お隣どうしの桜と海

八月灯香

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誕生日

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夏休みが始まってすぐ、
毎年、俺の誕生日はお隣とウチでアホみたいな事をやって祝ってくれる。

前日から普段は開放されっぱなしのお隣かうちのリビングのドアは硬く閉じられて、俺は侵入禁止にされる。

当日は朝からお隣とみんなで車で出掛けて、海まで行ってワーワー大はしゃぎする。

「海は海にいかないと。」

って毎年言ってる。
雨が降ったとしても海岸ドライブしてる。

浸かるつもりなかったのに膝まで来た波に足を取られて倒れてしまった。
全身ずぶ濡れになった俺は逃げる父さんに抱きついて巻き添えにしたりして走り回った。

桜が俺を横抱きにして海の中に入ってって投げ落としたりグンナーおじさんもテンション上がって飛び込んだりして結局男どもは塩まみれになった。

母さんと菜奈ちゃんは日傘の下で仲良くこっち見て笑ってた。

海岸に海の家があったからシャワー借りれてよかった。

散々遊んで夕方ごろに帰って来て、準備が終わるまで俺は自分の部屋に軟禁状態になる。
毎年の恒例だからこの日は友達と出掛けるのは無しだ。
部屋で適当な映画をかけながら待機している。

なんか、グンナーおじさんが俺グッズをデザイナーの本気出して作ってくるからもう笑うしかない。

菜奈ちゃんも毎年凝ったケーキを作ってくれるし。

母さんの料理も毎年のテーマに合わせて作られる。

「海ー!降りておいで!」

「はーい!」

階段を降りてリビングに入ると、そんなサイズのあるの!?っていう信じられないくらいデカいサイズのクラッカーを発射された。
金色のテープが大量に噴き出てきた。

量、テープの量!この至近距離で2発もくらって前が全く見えない。

でもちゃんと考えられてるもんで、テープの根元が纏まってるから即回収できた。
今年のテーマは架空のハンバーガーショップらしい。
壁にUMIバーガーのポスターまである。
完全にやり過ぎてる。
準備段階から俺の部屋に笑い声が聞こえてたのこれか。

「出たなTシャツ!!」

お隣一家と父さん母さんが俺の0歳から毎年撮った誕生日の俺の写真がレイアウトされた揃いのTシャツ着てる。
店員のユニフォームっぽいやつ。
ちなみに去年は古い映画オマージュだった。

毎年Tシャツは俺の写真とか絵が追加されてっていて、今年はロゴ風にデザインされた俺の似顔絵の周りに0歳から17歳までの俺の写真が円形にレイアウトされてて自分の顔なんだけど変にオシャレになってて笑ってしまう。

ちなみに俺の分もあるんだけど、俺のはメタリックインクで『Today's hiro』ってレタリングアートのプリントが足されて派手になっている。

って言うかグンナーおじさんが桜の誕生日にはやらないのに俺のはやってくるんだよな…
桜の誕生日も盛大なんだけど、俺の誕生日はなんか大人達もベクトルがおかしくなっている。

俺が二十歳になる迄は意地でもやるとか言ってるし。
こんなんだから俺の世に言う反抗期は多分来てない。
周りの同級生は親と仲悪いとか喋らないとか言ってるけど、そんな事言ってる暇ない。

でな。
桜、祝ってくれるのは嬉しいけどお前ハイブランドのモデルとかもやってんのにこんなTシャツ嬉しそうに着てるんじゃねぇよ。
そんなの着てるとこどっかに漏れたら私服センスやばい奴ってなるぞ!

何のデザインですか?
お隣の子です。って意味わかんなすぎるだろ。


しかも今年は俺の似顔絵でラバーキーホルダーまで作ってる。
コースターまである!!!

クオリティが本物だから凄いしグッズとしても最高なんだけど俺が使ったらこれ自己愛爆発してることにならないか?

母さんが全員分のハンバーガープレートを作ってくれてて、バーガーに刺さった串はUMIバーガーフラッグになっていた。
芸が細かい…


「海君お誕生日おめでとう~!」

って菜奈ちゃんが作ってくれたケーキは、8号サイズの凝ったデコレーションしたケーキの上に、大きなクッキーにアイシングで似顔絵が描かれててこれも凄すぎて笑ってしまった。
人数に対してケーキがデカすぎる。
その頃には俺の頭に紙で出来た王冠まで被せられている。

でも明日もこのケーキ食べれるの嬉しい。

来年追加されるであろう写真は俺がそのケーキを前に笑いすぎて泣いてる写真になるなこれ…

才能の無駄遣いが爆発してる。
一日中ずっと声出して笑った。

似顔絵のクッキーも出来が良すぎてしばらくタッパーに入れて冷凍庫に保管してたけど、ダメになる前にオヤツに食べた。

こうして俺は盛大に祝福されて彼女も出来ず、身長も伸びぬまま18歳になった。





「海君さぁ、彼女欲しい欲しい言ってるけど、全部断ってるじゃん。
あれってなんか身長以外にも理由あるんじゃ無いの?」

「理由ぅ~~?」

夏休み平日、矢作と服とか見ようぜって出掛けてるけど、暑いし平日なのにも関わらず人が多過ぎて矢作の心が早々に折れて何とか席のあったエアコンが効いてるカフェのカウンター席で話してる。

矢作は今日は彼女がバイトで居ないから遊んでくれるモードだ。

エアコン効いてる店内でも氷ギッチリ入ったアイスティーがどんどん水っぽくなる。

「だってさぁ、海君高校入って今まで何人に告白されてんの?しかもこないだの背が低めの子も断ったし。お試しもダメ感あってなんかある気がする。」

そんな事言われてもなぁ~。
俺はなんか、付き合うなら俺も好きになりたいなぁって欲求が出て来てしまったんだもん…

「海君初恋ってあった?」

「初恋…」

初恋…初恋!???
無くは無いよ!!!!!!
ただ変に散った初恋だから人に言って無いだけで。
まて、その変な初恋が原因ってこと!?

「あ~~~~~~」

「何どした。」

うぐぐ、関係無い事ないんじゃないかこれ。

俺はすぐさまスマホのアルバムの中にある昔のめちゃくちゃ美少女時代の桜の写真を見せた。
ガンちゃんと秀一は美少女桜を知ってるけど、矢作は中学からの同級だから桜の美少女時代を知らないんだ。

しかも今とは髪の毛の色と目が違う。

「おわ、何この子。CG?じゃないよね?」

「これ、俺の初恋。しかもこの子もめちゃくちゃ俺の事甘やかして来てたの。」

「へぇ~!海君お隣も海外の人だしグローバルだねぇ。」

「….桜なんだよ」

「え?」

「だから桜、これ」

コンコンと指先で画面を叩く。

振り返って考えてみると俺の恋の基準点があのかつての美少女桜なんだと言う事をジワジワ認識してしまう。

「これソールバルグさんなの!?」

「髪の毛と眼の色変わったんだよあいつ。
しかも俺そん時の桜の事ちんこ生えてるけど女の子だと思ってたんだよな…」

「どう言う事!??」

「なんかハーフの子供とかだと成長期にそういう事あるんだって。
この見た目で語尾にハートマークつけて名前呼ばれてみろ、幼児の俺はそれだけでもうメロメロだったんだ、おまけに結婚しよって言ったら“いいよ”って言ってハグだぞ。そんなもんわけわからなくなるわ、っていうかなったわ。全てはそこから狂ってんのかぁあああ!!!」

矢作はゲラゲラ笑ってたけど笑い事じゃない。
由々しき事態だ。

女の子の基準があの頃の桜がベースなんだとしたらもう出会いなんて必死に探しに行かないと可能性がゼロなんじゃないのか!

おい!どうすんだこれ!!!!!!

このまま行くと現実には過去の桜レベルに可愛くて俺を甘やかす女子と出会えない限りは孤独に生きていく羽目になるのか!?

「ああ~~~~」


つい悲惨な声が出てしまって矢作が元気だしなよ、セクシー動画後であげるからとか笑いながら俺の背中をバシバシ叩いた。
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