蛇と刺青 〜対価の交わりに堕ちていく〜

寺原しんまる

文字の大きさ
52 / 62

思いは一生続くとは限らない

しおりを挟む
 季節は冬になり、神戸の街はクリスマス用の飾りで賑やかになっていた。クリスマスには神戸の街に観光に訪れるカップルが多く、街としてはその商機逃がすわけにはいかないので、神戸中でクリスマスを盛り上げる。


 ジェイのタトゥーショップや環のアパレルショップには、クリスマス行事は特に関係も無いのだが、人々の気持ちが浮かれているので、財布の紐を緩めて散財する者達の恩恵にはあずかっていた。


「クリスマスに互いの名前のタトゥーを入れに来るカップルおるやん? あれって、マジで別れたらどうするんやろうな?」


 順平が真顔でジェイに訪ねる。ジェイは「ハアー」とため息を吐き、順平を哀れんだ目で見つめるのだ。


「お前と一緒で、別れた彼女の名前のタトゥー上に、別の柄を彫るんじゃないか?」


 最近順平は愛しの彼女と別れた。順平は「ある日、目が覚めて気がついた。横で寝ている彼女の寝顔がオッサンに見えてん。全てが崩れ落ちたわ」とジェイに熱弁したのだ。順平との関係に馴れてきた彼女が素顔で過ごす時間が増えていき、順平の好きだった顔は「化粧をしているこの子」だったと気がついたという。


 ジェイにしてみれば「理解できない」事であり、鈴子が涎を垂らして寝ていようが、ジェイにとっては全てを可愛いと思えるのにと。


 順平は腕に彫っていた彼女の名前の上に髑髏を彫り、「あんだけ好きやったんがホンマ謎や……」と呟いていた。


「なあ、ジェイは鈴子ちゃんの名前は彫らへんの? 自分は鈴子ちゃんにガッツリ彫り込んでるのに。もし、鈴子ちゃんがジェイを嫌になったら、背中一面のお前の作品をどうするんやろな」


 黙り込むジェイは少しムッとしていたが、ふとした疑問が頭を誤る。人を「好き」だとか「愛する」という事をいまいち分からないジェイは順平に尋ねる。


「なあ、相手を愛してると思ったら刺青を彫るのか?」


 いきなりの質問に驚いた順平は目を見開いてジェイを見る。


「まあ、そうやなあ……。それだけ思いは深いんちゃうか? だって一生残るもんやし。でも、だからってその思いは一生続くとは限らんけどな……」


 少し考え込むジェイは「うーん、分からん」とブツブツ呟く。ジェイは客から依頼だからと、何も考えずに恋人の名前とやらを彫っていたのだ。しかしそれが「愛の形」だというならば、自分はどうなのだろうと考える。


「俺は鈴子の名前を入れることに抵抗はない。鈴子の事は一生嫌になる事はない。それは確実だな。わざわざ俺の身体に名前を彫ってまで宣言しなくても良いんだ」


 一呼吸置いたジェイはゆっくりと口を開く。


「それにアイツの身体に彫っている蛇は俺のと……」


 ドアが音を立てて開き、奈菜と外に出ていた鈴子が戻ってきた。寒い気温から身体を守るためにと、モコモコのコートを着た鈴子はぬいぐるみのような可愛さで、少し赤い鼻と頬でジェイを見つめていた。


「ただいまジェイ」

「ああ、おかえり」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「鈴子、明後日の日曜日なんだがなあ。紹介で手彫りの仕事が入ったんだ。どうしてもその日しか駄目らしくて。お前の手彫りの日だったが、良いか?」


 鈴子の背中の刺青にクリームを塗りながらジェイは鈴子に尋ねた。


 鈴子の手彫りの日は毎週日曜日の夜になり、翌日の定休日に合わせていたのだ。ジェイと鈴子は刺青の施行と共に身体を交わらせる事を常としており、思う存分に楽しむために、定休日の前日にしたいとジェイが希望したのだった。


 手彫りを施行するのは精神的にも肉体的にも疲れるために、ジェイは数日に一回を限度としていたのだ。その客に施行するということは、その前後数日は誰の手彫りもしないことになる。


 鈴子はジェイにもう毎日のように抱かれているが、刺青を彫りながら抱かれるのは別格で、日曜日の朝から夜の施行を期待して下腹部を濡らす程だった。それがたった一回だとしても無くなるのは辛かったが、勿論素直に言えるような鈴子ではない。


「別に構わない……。わざわざ私に断らなくてもいいのに……」


 声から鈴子の不機嫌さに気がつくジェイは、鈴子を抱き上げて自分の太ももの上に対面に座らせた。


「怒るなよ……。悪かったって。断れない相手なんだよ……。覚えてるか? 尾乃田さんの紹介なんだ」

「……ヤクザの?」

「そう。尾乃田さんには世話になってるしな。その代わりに、今日は存分に可愛がってやるから安心しろよ!」

「結構です!」


 鈴子はジェイを押しのけるようにして逃げようとするが、ジェイにがっちりと腰をホールドされてそれは叶わなかった。イヤだイヤだと子供のように暴れる鈴子の、モコモコしたルームウェアーのパンツを引き下ろしたジェイは、ニヤッと笑い鈴子を見る。


「何だよ、これは……。俺にクリームを塗って貰いながら濡らしてたのか? 早く言えよなあ……」

「やぁ……違うの! 見ないで……ひぃ!」


 鈴子の白いショーツの上からクラッチ部分を舐め出したジェイは、ソコが肌色が透けるほどに舌で濡らしていく。そして鼻を擦れるほど押しつけて「雌の匂いが籠もってるぞ」と鈴子に告げた。


「ひぅ! そ、そんなこと言わないでよ……。ジェイの馬鹿……」


 鈴子は決してセクシーな下着等穿かない。いつもシンプルな飾り気の無い単色のビキニタイプかボーイッシュなヒップハングを好む。ジェイは下着にこだわりは無く、むしろ裸族で良い派なので、「どうせ直ぐに裸になるんだから穿くな」と言うほどだった。


「言われるのが嫌なら下着は着けるなよ。穿かなくていいじゃないか……。俺も本当は家では裸族でずっと居たいんだぞ」


 ボクサーパンツから既にはみ出したジェイの男根が、ガッチリと鈴子の視界に写る。ジェイにしてみたら、どうせ常に戦闘態勢で、窮屈な下着からはみ出るなら、着ていることに煩わしさを覚えるだろう。隠せていない下着に意味はあるのかと。


 きっとここで「裸族OK」をしてしまうと、いつでもどこでも常にジェイに挿入される事態になりそうなので、何とか阻止したいと鈴子は思っているのだが……。


「私は下着は着ける……。ジェイは……お風呂の後なら……好きにすれば……?」


 永久凍土だと思われた鈴子のモラルは、ジェイによって徐々に溶かされているようで、ジェイはクククとほくそ笑む。


「助かるよ、鈴子」


 ジェイは一気に鈴子のショーツを剥ぎ取り、鈴子の両足をグイっと左右に大きく開きながら間に押し入った。大きく反り立つ男根を掴んで鈴子の蜜壺に宛がう。


「すっかりと受け入れる準備は出来ているみたいだなあ。一気に突き刺すぞ!」


 最後まで言い終わる前に、ジェイの強大な男根は、鈴子の膣肉を押しのけながらズブズブと最奥まで突き進む。


「あひぃーーーー! まって……! 無理ぃ……」

「無理? ハハハ、そんな事ないだろ。鈴子のココは問題なく飲み込んでるぞ」


 ニヤリと笑うジェイは腰をグラインドしながら、大きな男根を出し入れし出す。最奥で中にタッチしたかと思うと、グイッとギリギリまで引き抜き、同じ事を繰り返す。その度に体内がジェイの強大な肉棒に引きずり出される感覚を味わう鈴子。脳が痺れたようにビリビリとし、口からツーッと涎を垂らす鈴子は、最早快楽を貪る穴人形になったようだった。


 肩に脚を乗せた体位で何度か蜜壺を突いたあと、繋がったまま鈴子の脚を胸に押し付けて深く突いていくジェイ。


「ふ、深い……」

「ああ、最奥の更に奥まで届くかもな……」


  先端が鈴子の子宮口に達すると、ジェイはその入り口を開くようにして、子宮をグイグイと押し上げていく。


「あふぅ……! ひぃ!」


 鈴子は声にならない嬌声を上げて白目をむく。あまりの刺激で気を失った鈴子だが、激しく突き上げるジェイによって、直ぐに現実に引き戻されたのだった。


「気を失っても何度でも引き戻してやる。何度も絶頂を味あわせるからな」


 ジェイはベロリと鈴子の首筋を舐め、薄く歯形が付く位に鈴子の首を噛んだのだった。

しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...