お隣どうしの桜と海

八月灯香

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心地のいい関係 

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人間の順応力は案外すごい。
気持ち的に窮地に立たされても開き直って持ち直したりする。

先月、俺は一本の映画でベコベコに凹み散らかしてしまった。

でも改めて1人になってから観ると、なんか納得できる部分もいっぱいあった。

恋って急激にのぼせ上がるんだなって、俺も実感してるし。

もし、自分が外からやってくる男の立場だったとしたら同じ様な事する気がした。
手の中に閉じ込めて社会を見させずに自分だけを見てくれるのは甘美な事だ。

だけど社会的地位や仕事、将来の子供の事やなんかを考えなければいけなくなったら、一時の情熱は捨てれるんじゃないかって。

それに桜は映画の中に出てくる男じゃない。
もし、体の関係が無くなったとしても、幼馴染のお隣のお兄さんなのは変わらないんだよな。
物理的な距離もずっと近い。
窓開けたらすぐ会える。

…桜が家を出たらそれはなくなるけど。

俺は一喜一憂を勝手に繰り返してる。
そうしながら自分の中で折り合いをつけていくしかない。
最初はあまりにショック過ぎたけど、来てもない未来に落ち込んでても仕方ない。
矢作には映画の見過ぎだって言われた。

「映画はあくまで娯楽なんだから引きずられるのは良くないよ。」
と心配してくれた。
それもそうだな、とは思ってる。
わかってはいるんだけど、感情移入が強過ぎた。

ふとした桜の仕草が好きだし。

桜が海って呼んでくると鼓膜がくすぐったい。


大きな手が俺を撫でてくるとホッとする。

桜とのセックスも相性がいいからなのか知らんけどこれが気持ち良すぎてやめられない…

遂にはドライイキとかいうのまでできる様になってしまった。

その状態だと、射精しないでイくもんだから、桜が何回もそれで俺をイかせてくる。

腹の中がゾワゾワして、射精だとスッと落ち着いてくのがいつまでも熱が収まりにくい。

自分で尻をいじってもそうはならない。

…ただなんか…それ連続でやられてこないだ頭おかしくなるくらいに気持ち良くなってしっこが噴き出たことあって…

事後にびしゃびしゃになったシーツ替えられてるときの居た堪れ無さったらない。

「防水シート敷いてるから大丈夫」

って言われて俺は漏らした事よりもその台詞に恥ずかしさで何一つ大丈夫じゃなかった。

いつの間にか俺のベッドにも防水シート仕込まれてたしな!


桜は今泳ぎの調子がいいって言ってた。
自己ベスト大きく更新しそうで泳ぐの楽しいって。
笑顔も多いし、良い事だ。

桜は凄いから、望んだ高みに行けると思う。


もしかしたら桜も性欲を俺にぶつける事で泳ぐ事に集中できてたりすんのかな?

俺は俺で好きな相手と性欲発散できてるし、


…なんか、今のところ心地のいい関係なのかもしれない。


まぁ、そんな感じ。




「は~~~~~~なんじゃかんじゃで来年卒業か~~~~~~~!
3年なんて本当にあっという間だな。」

昼休みにパンを齧りながらしみじみと言う。
入学式をしたのが遠い日のようだ。

「海君、卒業迄に彼女つくれるかな!?」

「おいおい舐めんなよ矢作ィ…卒業の時には彼女お姫様抱っこして校門出てやるわ」

「海君がお姫様抱っこ出来るのって幼女くらいじゃ無いのいって!ごめん。」

思わず矢作の腕を叩いた。
このやりとりだって卒業したら出来なくなる。



ほぼ夏のような10月の頭、

あっという間に冬になって、年を越して。

こうやって馬鹿な話をしてられる時間もあっという間に終わる。

俺らは心の準備ができなくても、大人になれと時間に急かされる。

大学に行く人たちはまだ学生で居られるけど、就職して社会に出ないといけない俺たちはすぐに大人認定される。

桜は高校生の頃から大人達と仕事してた。
今の俺よりずっと精神年齢も、何もかもが大人に近かったと思う。

俺はただ、なるように流されているだけだ。
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