私がガチなのは内緒である

ありきた

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1章 私がガチなのは内緒である

5話 シャワーの件について

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 同居生活を始めて数日が経つ。
 萌恵ちゃんとは寝食を共にして、四六時中一緒だ。
 私だけが舞い上がっているなんてことはなく、萌恵ちゃんも同様にいまの生活を楽しんでくれている。
 幸せすぎて怖いぐらいに、なにもかもが順風満帆な日々。
 そんな中、問題が一つ。
 率直に言うなら、お風呂だ。
 私たちは節約のため、入浴も一緒にしている。湯船に浸かる日はもちろん、シャワーだけで済ませる日も同じように。
 ルームシェアすることで家賃は一人分になっているとはいえ、節約して困ることはない。
 やや手狭になるけど二人の方が楽しいし、萌恵ちゃんの素肌を間近でじっくりと――コホン。
 そう、問題というのはこれだ。

「真菜、どうかした? さっきからボーっとしてるけど」

 頬を紅潮させた全裸の萌恵ちゃんが、心配そうに小首を傾げる。
 タオルで髪をまとめたことにより露わになったうなじが色っぽく、鎖骨を伝う汗の筋やしっとりと濡れそぼった肢体が実に扇情的だ。
 私たちはいま、体育座りで向かい合って湯船に浸かっている。
 二人分の体積で水面が上がっているものの、少なめに給湯しているのでほとんど半身浴に近い。

「だ、大丈夫。ごめんね、なんともないよ。萌恵ちゃん、また胸おっきくなった?」

「ん~、ちょっとね。太ったかなぁ?」

「太ってないよ。大きいのは胸とお尻だけだもん」

 腰のくびれなんて最高級の陶芸品みたいに見事な曲線を描いていて、古い言い回しになるけど、ボンキュッボンってこういう体のことを指しているんだと感心させられる。

「真菜はスレンダーだからいいよね。キュッと引き締まってて、なんか抱きしめたくなる感じ」

「あはは、私も萌恵ちゃんの胸が羨ましいよ。一割でいいから分けてほしい……」

 自分の胸を見下ろし、軽く絶望してしまう。
 私だって、平らというわけではない。少しはある。まぁ深くは気にしてないけど。本当に。
 だけどやっぱり、同い年でこうも違うものかと、決定的な胸囲の格差社会に敗北感を覚えずにはいられない。
 萌恵ちゃんの胸は大玉スイカのようなサイズでありながら、垂れるという概念が無縁であるかのように美しい形を保っている。重力が仕事していない。

「好きなだけ持って行っていいよ~」

「ぐぬぬ」

 萌恵ちゃんは頭の後ろで腕を組み、見せ付けるように胸を張った。
 衣服という枷から解き放たれている二つの球体は、ぷるんっという擬音が聞こえそうなほど派手に弾む。
 偉大な先人たちには無礼を承知で断言させてほしい。
 どんな素晴らしい絵画よりも、いま私が目にしている光景の方が遥かに美しい。
 神聖とすら感じさせる、極上の美。

「えいっ」

 せっかく差し出されているので、遠慮なく触らせてもらうことにした。
 萌恵ちゃん、触れた拍子に「あんっ」とか艶めかしい吐息を漏らさないで。私が正気じゃいられなくなる。
 しっとり、すべすべ、もっちり。
 あぁ、もう死んでもいい。
 ただでさえ乏しい語彙が、あまりの快楽にますます減っていく。
 指を包む抜群の柔らかさを備えながら、力を込めると確かに押し返す絶妙な弾力も秘めている。
 ダメだ、これ以上続けたら我慢できない。
 萌恵ちゃんの貞操を守るため、私は後ろ髪を引かれる思いで手を離した。

「あ、ありがとうございました」

「んふふっ、次はあたしの番だね」

「え?」

 え?
 動揺のあまり、心の声がそのまま口から出た。
 次は萌恵ちゃんの番って、もしかして、私の胸を……?

「なんちゃって。話してたら長湯しちゃった。お湯もぬるくなってきたし、そろそろ出ようよ」

「そ、そうだね、そうしよう」

 しっかり温まったし、これ以上は逆に体を冷やしかねない。
 ホッとしたような、少し残念なような。
 改めて、これは由々しき問題だ。
 一緒にお風呂というのは非常に魅力的なんだけど、私の自制心がいつまで働いてくれるか分からない。
 だからと言って、この至福のひとときを失いたくもない。
 悶々としながら出した結論――
 この件は、ひとまず保留!
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