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3章 一線を越えても止まらない
15話 この上ない痴態
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まだ陽が昇り切る前に、ふと目が覚めた。
起きるにはさすがに早い。おはようのキスは、もう少し後まで我慢しよう。
そっとまぶたを閉じると、いろんな思いが頭に浮かぶ。すべてにおいて萌恵ちゃんが関係しているのは、我ながらいかにも自分らしいと納得する。
自己嫌悪に陥るような変態的願望が雨後の筍よろしく続々と生まれ、思考の全体からすれば一割程度とはいえ、朝も早くから気が滅入ってしまう。
吐き気を催す倒錯した妄想をかき消すように、萌恵ちゃんの笑顔を思い出す。
屈託のない笑顔、ちょっと困った笑顔、はにかんだ笑顔、照れ隠しの笑顔などなど、ひとくくりに笑顔と言っても数え切れないほど多種多様だ。
それだけ萌恵ちゃんのことを見続け、同じ時間を過ごしてきたんだと実感する。
本来あまり笑顔が得意じゃない私が自然に笑えているのも、萌恵ちゃんのおかげ。
この先にどんな困難が待ち受けていたとしても、萌恵ちゃんと一緒なら絶対に乗り越えられる。
……。
…………。
………………ふぅ。
さて、そろそろ目先の問題に向き合うとしよう。
いったいなぜ、こんなことが起きたのか。
昨日のお風呂上りに、いつもよりたくさん牛乳を飲んだから?
それとも、極めて軽い尿意だと侮っていたから?
はたまた、完全に克服したと油断していた?
原因を探っても、考えの甘さを反省しても、時間は戻らない。
いくら後悔したところで、結果は変わらないのだ。
悲しいかな、大量に漏れ出たおしっこは、私の力ではどうにもできない。
はぁ……やっちゃったよ。
高校生にもなって、おねしょしちゃった。
いやいや、洒落にならない。
感覚で分かる。イタズラでペットボトルの水をぶちまけたと言っても通用するぐらい、派手に漏れている。
真隣で寝ている萌恵ちゃんにまで被害が及んでいるのは、火を見るよりも明らか。
誠心誠意謝るのは当然だけど、絶交を告げられても不思議ではない。
不安に悶々としているうちにも、時間は容赦なく流れる。
目覚めのキスをするため、もぞもぞと体を動かす。
濡れたパジャマと肌が擦れ、不快感に襲われた。
「ちゅっ。萌恵ちゃん、朝だよ。んっ、ぁむっ」
いまだけは他のことを忘れ、キスに没頭する。
意識のない相手との口付けは若干の虚しさを伴うものの、ほんの数秒で萌恵ちゃんは目を覚ます。
言葉でのあいさつを挟んでから、キスを再開。
濃厚極まりないキスは、何度体験しても飽きが来ない。
眠気が吹き飛び、活力がみなぎるのを感じる。
「ん? なんか冷たいような……」
萌恵ちゃんの言葉で、私は現実に引き戻された。
――呑気に隣で寝転んでいる場合じゃない!
自分の限界を超えた速度で布団を飛び出し、流れるような動きで土下座する。
「萌恵ちゃん、本当にごめん。高校生にもなって、おねしょしちゃった。なんでもするから絶交だけは勘弁してください。許してください。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
額を床に擦り付け、心の底から謝罪。
己の失態があまりに情けなくて、萌恵ちゃんに呆れられるのが怖くて、涙が滲む。
「ちょ、ちょっと真菜! 土下座なんてやめてよ! 全然気にしてないし、絶交なんて死んでも嫌だから!」
「え……じゃあ、これからも一緒に暮らしてくれる? 恋人として、愛してくれる?」
萌恵ちゃんの言葉に甘え、恐る恐る頭を上げる。
「当たり前じゃん! あたしが真菜を好きな気持ちは、おねしょぐらいで揺らぐほど脆くないよ!」
「萌恵ちゃん……うぅっ、ありがとうっ」
身に余る優しさに触れ、自然と涙が溢れた。
萌恵ちゃんは四つん這いでこちらに近寄り、ギュッと抱きしめてくれる。
「心配しないで。あたしはなにがあっても、真菜のそばにいるからね」
「あぅっ、ぐすっ。萌恵ちゃん、大好き」
「あたしも大好き! ほら、濡れたままと風邪引いちゃうよ~。シャワー浴びに行こう」
私はコクリとうなずき、萌恵ちゃんと共にゆっくりと立ち上がる。
何年も前から、言葉にできないぐらい大好きなのに。
自分の命なんて二の次に考えてしまうほど愛しているのに。
萌恵ちゃんへの好意は、留まることなく強まっていく。
いまは声を出すと泣き出してしまいそうだから、代わりにそっと手を握る。
体温と一緒に、気持ちも伝わるよう祈りながら。
起きるにはさすがに早い。おはようのキスは、もう少し後まで我慢しよう。
そっとまぶたを閉じると、いろんな思いが頭に浮かぶ。すべてにおいて萌恵ちゃんが関係しているのは、我ながらいかにも自分らしいと納得する。
自己嫌悪に陥るような変態的願望が雨後の筍よろしく続々と生まれ、思考の全体からすれば一割程度とはいえ、朝も早くから気が滅入ってしまう。
吐き気を催す倒錯した妄想をかき消すように、萌恵ちゃんの笑顔を思い出す。
屈託のない笑顔、ちょっと困った笑顔、はにかんだ笑顔、照れ隠しの笑顔などなど、ひとくくりに笑顔と言っても数え切れないほど多種多様だ。
それだけ萌恵ちゃんのことを見続け、同じ時間を過ごしてきたんだと実感する。
本来あまり笑顔が得意じゃない私が自然に笑えているのも、萌恵ちゃんのおかげ。
この先にどんな困難が待ち受けていたとしても、萌恵ちゃんと一緒なら絶対に乗り越えられる。
……。
…………。
………………ふぅ。
さて、そろそろ目先の問題に向き合うとしよう。
いったいなぜ、こんなことが起きたのか。
昨日のお風呂上りに、いつもよりたくさん牛乳を飲んだから?
それとも、極めて軽い尿意だと侮っていたから?
はたまた、完全に克服したと油断していた?
原因を探っても、考えの甘さを反省しても、時間は戻らない。
いくら後悔したところで、結果は変わらないのだ。
悲しいかな、大量に漏れ出たおしっこは、私の力ではどうにもできない。
はぁ……やっちゃったよ。
高校生にもなって、おねしょしちゃった。
いやいや、洒落にならない。
感覚で分かる。イタズラでペットボトルの水をぶちまけたと言っても通用するぐらい、派手に漏れている。
真隣で寝ている萌恵ちゃんにまで被害が及んでいるのは、火を見るよりも明らか。
誠心誠意謝るのは当然だけど、絶交を告げられても不思議ではない。
不安に悶々としているうちにも、時間は容赦なく流れる。
目覚めのキスをするため、もぞもぞと体を動かす。
濡れたパジャマと肌が擦れ、不快感に襲われた。
「ちゅっ。萌恵ちゃん、朝だよ。んっ、ぁむっ」
いまだけは他のことを忘れ、キスに没頭する。
意識のない相手との口付けは若干の虚しさを伴うものの、ほんの数秒で萌恵ちゃんは目を覚ます。
言葉でのあいさつを挟んでから、キスを再開。
濃厚極まりないキスは、何度体験しても飽きが来ない。
眠気が吹き飛び、活力がみなぎるのを感じる。
「ん? なんか冷たいような……」
萌恵ちゃんの言葉で、私は現実に引き戻された。
――呑気に隣で寝転んでいる場合じゃない!
自分の限界を超えた速度で布団を飛び出し、流れるような動きで土下座する。
「萌恵ちゃん、本当にごめん。高校生にもなって、おねしょしちゃった。なんでもするから絶交だけは勘弁してください。許してください。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
額を床に擦り付け、心の底から謝罪。
己の失態があまりに情けなくて、萌恵ちゃんに呆れられるのが怖くて、涙が滲む。
「ちょ、ちょっと真菜! 土下座なんてやめてよ! 全然気にしてないし、絶交なんて死んでも嫌だから!」
「え……じゃあ、これからも一緒に暮らしてくれる? 恋人として、愛してくれる?」
萌恵ちゃんの言葉に甘え、恐る恐る頭を上げる。
「当たり前じゃん! あたしが真菜を好きな気持ちは、おねしょぐらいで揺らぐほど脆くないよ!」
「萌恵ちゃん……うぅっ、ありがとうっ」
身に余る優しさに触れ、自然と涙が溢れた。
萌恵ちゃんは四つん這いでこちらに近寄り、ギュッと抱きしめてくれる。
「心配しないで。あたしはなにがあっても、真菜のそばにいるからね」
「あぅっ、ぐすっ。萌恵ちゃん、大好き」
「あたしも大好き! ほら、濡れたままと風邪引いちゃうよ~。シャワー浴びに行こう」
私はコクリとうなずき、萌恵ちゃんと共にゆっくりと立ち上がる。
何年も前から、言葉にできないぐらい大好きなのに。
自分の命なんて二の次に考えてしまうほど愛しているのに。
萌恵ちゃんへの好意は、留まることなく強まっていく。
いまは声を出すと泣き出してしまいそうだから、代わりにそっと手を握る。
体温と一緒に、気持ちも伝わるよう祈りながら。
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