私がガチなのは内緒である

ありきた

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3章 一線を越えても止まらない

1話 萌恵ちゃんの変化

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 常々自覚していることだけど、私は根っからのド変態だ。
 それに比べ、萌恵ちゃんは純真無垢を具現化したかのような存在である。
 と思っていたんだけど、先日の一件――初めてのえっち以降、なにやら様子が違う。
 たとえば、いまこの瞬間。
 登校中に腕を組むこと自体は、私たちにとって珍しいことではない。

「真菜~、大好き! あたしの胸、どうかな? 気持ちいい? 嫌じゃない?」

 今日はいつもと比べ、私に胸を押し付けるように腕を組んできた。
 しかも胸の感触を訊ねられるなんて、以前ならとても考えられないようなことだ。

「私も大好きだよ。胸はその、大声では言いづらいけど、すごく気持ちいい」

 もちろん嫌だなんて思うはずもなく、少しでも鮮明に感じるためにほとんどの神経を腕に集中させている。

「やった~! んふふっ、もっと押し付けちゃお~っと!」

 私の返答に満足して声を弾ませ、さらにむぎゅっと胸を押し当ててきた。
 最近、こういうやり取りが少なくない。
 天真爛漫で無邪気なのは変わらないんだけど、ときどきえっちな意味で大胆になる。
 今朝だって、おはようのキスをするときに私の胸を揉んできた。
 学校にいる間は周りの目もあるし、授業中はスキンシップするチャンスもないから、特に変化は見られない。
 強いて挙げるとすれば、体育でペアになって準備運動するとき、ふとした拍子に艶っぽい吐息を漏らすぐらいだ。
 二日ほど様子を見た結果、限りなく確信に近付いたと言える。
 無事に学校から帰宅して、リビングで一息ついたタイミングで担当直入に問う。

「萌恵ちゃん、もしかして発情期?」

 あまり人間に対して使われる言葉じゃないけど、年中発情期の私には馴染み深い。

「は、発じょ……そ、そんなことないよ! 真菜を見てると胸が熱くなったり、真菜に触られるとお股の辺りがキュンってなったりするけど、えっちなことばかり考えてるわけじゃない、と思う。多分」

 発情期というワードに恥じらいを感じるらしく、一瞬で顔が真っ赤になってしまった。
 早口でまくし立てられたかと思えば、締めくくりはどうにも自信なさげ。
 だけど、まぁ、ほとんど白状しているのと変わらない。

「疑う余地はないね。萌恵ちゃんも私と同じで、えっちなことばかり考えるえっちな女の子になっちゃったわけだ」

「え、えっちな女の子……でも、真菜と同じって考えると嬉しくなってきた!」

 つい最近までえっちなこととは無縁だったことを思えば、萌恵ちゃんは大人の階段をものすごい勢いで駆け上っている。
 かくいう私も積み重ねてきたのは妄想と情欲ばかりで、経験したことは萌恵ちゃんとまったく同じだけど。
 萌恵ちゃんがえっちなことへの興味を強く持ってくれるのは、嬉しい誤算だ。
 せっかく同棲しているんだし、近所迷惑にならない範疇で淫らに乱れた生活を送っていきたい。
 たとえば、あんなこととか、こんなこととか……じゅるり。

「また新しく真菜と共通の好きなことが増えて、ほんとに嬉しい! これからはもっともっと、毎日が楽しくなりそう! 恥ずかしい気持ちもあるけど、いっぱいえっちしようね!」

 なにこの天使。
 笑顔が眩しい。私と同じように卑猥なことを望んでいるはずなのに、正反対の爽やかさを感じる。

「うん、もちろん。萌恵ちゃんがいいなら、今夜にでも」

「絶対する! んふふっ、いまから楽しみ~!」

 やった!
 さりげなく誘ってみたら快諾してもらえた!
 明日も学校だから、徹夜しないように気を付けよう。

***

 その夜。
 約束通り、私たちは愛の営みに励んだ。
 夕方に話していたときは終始明るかった萌恵ちゃんだけど、いざ布団の中で性的なことを意識すると普段通りのテンションを維持するのは無理というもの。
 弱々しさと言えば語弊があるものの、守ってあげたくなるような雰囲気を身にまとっている。
 そのギャップがたまらなく愛おしく、私をこの上ない興奮に誘う。
 時間が経つのも忘れ、いつの間にか気を失い、気付けば昼前。
 盛大に遅刻してしまった私たちは、さすがに節度はわきまえないとダメだと反省するのだった。
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