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ブレナンの場合。【2】
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アナが結婚してから約半年。それなりに認めて貰えるようになったためなのか、僕の仕事は今まで以上に忙しくなったが充実感はあった。
僕は一週間ぶりに、いつものごとく母の美味しい夕食を食べに屋敷に戻って来た。
職場の近くで一人暮らしするようになって、必要性から自炊もそれなりに出来るようにはなったのだが、得意とは言い難い。子供の頃から母の料理を当たり前のように食べていた自分からすると、舌が肥えてしまったのかどうしても満足のいくものが作れない。やはり幼い頃から母の食事をしてきたせいか、定期的に食べに戻ってきてしまう。自立した大人の男として少々情けないが、食事の満足感は大事である。
「あらブレナン、今日は早かったのね」
「ただいま。うん、思ったより早く原稿が片付いたからね。それに今日は肉じゃが作るって言ってたから」
いい匂いに誘われてふらふらとキッチンに向かうと、野菜を切っていた母が僕を見て笑顔になった。
「アナとレイモンドも遊びに来ているわよ。レイモンドも肉じゃが好きだから、絶対食べてから帰るって」
「え? そうなの? それは聞いてなかったなあ。三カ月ぶり位かな」
「そりゃ新婚だし、公務だって忙しいでしょう? あなたもいくら友達と妹とは言え、次期国王陛下と次期王妃殿下になるんだから、失礼はないようにね」
「やだなあ。僕はいつもそつがないだろう?」
そう笑うと早速客間へ向かう。ノックをして扉を開けると、ルーシーがレイモンド達に飲み物を出しているところだった。
「まあブレナン坊っちゃま、お帰りなさいませ」
「いい加減坊っちゃまは止めてよルーシー。僕をいくつだと思ってるんだよ。……あ、僕にも飲み物もらえる? コーヒーがいいな」
「かしこまりました」
いつまでも子供扱いするルーシーに照れくさくなってそう言うと、レイモンド達が座るソファーの向かいに腰掛けた。
「久しぶりだねアナもレイモンドも。元気にしてた?」
「元気だよ。ブレナンも変わりなさそうで何よりだ」
「母から次期国王陛下と王妃殿下だから粗相がないようにと釘を押されたけど……殿下とか妃殿下とかつけた方がいいかな?」
「止めてよブレナン兄様。実家の屋敷に戻ってまでそんな堅苦しいのごめんだわ」
「本当に友達止めるぞ。公式の場でもないんだからいつも通りでいい」
からかうように告げると、思った以上に反発されたので笑った。レイモンドもシャインベック家の中では常に自由に過ごしたい、と常々言っていたので、実はそう返されるのも予想はしていたんだけれどね。
「それにしても、今日はまた何で二人揃って? あ、まさか……」
僕はアナを眺めた。アナは恥ずかしそうにしーっ、と親指を口に当てた。
「まだ内緒よ。──三カ月に入ったの。だから両親に報告も兼ねてね。ついでに食事をたかりにきたのよ」
「お義母上の肉じゃがは私の最高に好きなものの一つだからな」
「それは良かったな。二人ともおめでとう!」
ルーシーがコーヒーを運んで来て下がると、僕はレイモンドの手を握ってぶんぶんと振った。
「兄様ありがとう……本当に厳しい鍛錬の世界よね。私は母様を尊敬するわ」
「……ん? 鍛錬って?」
「まあまあその話はいいじゃないか。──それよりブレナン、仕事ばかりでちっとも結婚の話はないみたいだが、恋人とかまだ居ないのか?」
レイモンドに無理やり話を逸らされたような気がしたが、自分の心配もされているのは確かだ。彼は結婚前からもう成人しているんだし、そろそろいい人は見つかったか、お前は理想が高すぎるんじゃないか? などと説教されていた。
「んー、残念ながら。あ、でも別に理想が高いとかではないんだよ。単に今は仕事の知識を深めたいし、視野を広げたい。一人前のライターになりたいのに忙しいから自分に時間を使いたいんだ」
「それならいいんだが……」
「あ、そういえばリアーナも同じ会社に入ったんでしょう? どうなの、リアーナも頑張ってるの? 最近はなかなか連絡も取れてないんだけれど……あの子はどちらかというと本好き同士でクロエと特に仲良しだったしなあ」
「リアーナ? 部署が違うからなかなか顔も合わせないけど、張り切っていたから元気にやっているんじゃないかな? 今度話を聞いてみるよ」
そういえば、最近忙しさにかまけてリアーナの様子を見とこうと思っていたのを忘れていた。頑張り屋だが、侯爵令嬢として家ではしてもらう側の人間だし、こういう貴族としての地位が何の役にも立たない現場で苦労していることもあるかも知れない。心の中に忘れずにメモしておいた。僕は自分が集中すると、すぐ周りをほったらかしてしまうことがある。反省しなくては。
雑談していると父も帰ったようで、皆で夕食になった。夕食後、居間でくつろいでいるところでアナ達から妊娠の報告を聞いた母は、手を叩いて喜んだ。
「また可愛い孫が増えるのね! ……でも、皆が早々に孫を産んでくれるのは嬉しいんだけれど、四十そこそこでお祖母様と言われるのが切ないというか何というか。年月は残酷よねえ……徹夜も厳しくなってるもの。もう老後生活を考えないと。仕事も引退しようかしらねえ」
と少し落ち込んでいた。
「何を言うんだ。リーシャは未だに昔と変わらずどこもかしこも可愛いし、アナたちと並んでも姉ぐらいにしか見えないじゃないか!」
「そうでございますよ。わたくしの息子もリーシャ様だけでなく、アナ様たちも未だに『童話に出てくる王子様やお姫様みたい』と言っております。グレアムの目は確かです」
父やルーシーがすぐフォローに回るのもいつものことだ。
「ルーシーの目が霞んでいるからグレアムも霞むのよ。しっかり矯正しなさいよ。我が家の究極の美形はダークって前から言ってるでしょうに。見てちょうだい、五十代にして尚研鑽を続け、鍛え上げた体に端正な顔、それに高潔な人格者で優しくて!」
「リーシャ、事実と異なる発言は止めなさい。それは身びいきというものだ」
「わたくしの理想はリーシャ様だと昔からお伝えしておりますでしょうに。旦那様の良さはリーシャ様だけが理解していれば良いのです。──さ、徹夜も利かないお体であれば、早めに眠れるようそろそろお仕事にかかりませんと。さささ」
「さささ、って貴女ねえ……でもそろそろ締め切りも逃げられないところね」
また丸め込まれて仕事部屋に連れ去られる母を見ながら、きっとルーシーがいる限りはずっと仕事をすることになるんだろうなあ、何しろ三冊ずつ購入している大ファンの一人でもあるしなあ、とルーシーの手際に感心した。ルーシーは世界で一番母を転がすことに長けているし、母も何だかんだと流されるタイプなので、大変いいコンビだ。父はと言えば、しんどくなった母親をよしよしと甘やかし溺愛する受け皿だ。我が家は本当に適材適所である。
(うちみたいな家庭だったら僕も持ちたいんだけどなあ……)
屋敷から戻り、ベッドと大きめのデスク、それに最低限の衣類を入れたクローゼットしかないアパートに戻ると、何となく人寂しいような心境になる自分もいて、女性との付き合いは面倒といっといて自分勝手で面倒くさい人間だなあ、と自省した。
僕は一週間ぶりに、いつものごとく母の美味しい夕食を食べに屋敷に戻って来た。
職場の近くで一人暮らしするようになって、必要性から自炊もそれなりに出来るようにはなったのだが、得意とは言い難い。子供の頃から母の料理を当たり前のように食べていた自分からすると、舌が肥えてしまったのかどうしても満足のいくものが作れない。やはり幼い頃から母の食事をしてきたせいか、定期的に食べに戻ってきてしまう。自立した大人の男として少々情けないが、食事の満足感は大事である。
「あらブレナン、今日は早かったのね」
「ただいま。うん、思ったより早く原稿が片付いたからね。それに今日は肉じゃが作るって言ってたから」
いい匂いに誘われてふらふらとキッチンに向かうと、野菜を切っていた母が僕を見て笑顔になった。
「アナとレイモンドも遊びに来ているわよ。レイモンドも肉じゃが好きだから、絶対食べてから帰るって」
「え? そうなの? それは聞いてなかったなあ。三カ月ぶり位かな」
「そりゃ新婚だし、公務だって忙しいでしょう? あなたもいくら友達と妹とは言え、次期国王陛下と次期王妃殿下になるんだから、失礼はないようにね」
「やだなあ。僕はいつもそつがないだろう?」
そう笑うと早速客間へ向かう。ノックをして扉を開けると、ルーシーがレイモンド達に飲み物を出しているところだった。
「まあブレナン坊っちゃま、お帰りなさいませ」
「いい加減坊っちゃまは止めてよルーシー。僕をいくつだと思ってるんだよ。……あ、僕にも飲み物もらえる? コーヒーがいいな」
「かしこまりました」
いつまでも子供扱いするルーシーに照れくさくなってそう言うと、レイモンド達が座るソファーの向かいに腰掛けた。
「久しぶりだねアナもレイモンドも。元気にしてた?」
「元気だよ。ブレナンも変わりなさそうで何よりだ」
「母から次期国王陛下と王妃殿下だから粗相がないようにと釘を押されたけど……殿下とか妃殿下とかつけた方がいいかな?」
「止めてよブレナン兄様。実家の屋敷に戻ってまでそんな堅苦しいのごめんだわ」
「本当に友達止めるぞ。公式の場でもないんだからいつも通りでいい」
からかうように告げると、思った以上に反発されたので笑った。レイモンドもシャインベック家の中では常に自由に過ごしたい、と常々言っていたので、実はそう返されるのも予想はしていたんだけれどね。
「それにしても、今日はまた何で二人揃って? あ、まさか……」
僕はアナを眺めた。アナは恥ずかしそうにしーっ、と親指を口に当てた。
「まだ内緒よ。──三カ月に入ったの。だから両親に報告も兼ねてね。ついでに食事をたかりにきたのよ」
「お義母上の肉じゃがは私の最高に好きなものの一つだからな」
「それは良かったな。二人ともおめでとう!」
ルーシーがコーヒーを運んで来て下がると、僕はレイモンドの手を握ってぶんぶんと振った。
「兄様ありがとう……本当に厳しい鍛錬の世界よね。私は母様を尊敬するわ」
「……ん? 鍛錬って?」
「まあまあその話はいいじゃないか。──それよりブレナン、仕事ばかりでちっとも結婚の話はないみたいだが、恋人とかまだ居ないのか?」
レイモンドに無理やり話を逸らされたような気がしたが、自分の心配もされているのは確かだ。彼は結婚前からもう成人しているんだし、そろそろいい人は見つかったか、お前は理想が高すぎるんじゃないか? などと説教されていた。
「んー、残念ながら。あ、でも別に理想が高いとかではないんだよ。単に今は仕事の知識を深めたいし、視野を広げたい。一人前のライターになりたいのに忙しいから自分に時間を使いたいんだ」
「それならいいんだが……」
「あ、そういえばリアーナも同じ会社に入ったんでしょう? どうなの、リアーナも頑張ってるの? 最近はなかなか連絡も取れてないんだけれど……あの子はどちらかというと本好き同士でクロエと特に仲良しだったしなあ」
「リアーナ? 部署が違うからなかなか顔も合わせないけど、張り切っていたから元気にやっているんじゃないかな? 今度話を聞いてみるよ」
そういえば、最近忙しさにかまけてリアーナの様子を見とこうと思っていたのを忘れていた。頑張り屋だが、侯爵令嬢として家ではしてもらう側の人間だし、こういう貴族としての地位が何の役にも立たない現場で苦労していることもあるかも知れない。心の中に忘れずにメモしておいた。僕は自分が集中すると、すぐ周りをほったらかしてしまうことがある。反省しなくては。
雑談していると父も帰ったようで、皆で夕食になった。夕食後、居間でくつろいでいるところでアナ達から妊娠の報告を聞いた母は、手を叩いて喜んだ。
「また可愛い孫が増えるのね! ……でも、皆が早々に孫を産んでくれるのは嬉しいんだけれど、四十そこそこでお祖母様と言われるのが切ないというか何というか。年月は残酷よねえ……徹夜も厳しくなってるもの。もう老後生活を考えないと。仕事も引退しようかしらねえ」
と少し落ち込んでいた。
「何を言うんだ。リーシャは未だに昔と変わらずどこもかしこも可愛いし、アナたちと並んでも姉ぐらいにしか見えないじゃないか!」
「そうでございますよ。わたくしの息子もリーシャ様だけでなく、アナ様たちも未だに『童話に出てくる王子様やお姫様みたい』と言っております。グレアムの目は確かです」
父やルーシーがすぐフォローに回るのもいつものことだ。
「ルーシーの目が霞んでいるからグレアムも霞むのよ。しっかり矯正しなさいよ。我が家の究極の美形はダークって前から言ってるでしょうに。見てちょうだい、五十代にして尚研鑽を続け、鍛え上げた体に端正な顔、それに高潔な人格者で優しくて!」
「リーシャ、事実と異なる発言は止めなさい。それは身びいきというものだ」
「わたくしの理想はリーシャ様だと昔からお伝えしておりますでしょうに。旦那様の良さはリーシャ様だけが理解していれば良いのです。──さ、徹夜も利かないお体であれば、早めに眠れるようそろそろお仕事にかかりませんと。さささ」
「さささ、って貴女ねえ……でもそろそろ締め切りも逃げられないところね」
また丸め込まれて仕事部屋に連れ去られる母を見ながら、きっとルーシーがいる限りはずっと仕事をすることになるんだろうなあ、何しろ三冊ずつ購入している大ファンの一人でもあるしなあ、とルーシーの手際に感心した。ルーシーは世界で一番母を転がすことに長けているし、母も何だかんだと流されるタイプなので、大変いいコンビだ。父はと言えば、しんどくなった母親をよしよしと甘やかし溺愛する受け皿だ。我が家は本当に適材適所である。
(うちみたいな家庭だったら僕も持ちたいんだけどなあ……)
屋敷から戻り、ベッドと大きめのデスク、それに最低限の衣類を入れたクローゼットしかないアパートに戻ると、何となく人寂しいような心境になる自分もいて、女性との付き合いは面倒といっといて自分勝手で面倒くさい人間だなあ、と自省した。
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