私がガチなのは内緒である

ありきた

文字の大きさ
61 / 121
3章 一線を越えても止まらない

8話 ピロートーク

しおりを挟む
 日付が変わってから約三時間。この近隣は交通量が少なく、夜中に騒ぐような人もいない。
 外は真っ暗なのに、家の中は最近買い換えたばかりの蛍光灯が、LEDに負けないという意地でもあるかのように明るく照らしている。
布団の周りに散乱しているのは、私と萌恵ちゃんが脱ぎ捨てたパジャマや下着。行為が盛り上がるにつれて、丁寧に畳む時間すら惜しくなって適当に放り投げ、気付けば身に着けていた衣類はすべて床の上だ。
こんな真夜中まで服を脱いでなにをしていたのかと言えば、答えは一つしかない。

「……暖房つけてないのに、寒くないね」

 布団の中で萌恵ちゃんに密着しつつ、ポツリと漏らす。
 調子に乗って激しく動きすぎたせいか、私の息はまだ少し荒い。
 決して暖かくはない気候でありながら、布団の内側は蒸し暑いぐらいだ。
 汗でわずかに湿った肌が重なり合っていても、不快感は皆無。むしろ、心地よい以外の感想が浮かんでこない。

「やっぱり、ピッタリくっついてるおかげかな~。服を着る前に、もうちょっと温め合わない?」

「うん、もちろんいいよ」

 顔だけじゃなく体も相手の方に向けて、やや疲労の残る腕で優しく抱きしめる。
 キスを何度も繰り返し、短い間隔でチュッという音が響く。
 頭の中はいつになく澄み渡り、一切の濁りなく萌恵ちゃんを感じる。
 単に密着しているからという理由だけでなく、触れ合っている部分が熱い。
 この温もりと安らぎは、お風呂に浸かっているときと似ている。
 加えて、あらゆる負の感情を消し飛ばすような幸福感。まるで全身を使ってキスをしているような気分だ。

「真菜の髪、ひんやりして気持ちいい」

「そう? 好きなだけ触ってね」

 背中に回された腕がもぞもぞと動き、髪を優しく撫でてくれる。
 私も同じように、萌恵ちゃんの錦糸のようなプラチナブロンドに指を這わせた。
 軽く波打つ長髪は、オシャレではなく生来の物。普段はハーフアップに結われているけど、ポニーテールやサイドテール、三つ編みもよく似合う。
 目の前では萌恵ちゃんが柔らかく微笑んでいて、私も思わず口角が緩む。
 カーテン越しの月明かりがあるとはいえ、それだけでは視界が不明瞭だ。電気を消さなくてよかったと、自分たちの判断を称賛せずにはいられない。

「――ひぁんっ。ご、ごめん。いい加減に寝ないと起きれなくなるし、そろそろ服着よっか」

 萌恵ちゃんの胸に覆い被される形で隠れているから視界には映らないけど、身じろぎしたことでお互いの先端部分が不意に擦れてしまった。
 痺れるような刺激が走るも、私はかろうじて嬌声を堪える。
声を抑えられなかった萌恵ちゃんは、照れ隠しのためか少し早口だ。
 休みとはいえ、惰眠を貪るのはもったいない。萌恵ちゃんの意見に賛同してうなずく。

「そう、だね……」

 存分に愛し合ったはずなのに、どうしても名残惜しさは拭えない。
 後ろ髪を引かれる思いで体を離し、最後に軽くキスをしてお互いに着衣を始める。
 下着は手に取った時点で冷たくなっているのが分かり、身に着ける前にちょっとした覚悟を要した。
 パジャマはもこもこ素材のおかげで、下着ほどの冷たさは感じない。
 電気を消して布団に潜る。
 いざ就寝する直前になっても、当然のように体を寄せる。これは初めてを捧げ合うよりも前、一緒に住み始めてからずっと変わらない。
 叶うのなら、どれだけの年月を重ねてもこのままでありたい。

「夏になっても、こうして寄り添いながら寝たいな~」

「さすが萌恵ちゃん。私もまったく同じこと思ってた」

「んふふっ、やっぱり一心同体だ」

 萌恵ちゃんの声が明るく弾む。
 惹かれ合ったように二人の手が重なり、指を絡める。

「萌恵ちゃん、大好き」

 わざわざ声に出さなくても、私の想いは萌恵ちゃんに伝わっているだろう。だけど、口にせずにはいられない。

「あたしだって、大好きだよ~」

 何度言っても、何度聞いても、決して褪せることのない幸せを感じられる。
 それからしばらくの間、私たちは羊を数えるみたいに愛を囁き合った。
 耳を通るたびに嬉しくて気分が高揚し、それでいて心からの安堵を得る。

***

 目を覚ますと朝日が昇っていて、いつの間にか寝ていたんだと気付く。
 同時に起きた萌恵ちゃんに話を聞くと、彼女もまた、いつの間にか眠りに落ちていたらしい。
 根拠なんてないけど、私は寝るタイミングも同じだったに違いないと確信していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?

宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。 栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。 その彼女に脅された。 「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」 今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。 でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる! しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ?? 訳が分からない……。それ、俺困るの?

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

処理中です...