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少し薄暗い室内は、何処か籠もった匂いが鼻につく。周囲にあるのは高く積まれた布団と桐の衣装ケース。あとは何が入っているのかわからない木製の古い箱の山。
それらを軽く蹴ってみたが、崩れるどころか自分の足が痛くなってしゃがみ込む。
「い、痛い! 何が入っているのよ……」
頭上にある格子の僅かな隙間から、多くの光が内部に届かなということは天気が悪い証拠。いや、この「世界」は常にどんよりとした雲に覆われている気がする。理由は外にいる「者」たちのせい。
珠音(たまね)は項垂れるように下を向いて目を閉じた。すると顔を隠すように長い茶髪がサラサラと頬に触れる。モテを意識したふわゆるな髪型を、勤務中はクリップで留めてアップにしていた。できる女を装っていたが、仕事上でのポカは減らない。上司には「ケアレスミスが多い」と注意を受ける日々。
モテを意識した髪型だったが、モテたことなど人生で一度もない。自分で鏡を確認しても、そこまで酷い顔だとは思わないが、何故か男性が近寄ってこない。いや、ナンパされたことはあったが、急に顔面蒼白で逃げられることが多々。
付けていたキラキラが付いた可愛いヘアクリップは、一番のお気に入りだったが、ここに逃げる前に暴れた所為で何処かで落としたようだ。
「ジルスチュアートの限定品だったのに。本当に最悪だわ……」
目を閉じて視界を遮断すれば、更に深い闇が襲ってくる。まるでこの混乱が、永遠に続くようで恐ろしくなり、瞬時に目を開けた。
「もう、どうしてよ……。なんでこうなったの? 京都に出張で来ただけじゃない! しかも初めての出張――」
京都は幼いときに住んでいた土地。しかし、引越してからは一度も訪れてはいない。いや、亡くなった両親から「行くな」といわれていた場所だ。
「行くなといわれてた所に来たからなの……?」
震える指を口元に持っていき、爪を噛む。この癖は両親から止めるように何度も注意されたが、不安を感じたら発作的に出てくる。だからネールアートとは無縁だった。
「おい! ええ加減にしろ! もう半日は蔵の中に閉じこもっとるんやぞ! そのうち干からびるわ!」
頑丈な鉄製のドアの外側から大きな声が聞こえてくる。力強い波動を感じる声。この声を耳に入れると、下半身がズンッと重く熱くなる。何かが反応している気がするが、今は考えたくない。何故なら彼の標準語ではない言葉は、珠音の感情を更に苛立たせるからだ。
それらを軽く蹴ってみたが、崩れるどころか自分の足が痛くなってしゃがみ込む。
「い、痛い! 何が入っているのよ……」
頭上にある格子の僅かな隙間から、多くの光が内部に届かなということは天気が悪い証拠。いや、この「世界」は常にどんよりとした雲に覆われている気がする。理由は外にいる「者」たちのせい。
珠音(たまね)は項垂れるように下を向いて目を閉じた。すると顔を隠すように長い茶髪がサラサラと頬に触れる。モテを意識したふわゆるな髪型を、勤務中はクリップで留めてアップにしていた。できる女を装っていたが、仕事上でのポカは減らない。上司には「ケアレスミスが多い」と注意を受ける日々。
モテを意識した髪型だったが、モテたことなど人生で一度もない。自分で鏡を確認しても、そこまで酷い顔だとは思わないが、何故か男性が近寄ってこない。いや、ナンパされたことはあったが、急に顔面蒼白で逃げられることが多々。
付けていたキラキラが付いた可愛いヘアクリップは、一番のお気に入りだったが、ここに逃げる前に暴れた所為で何処かで落としたようだ。
「ジルスチュアートの限定品だったのに。本当に最悪だわ……」
目を閉じて視界を遮断すれば、更に深い闇が襲ってくる。まるでこの混乱が、永遠に続くようで恐ろしくなり、瞬時に目を開けた。
「もう、どうしてよ……。なんでこうなったの? 京都に出張で来ただけじゃない! しかも初めての出張――」
京都は幼いときに住んでいた土地。しかし、引越してからは一度も訪れてはいない。いや、亡くなった両親から「行くな」といわれていた場所だ。
「行くなといわれてた所に来たからなの……?」
震える指を口元に持っていき、爪を噛む。この癖は両親から止めるように何度も注意されたが、不安を感じたら発作的に出てくる。だからネールアートとは無縁だった。
「おい! ええ加減にしろ! もう半日は蔵の中に閉じこもっとるんやぞ! そのうち干からびるわ!」
頑丈な鉄製のドアの外側から大きな声が聞こえてくる。力強い波動を感じる声。この声を耳に入れると、下半身がズンッと重く熱くなる。何かが反応している気がするが、今は考えたくない。何故なら彼の標準語ではない言葉は、珠音の感情を更に苛立たせるからだ。
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