私がガチなのは内緒である

ありきた

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2章 私と萌恵ちゃんは恋仲である

20話 直接は無理でも服越しなら……?

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 ある日の夜。
 夕飯を食べ終え、シンクで食器を洗う萌恵ちゃんの背中を眺めていた。
 炊事と洗濯の分担を決めた日に食器洗いは二人でやると決めたはずなんだけど、流される形で炊事の一環という扱いになっている。
 二人並んで作業するにはやや手狭だから、仕方ないと言えば仕方ない。
 とはいえただ萌恵ちゃんに甘えているだけでは申し訳ないので、私は自分の担当である洗濯を一層頑張ることにした。
 密かなこだわりとして、下着は丁寧に手洗いしている。決して、邪な気持ちだけが理由ではない。
 ……まぁ、下心がないと言えば、嘘になるけど……だって、萌恵ちゃんが脱いだ下着に直接触れる機会だし……。
 それはそれとして。
 テーブルを拭きつつ萌恵ちゃんを眺めていると、例のごとくムラムラしてしまう。
 身に着けているのは、少し大きめのオフショルダーニット。部屋着として買った服であり、いまは洗い物の最中だから袖をまくっているけど、伸ばすと指の半ばぐらいまで丈がある。
 スラッとした体に対して圧倒的ボリュームを誇る爆乳は、服を選ぶ際に悩みの種となる。必然的に身長や腰回りから考えれば二回りほど大きなサイズになり、それでもなお胸が窮屈そうに生地を押し上げてしまう。
 萌恵ちゃんは持ち前のファッションセンスでどんな服でも着こなしているけど、胸のせいで好きな服が着れないと嘆いていた。
 最愛の人が悲しむ姿なんて見たくないし、貧乳の私には共感できないものの、気持ちはよく分かる。
 ただ、本当に申し訳ないんだけど……長袖ならなにを着ても丈が余るわけだから、萌え袖好きの私にとっては願ってもないご褒美だ。まさに眼福!
 あとは家の中だからこその油断というか、ブラ紐が丸見え。着替えのときに見慣れているし、なんなら二人で一緒に買いに行ったけど、こうして日常生活の中で本人の意図しない場面で眺めると、特別な高揚感を覚える。
 洗い物を終えて台所から戻ってきた萌恵ちゃんは、私の対面ではなく隣に腰を下ろした。

「んふふっ、やっぱり真菜の隣は落ち着くな~」

「私も、萌恵ちゃんが隣にいてくれると落ち着くよ」

 萌恵ちゃんが体を少し斜めに倒し、私にもたれかかる。
 座った状態でも身長差はあるけど、当然ながら立っているときよりはお互いの目線が近い。
 左を向けば、文字通り目と鼻の先に萌恵ちゃんの顔がある。
 そこから視線を下げると、胸の谷間が視界に飛び込んだ。
 私は条件反射のように、ゴクリと生唾を飲む。
 おそるおそる右手を動かし、萌恵ちゃんの胸元に近付ける。

「萌恵ちゃん……いい?」

「うん、いいよ」

 みなまで言わなくても、意思は伝わっていた。
 服の上から右の乳房に手を添え、指に力を込め、不規則に動かす。
 すでに何度も実感しているように、衣類越しでもその柔らかさが如実に伝わってくる。
 昂ぶる気持ちをなんとか抑え、乱暴にならないよう気を付けつつ揉む。
 あまりに素敵な感触に、止め時が分からず延々と続けてしまう。
 萌恵ちゃんは熱っぽい吐息を何度も漏らし、甘えるように私の名前を呼ぶ。
 無意識のうちに、空いていた私の左手は萌恵ちゃんの右手に添えられていた。
 有り得ないぐらいに興奮しているのに、思考はとても落ち着いている。
 示し合わせたように萌恵ちゃんと目を合わせ、瞳を閉じて唇を――

 ピン、ポーン。ピンポーン。ピンポーン。

 家の中に軽い音が鳴り響く。
 瞬間的に浮かんだのは、『お約束』という言葉だった。

「はーい! いま行きます!」

 私は半ばキレ気味に声を張り上げつつ、玄関へ向かう。
 インターホンを押した人に悪意がなく、なんの罪もないってことは重々承知している。
 分かってるけど、だけど……せっかくいいところだったのにっ!

***

 来訪者の正体は宅配のお姉さんで、届けられたのは最近お母さんに頼んでおいたブルーレイディスクだった。
 いくら付き合いが長く、えっちなことに興味があるとはいえ、私たちは所詮経験のない高校一年生。
 一度中断されて、何事もなかったように再開できるはずもない。

「せっかくだから見る?」

「うんっ、見よう! あたし飲み物取ってくる~」

 というわけで、服越しに胸を触ってキスからあわよくば本番へ……という流れは、予期せぬハプニングによって二人で映画鑑賞する結果となった。
 萌恵ちゃんが淹れてくれたレモンティーを飲みながら、肩を並べて仲よくテレビの画面を眺める。
 さっきのことを思い出すと、顔が燃えるように熱い。
 萌恵ちゃんはどうだろうと横を一瞥してみたら、驚くことに同じタイミングでこちらを向いて、惹かれるように目が合った。
 その顔は明らかに紅潮していて、きっと同じことを考えていたのだと容易に推測できる。
 せっかくのチャンスは潰れてしまったけど、不思議と嫌な気分は残らなかった。
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