私がガチなのは内緒である

ありきた

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3章 一線を越えても止まらない

22話 えっちな妄想

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 かつて絵空事のように思い浮かべていた萌恵ちゃんとの甘々な生活は、いまこうして現実となり、最高の暮らしを満喫している。
 毎日たくさんキスをして、ときには肌を重ねて。
のろけ話を始めたら、自分では止められない。
 とはいえ、モラルやルールによって実現不可能な行為というのも存在する。
 授業中に愛の営みなんて言語道断だし、飲食店でのキスは決して周りに好印象を与えない。
 やってはいけないと分かっていても、一度頭に浮かんだ願望は易々と消せないもの。
 だから私は、無理やり忘れようとはせず、逆に気が済むまで徹底的に妄想を繰り広げることにしている。
 夕飯の後、食器を洗ってくれている萌恵ちゃんの後姿を眺めながら、いやらしい想像を脳内に描き出す。

***

 調理実習でケーキを作る最中、私はテーブルの陰に隠れて萌恵ちゃんを押し倒している。という設定だ。
 妄想だから誰かに見付かっても問題ないんだけど、『バレたらどうしよう』なんて緊張感を抱いたりもして。
 エプロンの紐を緩めて、制服のボタンをゆっくりと外していく。焦らすように、一つずつ丁寧に。

「ま、真菜……こんなこと、恥ずかしいよぅ」

「ふふっ、萌恵ちゃんかわいい。耳まで真っ赤になってる」

 純真無垢な天使を汚してしまう背徳感に、ゾクゾクとした快感が走る。
 一転して勢い任せに制服を脱がせ、ブラのホックも外してしまう。
 ぶるんっと揺れる豊満な双丘の先端は、緊張のせいか、はたまたこの状況に興奮してしまったのか、目に見えてぷっくりと膨らんでいた。

「萌恵ちゃんのさくらんぼ、すっごくおいしそう」

「うぅっ、真菜のえっち」

「えっちな私にしてほしいこと、あるよね?」

「う、うん……あ、あたしのこと、隅々までたくさん味わってほしいっ」

 …………あぁ、私、なに考えてるんだろう。
 いやいや、妄想の中で冷静になっちゃダメだよ! 脳内でしかできないことを、最大限に楽しまないと!
 というわけで、平常心という名の雑念を振り払い、急かされるように次の行動へ移る。
 スポンジよりもふわふわで触り心地のいい胸にクリームを塗りたくり、キュッと引き締まったお腹を撫でながら、おへその窪みにいちごを乗せる。
 体の前面を味わい尽くした後は、四つん這いになってもらってスカートとパンツを下ろす。
 お尻はたびたび桃に例えられる部位なので、カットした桃を挟んでもらう。
 そして爪先にシロップを垂らし、高飛車な女王様っぽく「足を舐めなさい」と命令してもらったり……。
 一通り堪能したら、今度は私が萌恵ちゃんに食べてもらう番だ。
 あ、でも、攻守交代する前にもう一回、クリームまみれのおっぱいを――

***

「――な、真菜。お~い、真菜~」

「ほぇ?」

 萌恵ちゃんに呼びかけられ、現実に帰還する。
 妄想の名残で気の抜けた声を漏らしてしまった。

「本当はずっと聞いていたかったんだけど、後で真菜が恥ずかしいかと思って起こしちゃった」

「えっ、も、もも、もしかして、こっ、声に出てたの?」

「それはもう、ハッキリとね。調理実習はちゃんとやらなきゃダメだよ~?」

 聞かれてたぁぁあああぁああぁあああっっ!

「ご、ごめんなさい」

 妄想だから大丈夫とか、言い訳はしない。
 本人の与り知らぬところで不埒な妄想に登場させてしまったことも含め、きちんと謝罪しておく。

「ところで、実は冷蔵庫にホイップクリームが残ってるんだけど……」

 萌恵ちゃんはテーブルを挟んで私の正面に歩み寄り、困ったような、照れたような表情で告げた。
 ここは紛れもない現実だ。家で二人きりとはいえ、まさかそんなこと、起きるわけがない。
 有り得ないと思いつつも、頭の中には妄想ではなく予想として、えっちな考えが浮かんでしまう。
 答え合せかのように、萌恵ちゃんが胸元をグッと引っ張って谷間をさらけ出す。

「ま、真菜がしたいなら……さっき言ってたこと、試してみる?」

 紛れもなく私を誘惑する仕草だけど、羞恥や照れが感情の大部分を占めているのは明白だ。
 判断を長引かせても萌恵ちゃんを辱めてしまうだけだし、そもそも最初から答えは決まっている。

「ぜひ!」

 実現不可能な行為というのは、確かに存在する。
 だけど今日、この瞬間。
 場合によっては実現することもあるのだと、私は身をもって知った。
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