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86話 刺激的な朝
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「――――っ!?」
目を覚ましたら、視界を四分割するように先輩たちの顔が迫っていた。
素晴らしい光景ではあるものの、予想外すぎて驚愕を禁じ得ない。
危うく近所迷惑レベルの悲鳴を発しそうになる私の口を、姫歌先輩の手が塞ぐ。
手のひらの温もりとほのかに香る甘い匂いに、思わずうっとりしてしまう。
「おはよう❤ 驚かせちゃったかしらぁ❤」
「おはよ~っ! ぐっすり寝てたね!」
「お、おはよう。寝顔、か、かわいかった」
「おはよう。寝ぼけて殴ってくれてもいいのよ?」
「お、おはようございます。先輩たち、早起きなんですね」
同じ部屋の中で目覚め、朝のあいさつを交わす。これから当たり前となることを体験して、同棲しているのだと改めて実感する。
「うふふ❤ そうでもないわよ❤」
ふと、壁掛け時計に目をやる。平日だったらすでに授業が始まっている時間だった。
なるほど、単に私が遅かっただけらしい。とは言っても、日曜の朝と考えれば充分に早起きだけど。
「こんなにかわいい恋人たちに囲まれて朝を迎えられるなんて、贅沢にもほどがありますよね」
率直な感想を漏らしつつ上体を起こし、あくびをしながら体を軽く伸ばす。
深呼吸をすれば畳の爽やかな香りに混じって先輩たちの甘美な芳香が鼻孔をくすぐり、朝から全身に活力をみなぎらせてくれる。
「かわいいだなんて……❤」
「悠理ってサラッと恥ずかしいこと言うよね~」
「だ、大好きな人に言われると、て、照れる」
「不意打ちだから、かなり効くわね」
先輩たちが顔を真っ赤にして照れている。めちゃくちゃかわいい。
「本当にかわいいです。それに、間近で嗅ぎたいぐらいいい匂いですし、パジャマ姿も魅力的すぎてドキドキします」
続け様に褒めると、先輩たちの顔は耳まで真っ赤になった。
ああもう、この人たち、かわいさの権化だなぁ。
そんな反応されちゃったら、止まるに止まれない。
私は畳みかけるように、『褒められて照れる様子もかわいい』とか『寝起きで声がふにゃってしてるのもかわいい』などなど、頭に浮かんだことをそのまま述べ立てた。
過去に同じようなことをした結果、自分がどんな目に遭ったのかも忘れて――
「うふふ❤ 荷解きは昼過ぎからになりそうねぇ❤」
「あははっ、下手すれば夕方になっちゃうかもよ?」
「い、家の中だから、え、遠慮しなくて、いいよね」
「仕返しを期待して、徹底的にやらせてもらうわよ」
涙目になるほど照れた先輩たちが、吹っ切れたような口調で不穏なことを口走る。
そして、私は優しく布団に押し倒された。
***
数時間後。
天にも昇るような気持ちを何度も何度も味わい、純潔だけは奪われずに済んだ私は、調子に乗るのも大概にしようと心に誓った。
でも、これはこれで癖になりそう……。
目を覚ましたら、視界を四分割するように先輩たちの顔が迫っていた。
素晴らしい光景ではあるものの、予想外すぎて驚愕を禁じ得ない。
危うく近所迷惑レベルの悲鳴を発しそうになる私の口を、姫歌先輩の手が塞ぐ。
手のひらの温もりとほのかに香る甘い匂いに、思わずうっとりしてしまう。
「おはよう❤ 驚かせちゃったかしらぁ❤」
「おはよ~っ! ぐっすり寝てたね!」
「お、おはよう。寝顔、か、かわいかった」
「おはよう。寝ぼけて殴ってくれてもいいのよ?」
「お、おはようございます。先輩たち、早起きなんですね」
同じ部屋の中で目覚め、朝のあいさつを交わす。これから当たり前となることを体験して、同棲しているのだと改めて実感する。
「うふふ❤ そうでもないわよ❤」
ふと、壁掛け時計に目をやる。平日だったらすでに授業が始まっている時間だった。
なるほど、単に私が遅かっただけらしい。とは言っても、日曜の朝と考えれば充分に早起きだけど。
「こんなにかわいい恋人たちに囲まれて朝を迎えられるなんて、贅沢にもほどがありますよね」
率直な感想を漏らしつつ上体を起こし、あくびをしながら体を軽く伸ばす。
深呼吸をすれば畳の爽やかな香りに混じって先輩たちの甘美な芳香が鼻孔をくすぐり、朝から全身に活力をみなぎらせてくれる。
「かわいいだなんて……❤」
「悠理ってサラッと恥ずかしいこと言うよね~」
「だ、大好きな人に言われると、て、照れる」
「不意打ちだから、かなり効くわね」
先輩たちが顔を真っ赤にして照れている。めちゃくちゃかわいい。
「本当にかわいいです。それに、間近で嗅ぎたいぐらいいい匂いですし、パジャマ姿も魅力的すぎてドキドキします」
続け様に褒めると、先輩たちの顔は耳まで真っ赤になった。
ああもう、この人たち、かわいさの権化だなぁ。
そんな反応されちゃったら、止まるに止まれない。
私は畳みかけるように、『褒められて照れる様子もかわいい』とか『寝起きで声がふにゃってしてるのもかわいい』などなど、頭に浮かんだことをそのまま述べ立てた。
過去に同じようなことをした結果、自分がどんな目に遭ったのかも忘れて――
「うふふ❤ 荷解きは昼過ぎからになりそうねぇ❤」
「あははっ、下手すれば夕方になっちゃうかもよ?」
「い、家の中だから、え、遠慮しなくて、いいよね」
「仕返しを期待して、徹底的にやらせてもらうわよ」
涙目になるほど照れた先輩たちが、吹っ切れたような口調で不穏なことを口走る。
そして、私は優しく布団に押し倒された。
***
数時間後。
天にも昇るような気持ちを何度も何度も味わい、純潔だけは奪われずに済んだ私は、調子に乗るのも大概にしようと心に誓った。
でも、これはこれで癖になりそう……。
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