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中年柔道家、再始動

おっさんと中学生の乱取り

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柔軟をこなし
筋トレ、打ち込みに投げ込み、寝技稽古、すべてが懐かしい、そして幼少期に体に叩き込まれた
感覚は30を超えたこの体は覚えていた。

むしろ、当時より基礎体力は高いだろう、何でもやる運送屋はとにかく、力仕事だ
引っ越しなら、エレベーターのない5階だって、重い家具を一人で運ぶ、
力自慢の俺はそれらをすべて一人でこなした、その分従業員も少なく済むし、利益が大きいからね。

他に、鮮魚の配送では、寒い冷凍車の中で思い氷漬けの魚を上げ下げする、そのスピードで他の業者と差別化を図り新しい仕事をもらう。

配送時間に関しては大型車は法定速度を守らないと大事故になるので、他社もあまり変わらない。
差別化するなら、積み込み、積み下ろしの時間が勝負になる。

そんな毎日は、必然と重いものを持つ鍛錬になるわけだ。



お互いに礼! はじめ!

田島浩紀君との乱取りが始まった。正直いうと、拍子抜けしたのが本音だ。
乱取りとは言え、浩紀君は隙が多い、しばらく、相手に技をかけさせたが、切れ味が弱い。

力に頼った柔道だ・・・こんな柔道したら、親父にぶっ飛ばされてたな・・・
だから、挑む心構えから、指導者の感じになってしまった

「ほら!そこ!足が揃ったぞ!」

バシーン

「ほら!まだまだこれるだろ!」

*「はい!」

浩紀君は投げられた当初は、びっくりしていた感じだが次第に、素直に俺の言うことを聞いてくれる。

息子が、ここまで素直ならな・・・息子、和成もっぱらサッカーに夢中だ、親父の言うことなんて聞きやしない・・・

「ほら!どんどんこい! そんな力に頼っては投げられないぞ!」

バシーン

「はい!はぁはぁ」

いい顔つきだ!こういう顔つきの子は強くなる、たぶん・・・

3分間があっという間に過ぎた、息子と同じくらいの子に柔道を教えるのは、楽しかった。

*「つぎ、お願いします」

さらに次の子が乱取りの申し込みに来る。

みんないい面構えだ!よし相手してやろう!

「じゃあどんどん来なさい!」

良子さんはにこにこしながら、その様子を見ている

良子
「まるで、あの人が戻ってきたみたい、」

北原
「いや、凄いですよ勢能君は、浩紀を子ども扱いできる人なんて、成人部にもそんなにいませんから」

楽しい、楽しい2時間はあっという間に過ぎ去ってしまった。

1時間後に成人部の練習時間になあるらしい、既に数人子供たちの乱取りを見ていた

練習が終わると、中学生たちがこぞって俺の元に来る。技を見てもらいに、みな向上心が高い

なるほど、全中に出場する選手を輩出するだけはある。

俺も今日は時間がある、成人部の練習も参加させてもらおう。

*「どうも神奈川県警の猪口です、凄い実力ですね、是非後程お手合わせ願いたい」

警察か・・町道場に練習に来るのは珍しくないだろうが

運送屋にとって警察は、苦手な存在だ・・・駐禁や過積載、スピード違反も気を付けていても
やはり警察は苦手だよ・・・


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