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3章 一線を越えても止まらない
11話 休日の朝から
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二人で暮らし始めたときは、高校生活への期待や不安も相俟って、浮足立っていた。
いまとなっては懐かしいとさえ思えるのは、新しい環境に慣れたからという理由だけではない。
一番はやっぱり、萌恵ちゃんとの関係が一変したことだ。
キスを日常的に行い、えっちも何度か経験している。
とはいえ、本質的な面では二人とも変わっていないので、どれほど急激に進展しようともギクシャクしたり変な空気になるなんてことにはならない。
今日は土曜日。朝の散歩を終えて帰宅すると、まるで私たちに遠慮してくれていたかのように雨が降り出す。
「真菜~、パンツ脱いでくれない?」
「うん、いいよ。パン――んっ!?」
あまりに自然な流れで要求するから、なにも考えずパンツに手をかけてしまった。
慌てて手を離し、警戒するようにスカートを押さえる。
「な、なんで? 急にどうしたの? そういう発言は私の専売特許だよ?」
清楚の権化である萌恵ちゃんの口からパンツを脱げと言われるなんて完全に想定外であり、さすがの私も動揺を禁じ得ない。
「真菜があたしの下着とか靴下を嗅いでるって言ってたから、あたしも同じことをしてみたいな~って」
「やっ、やめといた方がいいよ。私のパンツなんて、臭くて汚いから嗅ぐだけ無駄というか、害しかないよっ」
「いやいや、臭くもないし汚くもないよ~。だから、ね? お願い!」
萌恵ちゃんは両手を合わせ、甘えるように懇願する。
これだから天然は怖い。簡単な仕草なのに、私の心は万力のような強さで鷲掴みにされた。
「うっ……で、でも、ダメだよ。ほんのちょっとだけど、おしっこ漏らしちゃったし」
「そんなの気にしないから!」
いつになく強情だ。
萌恵ちゃんが望むなら命でもなんでも喜んで差し出せる。でも、パンツは例外。
自分の行動を棚に上げるけど、下着を嗅がれるなんて恥ずかしくて耐えられない!
「ま、またの機会ってことにしない?」
「そう言って、次も同じ理由で逃げようとしてるでしょ?」
うぐっ、鋭い。
思わぬ展開で窮地に陥り、私は冷や汗を流しながら最善策を考える。
素直にパンツを脱いで差し出せば、楽になれるだろう。
だけど、最悪の場合はどうなる?
私が穿いていた下着を嗅いだ萌恵ちゃんが、もしも「うわ、臭っ! あ~、うん。ごめんね、もういいよ。二度と嗅がない」なんて言ったら……ショック死は免れない。
いくら萌恵ちゃんの性的好奇心が以前より強まっているとはいえ、一般的な性欲と私のそれは大きく異なる。
確かに私は、萌恵ちゃんが放つのならどんな臭いでも嬉々として受け入れる自信がある。当然ながら、これは極めて特殊にして異常な一例に過ぎない。
まともな感性を持つ萌恵ちゃんにとって、嫌な臭いは単純に嫌な臭いでしかないはず。
「真菜、そろそろ覚悟は決まった?」
「絶対にやだ!」
「う~ん、そんなに嫌がることかな? もっとすごいこと、たくさんしてるのに……」
と言われ、頭の中で様々な出来事が再生される。
至極鮮明に思い出せるえっちな行為の数々。萌恵ちゃんが言うように、下着を嗅ぐことがかわいく思えてしまう。
「わ、分かった……脱ぐよ」
羞恥心は拭えず、申し訳ない気持ちも否めないけど、納得してしまったのも事実。
潔く覚悟を決める。
下着に手をかけ、ためらいを振り払うように勢いよく脱いで萌恵ちゃんに手渡す。
「お~っ、ありがと! それじゃあさっそく――」
萌恵ちゃんは宝物でも扱うように両手で大事そうに持ち、待ちきれないといった様子で下着に顔を埋めた。
驚異の身体能力を有する萌恵ちゃんは、肺活量も人並み外れている。
息を吸う音が、いつになっても止まらない。
「うぅ」
目の前で自分の下着を嗅がれるというのは想像以上に恥ずかしく、いたたまれなくなって視線を逸らす。
ほどなくして萌恵ちゃんの吐息が聞こえ、一抹の不安を抱きながら向き直った。
「んふふっ。真菜の気持ち、ちょっと分かったかも!」
私のパンツから顔を離した萌恵ちゃんは、頬をほんのり赤く染めて晴れやかな笑顔で告げた。
用が済んだことで下着が返却され、すぐさま身に着ける。
「く、臭くなかった? 苦しくない? 気分は平気? 吐きそうだったら我慢しないでね?」
「真菜が思ってるような臭いはしなかったよ~。それに、パンツを嗅いだぐらいで吐いちゃうなら、あたしはとっくに体の中が空っぽになってるよ」
ぐうの音も出ない。まったくもってその通りだ。
結局のところ、今回の件は私が変に意識しすぎていただけなのかも。
いやいや、やっぱり簡単には割り切れない。
下着越しとか直接舐めてもらえるのは嬉しいのに、体から離れてパンツだけとなったら急激に抵抗が強くなる。
考えてみれば不思議な話だ。
「ただ……幸せな気持ちは味わえるけど、同じぐらい寂しさも感じちゃった」
「寂しい?」
「真菜が身に着けてた物ももちろん魅力的だけど、やっぱり真菜と直接触れ合いたいもん。真菜の声や匂い、温もりとか柔らかさとか、真菜のすべてを感じたい」
最愛の人に面と向かってこんなことを言われ、理性を維持できる人間がいるだろうか?
答えは断じて否。
この後、熱く激しく盛り上がったことは言うまでもない。
いまとなっては懐かしいとさえ思えるのは、新しい環境に慣れたからという理由だけではない。
一番はやっぱり、萌恵ちゃんとの関係が一変したことだ。
キスを日常的に行い、えっちも何度か経験している。
とはいえ、本質的な面では二人とも変わっていないので、どれほど急激に進展しようともギクシャクしたり変な空気になるなんてことにはならない。
今日は土曜日。朝の散歩を終えて帰宅すると、まるで私たちに遠慮してくれていたかのように雨が降り出す。
「真菜~、パンツ脱いでくれない?」
「うん、いいよ。パン――んっ!?」
あまりに自然な流れで要求するから、なにも考えずパンツに手をかけてしまった。
慌てて手を離し、警戒するようにスカートを押さえる。
「な、なんで? 急にどうしたの? そういう発言は私の専売特許だよ?」
清楚の権化である萌恵ちゃんの口からパンツを脱げと言われるなんて完全に想定外であり、さすがの私も動揺を禁じ得ない。
「真菜があたしの下着とか靴下を嗅いでるって言ってたから、あたしも同じことをしてみたいな~って」
「やっ、やめといた方がいいよ。私のパンツなんて、臭くて汚いから嗅ぐだけ無駄というか、害しかないよっ」
「いやいや、臭くもないし汚くもないよ~。だから、ね? お願い!」
萌恵ちゃんは両手を合わせ、甘えるように懇願する。
これだから天然は怖い。簡単な仕草なのに、私の心は万力のような強さで鷲掴みにされた。
「うっ……で、でも、ダメだよ。ほんのちょっとだけど、おしっこ漏らしちゃったし」
「そんなの気にしないから!」
いつになく強情だ。
萌恵ちゃんが望むなら命でもなんでも喜んで差し出せる。でも、パンツは例外。
自分の行動を棚に上げるけど、下着を嗅がれるなんて恥ずかしくて耐えられない!
「ま、またの機会ってことにしない?」
「そう言って、次も同じ理由で逃げようとしてるでしょ?」
うぐっ、鋭い。
思わぬ展開で窮地に陥り、私は冷や汗を流しながら最善策を考える。
素直にパンツを脱いで差し出せば、楽になれるだろう。
だけど、最悪の場合はどうなる?
私が穿いていた下着を嗅いだ萌恵ちゃんが、もしも「うわ、臭っ! あ~、うん。ごめんね、もういいよ。二度と嗅がない」なんて言ったら……ショック死は免れない。
いくら萌恵ちゃんの性的好奇心が以前より強まっているとはいえ、一般的な性欲と私のそれは大きく異なる。
確かに私は、萌恵ちゃんが放つのならどんな臭いでも嬉々として受け入れる自信がある。当然ながら、これは極めて特殊にして異常な一例に過ぎない。
まともな感性を持つ萌恵ちゃんにとって、嫌な臭いは単純に嫌な臭いでしかないはず。
「真菜、そろそろ覚悟は決まった?」
「絶対にやだ!」
「う~ん、そんなに嫌がることかな? もっとすごいこと、たくさんしてるのに……」
と言われ、頭の中で様々な出来事が再生される。
至極鮮明に思い出せるえっちな行為の数々。萌恵ちゃんが言うように、下着を嗅ぐことがかわいく思えてしまう。
「わ、分かった……脱ぐよ」
羞恥心は拭えず、申し訳ない気持ちも否めないけど、納得してしまったのも事実。
潔く覚悟を決める。
下着に手をかけ、ためらいを振り払うように勢いよく脱いで萌恵ちゃんに手渡す。
「お~っ、ありがと! それじゃあさっそく――」
萌恵ちゃんは宝物でも扱うように両手で大事そうに持ち、待ちきれないといった様子で下着に顔を埋めた。
驚異の身体能力を有する萌恵ちゃんは、肺活量も人並み外れている。
息を吸う音が、いつになっても止まらない。
「うぅ」
目の前で自分の下着を嗅がれるというのは想像以上に恥ずかしく、いたたまれなくなって視線を逸らす。
ほどなくして萌恵ちゃんの吐息が聞こえ、一抹の不安を抱きながら向き直った。
「んふふっ。真菜の気持ち、ちょっと分かったかも!」
私のパンツから顔を離した萌恵ちゃんは、頬をほんのり赤く染めて晴れやかな笑顔で告げた。
用が済んだことで下着が返却され、すぐさま身に着ける。
「く、臭くなかった? 苦しくない? 気分は平気? 吐きそうだったら我慢しないでね?」
「真菜が思ってるような臭いはしなかったよ~。それに、パンツを嗅いだぐらいで吐いちゃうなら、あたしはとっくに体の中が空っぽになってるよ」
ぐうの音も出ない。まったくもってその通りだ。
結局のところ、今回の件は私が変に意識しすぎていただけなのかも。
いやいや、やっぱり簡単には割り切れない。
下着越しとか直接舐めてもらえるのは嬉しいのに、体から離れてパンツだけとなったら急激に抵抗が強くなる。
考えてみれば不思議な話だ。
「ただ……幸せな気持ちは味わえるけど、同じぐらい寂しさも感じちゃった」
「寂しい?」
「真菜が身に着けてた物ももちろん魅力的だけど、やっぱり真菜と直接触れ合いたいもん。真菜の声や匂い、温もりとか柔らかさとか、真菜のすべてを感じたい」
最愛の人に面と向かってこんなことを言われ、理性を維持できる人間がいるだろうか?
答えは断じて否。
この後、熱く激しく盛り上がったことは言うまでもない。
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