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第1章

第4話《浮気後のぎこちない会話》

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総一郎が風呂から上がった後、俺はしんどさを押し隠していつもどおりを装い彼に日課のただいまのキスをした。
 
「総一郎君ただいま!今帰ったよっ」ちゅっ
「ん、おかえりすずめ。帰ってくるの早かったね。」
 
(帰りが早いって…いつもはそんなこと言わないくせに。)
そういえば今何時だ?と思い時計を確認すると20時手前だった。
(ああ、21時過ぎに帰るって言ってたからか…)

いつもだったらお帰りのキスの時には必ず深めのディープキスになるのに今日に限って軽めのバードキスで済ませたところも様子がおかしいし、総一郎も少しは動揺しているのだろう。あとほんの少し俺の帰りが早ければ即浮気がバレるところだったもんな。
 
「ところでお兄さんの車どうだったんだ?カッコよかったか?」
 
考え事をしていたせいで訪れた沈黙を払しょくするように会話を広げる総一郎に俺は一瞬なんのことかと困惑した。
(ん?車?…ああ、そういやそんな話してたっけ。)
 
あまりに衝撃的な出来事に夕方についたばかりの嘘がすっかり頭から抜け落ちていた。
危ない危ない。
 
「あーうん、まぁね。でも俺は総一郎君の車の方がかっこいいと思うよ。(お兄ちゃんの車見たことないけど)」
「あはは、ありがとう。僕の車は元々すずめがテレビのCMを見てカッコいいって褒めちぎっていたものだからね。あの時は少しでも君の目を引きたくて奮発したんだよ。」
 
照れくさそうに笑いながらゆるやかに俺の腰を抱く総一郎に俺は少し目を瞠った。それは初耳だ。
 
正直俺は車に微塵も興味がないからそんな記憶は無いのだが、よくよく思い出してみれば車のCMに出演していたイケメンアイドルを褒めたような覚えがある。ちなみにこれは総一郎と付き合う前の話なので断じて浮気ではない。
 
(総一郎の車、強烈な蛍光ピンクのスポーツカーで、シックなデザインが好みの彼らしくないとは思っていたけどまさか俺がきっかけで購入していたなんてな。まぁ今となってはもうどうでもいいけど。)
 
あの明らかに趣味じゃない高級車を購入したきっかけが俺が他の男を褒めた事だという事実はいささか気の毒なような気もするが、こいつはずっと前からひなとグルで俺を裏切り続けていたクズ男だ。

むしろいい気味じゃないか。絶対お前サークル仲間での裏のあだ名蛍光ピンクだろ。ざまあみろ。
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