お隣どうしの桜と海

八月灯香

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海と桜ファンタジー設定番外編

おなかがすいたら3

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「海、朝だよ。」

「ン………」

眠い。
起きたくない。

起こそうとしてくる桜の身体にしがみついてほとんど寝ぼけて起床拒否の意思表示をする。
桜が俺の身体を自分の上に引き上げて背中をさすってくる。

「海。おきて。」

桜の上で寝息を再び立て始めてしまったので、桜が身体を起こして俺を膝の上に抱いてキスをしてくる。

甘い….美味しい…

離れようとする唇をもっと、と追いかけて不意に意識が急浮上した。

ばっと目があく。

眼前に綺麗な桜の顔がある。

「あ…わ!!わ!!!」

びっくりして逃げようと試みるが桜の方が素早くてギュッと抱き込んできた。

「海逃げないで。」

昨日の事がつぶさに思い出される。
全部夢か?とも思うけど、夢にしておくには生々しすぎる。
桜の俺を見る目がいつもの桜じゃなかった。

「どこにも行かないで海。」

苦しそうに願い乞うような声が耳に届く。 

「昨日は怖い事してごめんね…」

ギュッと胸に顔を埋めてきた。

枕元の棚の上に桜が首から下げてた魔除けが置いてある。
薄く窓が開けられてて、昨日の自由を奪われるにおいも無くなってた。

明るい日差しにスズメの鳴き声が聞こえてくる。

怖かったけど、俺は何年もずっと桜を勝手に搾取してきた。

謝るのは俺の方だ…

「…桜は勝手な事してた俺の事怒ってないの?」

と聞くと桜は、全然って言った。

「海が生きる為だったら仕方ない事だし、全然怒ってない。海が俺を置いてどっか消えようとした事はちょっと怒ってた。」

本当に、そう思ってくれてるっていうのが伝わってくる。


「…本当に俺のご飯なってくれるの?」


桜の頭を抱きしめるみたいにして聞いた、そしたら桜が顔を上げて、優しい目で勿論だよって答えた。




海が隣に引っ越してきたとき、俺を見上げる瞳が綺麗で強烈に引き込まれたのを今でも鮮明に覚えている。
成熟した大人のような空気を纏っているのに幼い顔で9歳、と言った。

つまらない世界が彩られていくようだった。

親同士がとても仲良くなったおかげで、しょっちゅう夕食を共にするようになった。
海に美味しいかと聞くと「いろんな味がして面白い」と答えた。
色んなものを与えて見たくなって色々食べさせる度に面白い、と言っていた。


桃やみかんなど果実を好んで食べているのも印象的だった。


桜、と海が呼んでくると心がざわめき立つ。


年を追う毎に、これは完全に海への恋心なのだと自覚した。



『ちょっとそこの、背の高いアンタだよ。ごく近くに悪魔が居るね…そんなに強くないが、アンタ、力を掠め取られてるよ………この魔除け持っておきな』

水泳の海外遠征で来たバンクーバーの街中で、顔まで独特な刺青の入った老婆に突然話しかけられ、これを首にでも下げておけと言われた。
タカリかと思ったが、見返りは何もいらないと言われた。


帰国してその日すぐに海が「今日一緒に寝ていい?」と言ってきた。
断る理由もなく快諾した。


ベッドに一緒に潜って、バンクーバーの様子や、海が学校であった事を話した。
その日は何と無く、あの老婆から渡された魔除けを首にかけていた。

海がウトウトと目を閉じた。

しばらくじっとしていると、海が身じろいでから起き上がる。
俺の目の前に手を翳しているのか、目元に熱を感じた。

布団をはぎ、俺の足元へと移動していく。

ウエストのゴムに手がかけられて、下着ごとずらされた。

まさか、と薄目を開けると海は躊躇う事なく俺のペニスを口に含んだ。

“アンタ、近くに悪魔がいるね”

海の口の中は熱くうねっていた。
戯れにセックスをした女達とは口の中の構造が違うんじゃないかと思った。

あっという間に吐精させられ、海が顔を上げると、暗闇でもわかるほどに光る赤い瞳をしていた。

日中の海の瞳は鳶色をしている。

「…も一回だけ…ごめんな桜…」

と愛らしい声で謝って再び頭を下ろした。

それは海が「そっち行っていい?」と言ってくる時にだけ起きた。

日本国内で、大学のツテで悪魔研究をしてる人に紹介してもらい、運よく会う事が出来た。

身近にいる悪魔を逃したくないと相談すると

「出来んことは無いけど…なんか、おたくエグいこと考えてる?」

と聞き返された。

「聞くところ誰かに悪い事するわけやなさそうやし、面白そ、協力したろ。
この魔封じの香焚いて魂結びつける契約結んだら嫌でも離れられんく出来る。
多分話聞く限りではソイツは夢魔か、淫魔か…どっちにしてもザコや。
この婆さんから貰ったって魔除けも本物やな。つけといたらソイツがお前に暗示やらなんやら仕掛け出来た細かいのは無効に出来たやろ?

…因みに、魂結びつける契約はしくじるとソイツ死ぬから、まぁ上手くやる事やな。」

と嗤った。
報酬は自分が祓うわけじゃないし、素人のお前がやって成功したら俺のおかげっちゅうことで珍しい酒でも送ってくれ、と言われた。

『おたく、ええ目もっとるやん。
気が向いたら俺の助手になってよ。』


暫くは様子を見た。
海が妖艶な雰囲気になるのは俺の部屋で寝る夜だけだった。
それ以外は人間と変わらず、よく笑うしよく喋った。

海がもし、魔物だとしても死なせたく無いしこのままでもいいか、とも思ったが…もし、海が外にもこういう事をする相手を求めていたら?と思うとたまらなくなって海の部屋で夜を過ごした。

海は夜中に抜け出すことも無く、普通に眠りに着いて朝目を覚ましている様だった。


大きな本屋のある駅前で、たまたま学校帰りの海にでくわした。
同級生っぽいのと会話をしていたが、胸がざわついた。

勘が、海と話してる奴も魔の物だと言っている気がした。
研究者の男も『おたくの目で見てなんか変やと思った奴は大概アタリやと思ってええ』と言っていた。

それが海の腕に触れた瞬間、猛烈な殺意が湧いた。

俺の海に触るな。

「海、一緒に帰ろう。」

海を連れてその場を後にした。

「今日そっちいっていい?」

帰宅したあと窓越しに海が聞いてきたので俺は快諾して海を迎える。

夕方の海が話してた奴を思い出して少し気が立っていた。
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