て早々に何聞いてんだよ。散れよ」
優馬の後ろにいた孝司が、庇うように前に出て男子たちに睨む。
「はぁ、山根には聞いてねぇそ、引っ込んでろ」
「あぁ?」
彼らの挑発的な発言に、孝司をさらに怒らせる。
朝から喧嘩が起きかねない空気にさらされ、周りは何事かと注目される。
優馬は軽くため息をつき、孝司の肩を置いた。
「孝司、やめろ」
「だってよー」
「俺は気にしていない。」
「・・・わかったよ」
孝司は腑に落ちない様子で、先に席についた。
それを確認して、優馬は彼らと向き合う。
「渡辺、今日先生に怒られるぞ」
優馬が指をさして言ったのは、左から二番目にいる、髪が茶髪で制服を着崩した男子だ。彼からタバコの臭いがする。
「え、まじかよ。俺何かやらかしたか?」
男子は意外そうな様子で驚く。優馬は冷静に答える。
「さあね、俺が言えるのはこれくらいだ。」
「おぅ、サンキューな」
男子は礼を言うと自分の席に戻る。群がっていた彼らも散って席に着く。
優馬も窓側の前の席に着く。
近くにいる女子が優馬を見ながらヒソヒソ話をする。優馬に聞こえる声で話しているのか話が聞こえる。
「また、イミフな予言言ってたね」
「ほんと、気持ち悪いわ」
女子たちはクスクスと笑う。陰口を叩かれることに慣れた。
昼休憩
「いつまで不貞腐れいるんだよ。」
不貞腐れ孝司だった。眉にしわを寄せて弁当をドガ食いしている。
「だってよ、あいつら、優馬のことを予言者みたいな目で優馬を利用していて、なんか腹立つ!」
「なんで孝司が腹立つんだよ。利用されているのは俺だろう。」
「優馬は腹立てねえかよ。」
「腹立つことはないが、怒ったところで何にもならないし、てか、怒る気力がない。」
弁当を完食して、すいとうのお茶を飲む。
「あー、優馬らしいな」
孝司は納得したらしい。
「ま、でも、庇ってくれてありがとうな」
優馬が礼を言うと、孝司は照れながら笑顔を見せる。
「そういえば、もうすぐ夏休みだな」
そう言い出したのは優馬からだ。
「おー。そういえばそうだな。」
「夏休みに入ったら、何する?」
「そうだな、海とかプールとか、花火大会とか行きたいな」
「お前らしいな。でもそれは課題を終わらせてからな」
優馬と孝司は空になった弁当箱を隣の机に置いて一緒に外を見てのんびりと過ごす。
梅雨が明けて数日後、湿気でジドジドすることはなくなったが、夏の日差しが皮膚に伝わって痛い。教室に居ても太陽の日差しが伝わる。
外を見れば大きな積乱雲。青々した空。そびえたつ木に風に揺れる葉。
「えー!課題をしているうちに夏休み終わっちまうじゃん。遊ぶ時間なくなるじゃん。」
「課題なんて8月までに終わらせればいいじゃん。出来ないのは孝司の怠惰だ。」
「なんで、日本に夏休みに課題を出すんだよ!生徒に対するいじめだ!体罰だ!」
孝司は、椅子にしがみついて椅子ごとを左右に揺らす。
たが、優馬は無視して読書をしている。
「課題は日本だけじゃないんだから、受け入れろ」
優馬は冷静に突っ込む。
「なんだよー。冷静に突っ込んでさ、優馬は課題が好きなのかよ」
「好きか嫌いかの問題じゃねぇよ。学生でいるうちは避けられない運命だし、俺は諦めてる」
「ふーん。・・・大人だね。それよりさ」
孝司は椅子を揺らす動きを止め、真顔で広原を見る。広原も見返す。
「優馬と九条と付き合ってるの?」
言葉を聞いた途端、優馬が持っていた本を閉じた。
「いきなりなんだよ」
「別に、今朝のやり取りを見てさ、カップルみたいなんだよね。優馬は無口な彼氏で、九条が天然で純真無垢な彼女みたいにさ」
「・・・・別に付き合っていないよ。」
「・・・本当か」
「あー、ひかるとは隣同士の幼馴染だ。そうれだけだ」
「ふーんそうなんだ。それにしても九条もかわいそうだな・・・」
「かわいそう?なんでだ」
きょとんと聞き返す優馬に、今度は重い溜息をする孝司
「鈍感だな」
「そうか?」
「その調子だと、ほかの男に取られちまうよ。優馬はきづいていると思うけど、九条はあー見えて、結構モテるんだぜ。可愛いし小さいのに胸が大きいし、頭がいいしな」
「孝司は、ひかるのことが好きなのか?」
「はぁ?なんだよいきなり」
「別になんとなく」
「まぁ、好きって程でもないけど、憧れているというか。見ているだけで満足しているような」
顔を赤らめて真面目に答える孝司に優馬は思わず吹き出して笑った。
「な、なんだよ。笑わなくてもいいじゃねぇ!!」
「い、いや別に。お前のそういうのを見るの初めてだなと思って」
「なんだよそれ・・・」
孝司は照れて後ろ髪を掻いた。
「あ、そういえば孝司。今日放課後暇か?」
校舎に戻って廊下を歩いているときに思い出したのか、声をかけた。
「んあ?まぁ、暇ちゃー暇だな」
「だったら、一緒に帰ろうぜ」
「あれ?九条と帰らないのか?」
「ちょっと訳あってな。ひかるには一緒に帰れないって言っている」
「珍しいな。二人が別々に帰るなんてさ」
「・・そうだな」
教室に戻ると、渡辺は机の上に伏せていた。
「明日は5,6時間目に終業式あるので、間違って羽目を外して無断欠席にならないように。以上」
女の担任の先生の話を終えた。
「起立」
日直の女子が言い、一斉に席を立つ。
「礼」
「さようなら」
礼をしながらサヨナラの挨拶をする。そして、一気にそれぞれ皆は帰り支度をする。
一部は部活に行くようだ。
「優馬、帰ろうぜ」
「おう」
二人は鞄を持って教室を出る。
「そういえば、優馬と帰るのは初めてだな」
「あー、言われてみれば」
学校の帰り道に、ふと孝司が言う。孝司とは、体育の時に二人組を作る時にたまたま余ったもの同士でペアになった時に知り合った。優馬の第一印象は無表情で何を考えているか分からない人だった。孝司も優馬に関わりたくないと思っていた。
しかし、ペアで行動しているうちに、優馬の行動に興味を持つようになった。
それから、孝司は頻繁に優馬に声をかけるようになり、一緒に昼食を摂るまでいった。
一部の女子から優馬と孝司は付き合っているんじゃないかって噂されたが、すぐに無くなった。毎日行動している二人だが登下校だけは、ひかると帰るようになっている。
「なぁ、優馬」
「ん?」
「おまえんちってさ、門限厳しい?」
「いや、別に厳しくはないが、なんでだ?」
「なら、どっか寄って行こうぜ。こうして一緒に帰れるんなんて、そうないから」
「そうないって、まだ卒業するまで何回もあるだろう。女子かお前は」
「別にいいだろう。ゲーセンで遊んでこうぜ」
孝司を先頭に、ゲーセンに行くことにした。なんだか、孝司が嬉しそうなのは気のせいだろうか。
ひかるを交通事故から避けるのは好機かもしれない。優馬は正夢と違った行動をする事は初めてだ。いつもと違う帰り道を通って少し戸惑ってしまう。
「お、ここだ」
着いた場所は、街の中で一番大きなゲームセンター。店の中から音が漏れている。
中に入れば人と比べ物にならないくらいの騒音。音にびっくりした。
「ここで何のゲームするの?」
「そりゃ、もちろん。」
孝司に導かれた、手に持っていたのは太鼓の鉢だった。
「太鼓の仙人で勝負だ!」
「あー、これが例の太鼓ゲームか」
決めポーズをする孝司に、優馬はあえてスルーした。
「これで何をするのだ?」
優馬が孝司の隣に並んで鉢を持ち、不思議そうに首をかしげる。
「え、画面に流れてくる赤と青の太鼓にタイミング合わせて打つんだけど・・・。
もしかして、したことないの?」
「見たことはあるが、したことがない」
「まじかー、したことない人初めて見たわ。だったら、勝負とかやめとくか?」
「いや、大丈夫だ。練習すれば、なんとかなると思う。」
「そっか、じゃ、練習がてらちょっとしてみようか」
太鼓の仙人は1Pで100円だから、二人で200円。それぞれ100円ずつ入れる。
『太鼓の仙人!』
画面に現れた髭の生えた太鼓のゆるキャラが登場。
「おぉー」
優馬が思わず、声を漏らした。
『好きな曲を選ぶドン!』
「優馬、曲を選んでいいぞー」
「じゃ、J‐popで・・・」
優馬は曲を選び、難易度も初めてというわけで、簡単にした。
曲が流れ、赤の太鼓がゆっくり流れてきた。
「赤い太鼓は、そのまま真ん中にタイミング合わせて叩け」
「こうか?」
ドンッ
「そうだ。その調子だ」
隣で、なんだか嬉しそうに声を弾ませる孝司。
横目でちらっと見ると、なんだか嬉しそうだ。広原自身も嬉しかった。
『フルコンボだドン』
「すっげぇな、初めてでフルコンボとか」
「・・・なんとなく、わかってきた。孝司、勝負だ」
「もういいのか、いきなり勝負しても。」
「大丈夫だ。早くやろうぜ」
「やる気満々だな。」
二曲目からは、孝司が曲を選び、難易度は孝司に合わせたのか普通を選んだ。
曲の流れは、一曲目より少し早めのテンポだった。
二人とも楽しそうに太鼓を打つ。
そして、結果は・・・・
「優馬・・・・本当に初心者か・・・・?」
「そうだが?」
結果は、優馬の勝ちとなった。
孝司は、手と膝をついて、落ち込んでしまった。
「くっ・・・まさか初心者に負けるなんて・・・・」
「た、孝司・・・」
落ち込んでいる孝司を励まそうと手を差しだろうとしたが、いきなり起き上がった。
「もう一回だ!勝つまで帰さないからな。」
急に燃えだした孝司。
優馬はため息をついて、勝負を受けた。
「ちきしょー。連敗かよ。」
「孝司、お前音感無いだろう。」
ゲーセンから出てきた二人、孝司は肩を沈めてさらに落ち込む。様子から見るに、孝司は一勝もせずに、金欠となり、引き上げたのだろう。
「次は、勝つからな」
「はいはい」
優馬と孝司は話しながら、家路に向かう。
その時のこの出来事が面白すぎて、優馬は気付いていなかった。
この世界は夢が繰り返される世界であることを。
街を歩いていると、前から長身のガラの悪い男4人組とすれ違う。そのとき、優馬の肩が4人組の一人の肩とぶつかってしまった。
「すみません」
優馬は謝ると、ぶつかった男が優馬の肩を掴んで引き止める。
「おい待てよ。なんだよその謝り方。ちゃんと謝れよ」
「あの・・さっき謝ったですけど・・」
「そんな謝り方で許すと思ったのかよ」
その男は帽子をかぶり鼻ピアスを付けたおり、一目で関わってはいけない人物だ。
男は優馬につかむ手を強める。
「おい、あんた、優馬の肩から離せよ」
孝司は男の手首を掴み、睨む。男はあざ笑う。
「はっ、なんだよお前、こいつの彼氏か?」
男がいうと、一緒にいた三人笑う。
「うっわぁ、キンモ―。ガチでいるんだなゲイが」
「こいつらと同じ男だと思うと吐き気がするわ」
三人組からそれぞれ罵声を浴びる。優馬は罵声を浴びるのは慣れていたが、孝司の表情が
険しくなった。
そして、孝司は優馬の肩に掴んだ男の顔を殴った。
それが火種となってしまった。
殴られた男は飛ばされ、3人の男たちに受け止められる。
「コノヤロー・・・・。よくもやりやがったな。」
「謝るのはお前たちの方だ!」
殴られた男は、頬を拭い孝司に殴りにかかる。それが発展し、喧嘩となってしまった。
路地裏に連れて込まれ、優馬たち一方的に殴られていた。
2対4では優馬達には不利だ。
喧嘩の引き金を引いた孝司は、喧嘩に慣れているのかかわしながら相手に殴ったり蹴ったりと攻撃をする。しかし、今まで喧嘩をしたことのない優馬はゴミ箱の物陰に隠れた。
(孝司って・・・喧嘩強いな・・・)
学校にいるときは、犬みたいに付いてくるが多かったが、学校からでる人が変わったようだ。
(こんな孝司、初めて見た)
3対1で戦っているのに、怪我一つしていない。
あれ・・・?
3対1・・・?
優馬は、孝司たちの様子見ていると、優馬以外4人しかいない。あと一人はどこに・・・・
「優馬!後ろ!」
孝司の声で振り返ると、4人組の1人が優馬の頭に目がけてパイプを振りかざす。
とっさに頭を庇い目をつむる優馬。しかし、痛みがない。おそるおそる目を開けると孝司は自分の体で優馬を庇った。頭から血を流し、痛みに食いしばっている。
「た・・・孝司・・・」
「大丈夫か優馬・・・。ちょっと待っててくれ」
苦しそうに話す孝司に、優馬は頷く。孝司は雄叫びを上げてパイプで殴った男を殴った。4人とも戦闘不能。立っているのは孝司と優馬だけだ。
「はぁー。疲れたぁ」
孝司は気が抜けたのか、座り込んだ。
「孝司・・・大丈夫か・・・。ごめん、俺に庇ったせいで」
「別にいいよ、俺が庇いたかっただけだ」
「お前、喧嘩強いな・・・」
「中学の時は、毎日喧嘩三昧してたからな。久しぶりだから体がなまってたぜ」
孝司は無邪気に笑う。優馬は体を起こそうと手を差し出す。孝司は優馬の手を掴もうと手を伸ばす。
しかし、手は虚しく空振り手ごと地に崩れ落ちる。
「孝司・・・?」
名前を呼んでも返事がない。
「孝司!!!!」
体を揺さぶっても孝司は動かない。顔色が土色に変わっていく。
(まさか・・・そんなことが・・・)
優馬は震えながら、膝を地について孝司の手を触れる。
「!」
その手は氷のように冷たく、肌も血の気が無くなっている。
優馬は確信した。孝司は優馬を庇って・・・
死んだと
(どうして・・・夢とは違うじゃないか・・・!)
優馬は口を噛みしめ、手を地に叩きつけた。
(正夢通りにしなかったからか・・・・?夢の通りにしなかったから、こんなことになってしまったのか・・・?一体、どうすればよかったんだよ・・・)
混乱していると、激しい動悸、息が上がる。めまいに似た感覚に襲われ、優馬はそのまま倒れた。
「・・・・・」
目を覚めると、またいつのも家の部屋のベッドの上で目を覚ます。
「夢か・・・・・」
優馬はいつもの自分のベッドから目を覚ます。全身から冷や汗が流れる。
「まさか、二重夢を見るとは思わなかったな。これは貴重な体験だな」
独り言を言いながら、机の上にあるノートを広げる。
(あれ・・・・?)
ペンを持つ手を止める。
(二重夢を見た場合はどの出来事を書けばいいんだ?最初の夢か後の夢か?でも、夢の話が繋がっているから見たままを書こう。)
優馬はノートに夢の事を書く。一階のダイニングに降りた。
「・・おはよう」
「おはよう。今日は早いじゃない。学校でなんかあるの?」
ダイニングの入ると弁当と朝食の準備をしていた母がいた。
「・・・・うん、たまたま早く起きただけだ」
椅子に座って机の上に置いてあるテレビのリモコンを持ってテレビをつける。
テレビからは笑顔に振る舞う女性の天気キャスター。
「『今日は全国的に晴れ!絶好の洗濯になるでしょう!』」
天気キャスターの声に合わせて、ハモるように声を出した。
「あらすごい、よくわかったね」
朝ご飯をテーブルに並べながら驚く母。自分でも驚いた。夢で見たセリフを覚えている。
同時に恐怖を覚えた。
「なんとなくだけどな」
優馬そう言って誤魔化した。
優馬は外の様子を見る。カーテンから光が差し込んでいる。雀の囀り、車の走る音が聞こえてくる。
所々、蝉の鳴き声が聞こえてくる。
外の様子を見ていると、空の色、雲の形、夏の温度。夢で見た物と同じ。正夢がここまで正確なことは一度もない。
(気のせいだろう・・・)
優馬はそう言い聞かせ、お箸を持って
「いただきます」
いつもとかわらない生活。そのはずなのに、違和感があるのはなぜだ?
食べ終わると、自分の部屋に戻って学校に行く支度をする。
時間に余裕をもって、家に出た。
「あれ?優くん今日早いじゃない!今日ってなんかあった?」
「今日はたまたまだ、ちょっと夢見が悪くて目が覚めただけだ」
「ね、どんな夢を見たの?」
「あーー。たしか・・・・」
優馬は黙り込んだ。ひかるは首を傾げた。暫くして優馬が口を開く。
「内緒だ」
「えーー、なんでー!」
案の定、ひかるの不服を買ってしまった。
「なんでもだ」
「・・・私に言えないような夢なの?はっ、まさかスケベな夢でも・・・」
「それなない」
ひかるの考えをスッパリ言い切った。
「だ、だよねー」
ひかるは愛想笑いをする。
もし、正夢の通りになってしまったら、放課後ひかるは・・・・
だとしたら、放課後はひかると一緒にいるのはダメだ。
「・・・なぁ、ひかる」
「なに?」
「今日、寄るところがあるから一緒に帰れないから」
「・・・うん、わかった」
「帰る時、あの公園の近くを絶対に通るよ。絶対に」
「う、うん・・わか・・・った」
急に遠回りをしろと言われ、戸惑うひかるだけど、承諾してくれた。
(ごめん、ひかる。これはひかるのためなんだ・・)
高校の校舎が見えてきた。正門を通って靴箱にはたくさんの生徒がそれぞれ教室に向かっている。優馬は上履きに履き替えるころに、息を切らしたながら詰め寄るひかる。
「優くん、歩くの早いよー」
「わ、わりぃ・・・・」
今にも疲れで崩れそうなひかるに、申し訳さそうに謝る。
「わたしを置いてくなんてひどいよ」
「だから、わりぃって」
「今度、昼飯おごってやるよ」
「おっはよう!優馬」
優馬の後ろから孝司の声が聞こえた瞬間。優馬は横に反らして回避した。
「うおっ?よく避けれたな。」
「おはよう孝司。朝から元気だな」
「んなわけねぇだろう。めっちゃねみーんだよー。俺をおぶって運んでくれ」
「嫌だよ」
そう言い優馬は早々に歩き、孝司は後を追うように歩き出す。
教室に入ると、クラスの男子5人くらいが優馬に群がる。
「なあ広原、今日は誰がどんなことが起きるか予言してみてくれよ。」
群れの中の右端の男子が聞いてきた。他の男子は好奇な目で広原の答えを待っている。
「おい、来て早々に何聞いてんだよ。散れよ」
優馬の後ろにいた孝司が、庇うように前に出て男子たちに睨む。
「はぁ、山根には聞いてねぇそ、引っ込んでろ」
「あぁ?」
彼らの挑発的な発言に、孝司をさらに怒らせる。
朝から喧嘩が起きかねない空気にさらされ、周りは何事かと注目される。
優馬は軽くため息をつき、孝司の肩を置いた。
「孝司、やめろ」
「だってよー」
「俺は気にしていない。」
「・・・わかったよ」
孝司は腑に落ちない様子で、先に席についた。
それを確認して、優馬は彼らと向き合う。
「渡辺、今日先生に怒られるぞ」
優馬が指をさして言ったのは、左から二番目にいる、髪が茶髪で制服を着崩した男子だ。彼からタバコの臭いがする。
「え、まじかよ。俺何かやらかしたか?」
男子は意外そうな様子で驚く。優馬は冷静に答える。
「さあね、俺が言えるのはこれくらいだ。」
「おぅ、サンキューな」
男子は礼を言うと自分の席に戻る。群がっていた彼らも散って席に着く。
優馬も窓側の前の席に着く。
近くにいる女子が優馬を見ながらヒソヒソ話をする。優馬に聞こえる声で話しているのか話が聞こえる。
「また、イミフな予言言ってたね」
「ほんと、気持ち悪いわ」
女子たちはクスクスと笑う。陰口を叩かれることに慣れた。
昼休憩
「いつまで不貞腐れいるんだよ。」
不貞腐れ孝司だった。眉にしわを寄せて弁当をドガ食いしている。
「だってよ、あいつら、優馬のことを予言者みたいな目で優馬を利用していて、なんか腹立つ!」
「なんで孝司が腹立つんだよ。利用されているのは俺だろう。」
「優馬は腹立てねえかよ。」
「腹立つことはないが、怒ったところで何にもならないし、てか、怒る気力がない。」
弁当を完食して、すいとうのお茶を飲む。
「あー、優馬らしいな」
孝司は納得したらしい。
「ま、でも、庇ってくれてありがとうな」
優馬が礼を言うと、孝司は照れながら笑顔を見せる。
「そういえば、もうすぐ夏休みだな」
そう言い出したのは優馬からだ。
「おー。そういえばそうだな。」
「夏休みに入ったら、何する?」
「そうだな、海とかプールとか、花火大会とか行きたいな」
「お前らしいな。でもそれは課題を終わらせてからな」
優馬と孝司は空になった弁当箱を隣の机に置いて一緒に外を見てのんびりと過ごす。
梅雨が明けて数日後、湿気でジドジドすることはなくなったが、夏の日差しが皮膚に伝わって痛い。教室に居ても太陽の日差しが伝わる。
外を見れば大きな積乱雲。青々した空。そびえたつ木に風に揺れる葉。
「えー!課題をしているうちに夏休み終わっちまうじゃん。遊ぶ時間なくなるじゃん。」
「課題なんて8月までに終わらせればいいじゃん。出来ないのは孝司の怠惰だ。」
「なんで、日本に夏休みに課題を出すんだよ!生徒に対するいじめだ!体罰だ!」
孝司は、椅子にしがみついて椅子ごとを左右に揺らす。
たが、優馬は無視して読書をしている。
「課題は日本だけじゃないんだから、受け入れろ」
優馬は冷静に突っ込む。
「なんだよー。冷静に突っ込んでさ、優馬は課題が好きなのかよ」
「好きか嫌いかの問題じゃねぇよ。学生でいるうちは避けられない運命だし、俺は諦めてる」
「ふーん。・・・大人だね。それよりさ」
孝司は椅子を揺らす動きを止め、真顔で広原を見る。広原も見返す。
「優馬と九条と付き合ってるの?」
言葉を聞いた途端、優馬が持っていた本を閉じた。
「いきなりなんだよ」
「別に、今朝のやり取りを見てさ、カップルみたいなんだよね。優馬は無口な彼氏で、九条が天然で純真無垢な彼女みたいにさ」
「・・・・別に付き合っていないよ。」
「・・・本当か」
「あー、ひかるとは隣同士の幼馴染だ。そうれだけだ」
「ふーんそうなんだ。それにしても九条もかわいそうだな・・・」
「かわいそう?なんでだ」
きょとんと聞き返す優馬に、今度は重い溜息をする孝司
「鈍感だな」
「そうか?」
「その調子だと、ほかの男に取られちまうよ。優馬はきづいていると思うけど、九条はあー見えて、結構モテるんだぜ。可愛いし小さいのに胸が大きいし、頭がいいしな」
「孝司は、ひかるのことが好きなのか?」
「はぁ?なんだよいきなり」
「別になんとなく」
「まぁ、好きって程でもないけど、憧れているというか。見ているだけで満足しているような」
顔を赤らめて真面目に答える孝司に優馬は思わず吹き出して笑った。
「な、なんだよ。笑わなくてもいいじゃねぇ!!」
「い、いや別に。お前のそういうのを見るの初めてだなと思って」
「なんだよそれ・・・」
孝司は照れて後ろ髪を掻いた。
「あ、そういえば孝司。今日放課後暇か?」
校舎に戻って廊下を歩いているときに思い出したのか、声をかけた。
「んあ?まぁ、暇ちゃー暇だな」
「だったら、一緒に帰ろうぜ」
「あれ?九条と帰らないのか?」
「ちょっと訳あってな。ひかるには一緒に帰れないって言っている」
「珍しいな。二人が別々に帰るなんてさ」
「・・そうだな」
教室に戻ると、渡辺は机の上に伏せていた。
「明日は5,6時間目に終業式あるので、間違って羽目を外して無断欠席にならないように。以上」
女の担任の先生の話を終えた。
「起立」
日直の女子が言い、一斉に席を立つ。
「礼」
「さようなら」
礼をしながらサヨナラの挨拶をする。そして、一気にそれぞれ皆は帰り支度をする。
一部は部活に行くようだ。
「優馬、帰ろうぜ」
「おう」
二人は鞄を持って教室を出る。
「そういえば、優馬と帰るのは初めてだな」
「あー、言われてみれば」
学校の帰り道に、ふと孝司が言う。孝司とは、体育の時に二人組を作る時にたまたま余ったもの同士でペアになった時に知り合った。優馬の第一印象は無表情で何を考えているか分からない人だった。孝司も優馬に関わりたくないと思っていた。
しかし、ペアで行動しているうちに、優馬の行動に興味を持つようになった。
それから、孝司は頻繁に優馬に声をかけるようになり、一緒に昼食を摂るまでいった。
一部の女子から優馬と孝司は付き合っているんじゃないかって噂されたが、すぐに無くなった。毎日行動している二人だが登下校だけは、ひかると帰るようになっている。
「なぁ、優馬」
「ん?」
「おまえんちってさ、門限厳しい?」
「いや、別に厳しくはないが、なんでだ?」
「なら、どっか寄って行こうぜ。こうして一緒に帰れるんなんて、そうないから」
「そうないって、まだ卒業するまで何回もあるだろう。女子かお前は」
「別にいいだろう。ゲーセンで遊んでこうぜ」
孝司を先頭に、ゲーセンに行くことにした。なんだか、孝司が嬉しそうなのは気のせいだろうか。
ひかるを交通事故から避けるのは好機かもしれない。優馬は正夢と違った行動をする事は初めてだ。いつもと違う帰り道を通って少し戸惑ってしまう。
「お、ここだ」
着いた場所は、街の中で一番大きなゲームセンター。店の中から音が漏れている。
中に入れば人と比べ物にならないくらいの騒音。音にびっくりした。
「ここで何のゲームするの?」
「そりゃ、もちろん。」
孝司に導かれた、手に持っていたのは太鼓の鉢だった。
「太鼓の仙人で勝負だ!」
「あー、これが例の太鼓ゲームか」
決めポーズをする孝司に、優馬はあえてスルーした。
「これで何をするのだ?」
優馬が孝司の隣に並んで鉢を持ち、不思議そうに首をかしげる。
「え、画面に流れてくる赤と青の太鼓にタイミング合わせて打つんだけど・・・。
もしかして、したことないの?」
「見たことはあるが、したことがない」
「まじかー、したことない人初めて見たわ。だったら、勝負とかやめとくか?」
「いや、大丈夫だ。練習すれば、なんとかなると思う。」
「そっか、じゃ、練習がてらちょっとしてみようか」
太鼓の仙人は1Pで100円だから、二人で200円。それぞれ100円ずつ入れる。
『太鼓の仙人!』
画面に現れた髭の生えた太鼓のゆるキャラが登場。
「おぉー」
優馬が思わず、声を漏らした。
『好きな曲を選ぶドン!』
「優馬、曲を選んでいいぞー」
「じゃ、J‐popで・・・」
優馬は曲を選び、難易度も初めてというわけで、簡単にした。
曲が流れ、赤の太鼓がゆっくり流れてきた。
「赤い太鼓は、そのまま真ん中にタイミング合わせて叩け」
「こうか?」
ドンッ
「そうだ。その調子だ」
隣で、なんだか嬉しそうに声を弾ませる孝司。
横目でちらっと見ると、なんだか嬉しそうだ。広原自身も嬉しかった。
『フルコンボだドン』
「すっげぇな、初めてでフルコンボとか」
「・・・なんとなく、わかってきた。孝司、勝負だ」
「もういいのか、いきなり勝負しても。」
「大丈夫だ。早くやろうぜ」
「やる気満々だな。」
二曲目からは、孝司が曲を選び、難易度は孝司に合わせたのか普通を選んだ。
曲の流れは、一曲目より少し早めのテンポだった。
二人とも楽しそうに太鼓を打つ。
そして、結果は・・・・
「優馬・・・・本当に初心者か・・・・?」
「そうだが?」
結果は、優馬の勝ちとなった。
孝司は、手と膝をついて、落ち込んでしまった。
「くっ・・・まさか初心者に負けるなんて・・・・」
「た、孝司・・・」
落ち込んでいる孝司を励まそうと手を差しだろうとしたが、いきなり起き上がった。
「もう一回だ!勝つまで帰さないからな。」
急に燃えだした孝司。
優馬はため息をついて、勝負を受けた。
「ちきしょー。連敗かよ。」
「孝司、お前音感無いだろう。」
ゲーセンから出てきた二人、孝司は肩を沈めてさらに落ち込む。様子から見るに、孝司は一勝もせずに、金欠となり、引き上げたのだろう。
「次は、勝つからな」
「はいはい」
優馬と孝司は話しながら、家路に向かう。
その時のこの出来事が面白すぎて、優馬は気付いていなかった。
この世界は夢が繰り返される世界であることを。
街を歩いていると、前から長身のガラの悪い男4人組とすれ違う。そのとき、優馬の肩が4人組の一人の肩とぶつかってしまった。
「すみません」
優馬は謝ると、ぶつかった男が優馬の肩を掴んで引き止める。
「おい待てよ。なんだよその謝り方。ちゃんと謝れよ」
「あの・・さっき謝ったですけど・・」
「そんな謝り方で許すと思ったのかよ」
その男は帽子をかぶり鼻ピアスを付けたおり、一目で関わってはいけない人物だ。
男は優馬につかむ手を強める。
「おい、あんた、優馬の肩から離せよ」
孝司は男の手首を掴み、睨む。男はあざ笑う。
「はっ、なんだよお前、こいつの彼氏か?」
男がいうと、一緒にいた三人笑う。
「うっわぁ、キンモ―。ガチでいるんだなゲイが」
「こいつらと同じ男だと思うと吐き気がするわ」
三人組からそれぞれ罵声を浴びる。優馬は罵声を浴びるのは慣れていたが、孝司の表情が
険しくなった。
そして、孝司は優馬の肩に掴んだ男の顔を殴った。
それが火種となってしまった。
殴られた男は飛ばされ、3人の男たちに受け止められる。
「コノヤロー・・・・。よくもやりやがったな。」
「謝るのはお前たちの方だ!」
殴られた男は、頬を拭い孝司に殴りにかかる。それが発展し、喧嘩となってしまった。
路地裏に連れて込まれ、優馬たち一方的に殴られていた。
2対4では優馬達には不利だ。
喧嘩の引き金を引いた孝司は、喧嘩に慣れているのかかわしながら相手に殴ったり蹴ったりと攻撃をする。しかし、今まで喧嘩をしたことのない優馬はゴミ箱の物陰に隠れた。
(孝司って・・・喧嘩強いな・・・)
学校にいるときは、犬みたいに付いてくるが多かったが、学校からでる人が変わったようだ。
(こんな孝司、初めて見た)
3対1で戦っているのに、怪我一つしていない。
あれ・・・?
3対1・・・?
優馬は、孝司たちの様子見ていると、優馬以外4人しかいない。あと一人はどこに・・・・
「優馬!後ろ!」
孝司の声で振り返ると、4人組の1人が優馬の頭に目がけてパイプを振りかざす。
とっさに頭を庇い目をつむる優馬。しかし、痛みがない。おそるおそる目を開けると孝司は自分の体で優馬を庇った。頭から血を流し、痛みに食いしばっている。
「た・・・孝司・・・」
「大丈夫か優馬・・・。ちょっと待っててくれ」
苦しそうに話す孝司に、優馬は頷く。孝司は雄叫びを上げてパイプで殴った男を殴った。4人とも戦闘不能。立っているのは孝司と優馬だけだ。
「はぁー。疲れたぁ」
孝司は気が抜けたのか、座り込んだ。
「孝司・・・大丈夫か・・・。ごめん、俺に庇ったせいで」
「別にいいよ、俺が庇いたかっただけだ」
「お前、喧嘩強いな・・・」
「中学の時は、毎日喧嘩三昧してたからな。久しぶりだから体がなまってたぜ」
孝司は無邪気に笑う。優馬は体を起こそうと手を差し出す。孝司は優馬の手を掴もうと手を伸ばす。
しかし、手は虚しく空振り手ごと地に崩れ落ちる。
「孝司・・・?」
名前を呼んでも返事がない。
「孝司!!!!」
体を揺さぶっても孝司は動かない。顔色が土色に変わっていく。
(まさか・・・そんなことが・・・)
優馬は震えながら、膝を地について孝司の手を触れる。
「!」
その手は氷のように冷たく、肌も血の気が無くなっている。
優馬は確信した。孝司は優馬を庇って・・・
死んだと
(どうして・・・夢とは違うじゃないか・・・!)
優馬は口を噛みしめ、手を地に叩きつけた。
(正夢通りにしなかったからか・・・・?夢の通りにしなかったから、こんなことになってしまったのか・・・?一体、どうすればよかったんだよ・・・)
混乱していると、激しい動悸、息が上がる。めまいに似た感覚に襲われ、優馬はそのまま倒れた。
「・・・・・」
目を覚めると、またいつのも家の部屋のベッドの上で目を覚ます。
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