土偶と呼ばれた女は異世界でオッサンを愛でる。R18

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ

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リーシャ、倒れる。

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 即売会も終わり、また日々の生活に戻ったが、本当にこの夏は異常に暑い。


 私は暑さに弱く、秋冬が一番好きなので、毎年この季節には体調を崩しまくっている。

 特に今年は猛暑日が続き、エアコンのまだないこの国では、扇風機と最近発売された冷風機でしのぐしかないのだ。

 冷風機といっても、後ろの蓋がかぱっと空いて、水を吸い上げる厚手のスポンジと水のタンクが下についているだけだ。

 前世でも扇風機の前に、水に濡れたタオルを下げたりもしたが、要するにあの程度の涼しさである。
 それも、涼しいのは、稼動して風が届く範囲内のみである。


 子供たちも私の血筋の影響なのか、暑さに結構弱い。

 庭でかくれんぼや騎士ごっこをするのが大好きなカイルですら、今はブレナンと家にいるのを好む。

 今年は我が家に冷風機を5台も購入し、寝室や子供部屋、居間や図書室に設置したが、昼間はほぼ居間でしか動かさないため、自然に子供たちや使用人、そして私と、居間に人口密度が集中してしまう事態となっている。

 まあ、使用人といってもルーシーを筆頭にサリーやミルバ、ジュリアぐらいのもので、アーネストやアレックは暑さが苦ではないと言うし、マカランも庭にいないと仕事が出来ない。

 別に使用人がサボっている訳ではなく、早朝から他の部屋の掃除などをさっさと片づけて、居間の掃除の時間が丁寧に長くなっているだけである。

 特に板張りの床が念入りに掃除されるようになった。


 何故ならば、カイルとブレナンが、床板がひんやりして気持ちがいいという事に気づいてしまったからである。


 最近ふと気づくと、ブレナンが絨毯に覆われてない板張りのところでよく寝落ちしてるなー、と思ったら、カイルも別の板張りのところで昼寝するようになっていた。

 時々ズリズリと位置をずらしては絵本を見たり積み木をして遊んでいたりもする。

 先日、ふと思いついて町にいつものリサーチへ向かうルーシーにチョークの購入を頼んだ。

 寝落ちしている二人の周りをチョークでこそっと囲ってみた。
 すぐ水拭きすれば消えるのだ。


 3日間その日の子供たちの配置図をずっとメモしてみた。

 翌日ふむふむ、とその紙を睨んでいると、冷やした緑茶を運んできたルーシーが、

「リーシャ様、そろそろミステリーにも手をつけるおつもりですか?」

 などと言い出した。

「事件現場マップじゃないわよ。カイルとブレナンの昼間の生息マップよ」

「なるほど。お子様は体温が高いですから、やはりひんやりゾーンに集中しておりますわね」

「そうなのよ。ちゃんと昼間に陽射しが当たりにくいところを学習してずれていってるところが、いかにも私の血だわと思って」

「最小限の労力で最大限の成果を引き出して来るところは確かにリーシャ様そっくりでございますわね。主に楽になる方向にしか使われないのが残念ですけれども」
 
「まあ大丈夫よ。二人とも素直だし小心者の血も流れてる筈だから、外っ面は子爵令息として頑張るでしょ。家の中ぐらいはのびのび過ごさせてあげましょうよ」

「のびのびの基準がゆるゆるですけれども、ルーベンブルグ家も基本的にゆるゆるだったお陰でリーシャ様がこのように育った訳でございますし、宜しいのではないかと思われます」

「このように、というのが気になるのだけれど」

「伸びたパンツのような締め付けのない………愛着が湧いて手放せなくなる方といったところでしょうか。
 わたくしもシャインベック家の使用人も旦那様含めご家族の皆様が大好きなのです。
 身内のように思いやって頂けるこの屋敷で死ぬまで働きたいと思っておりますわ」

「感動的と言ってもいい後半は良しとして、淑女が伸びたパンツみたいな方と言われて『まあ嬉しい!』となるとでも思ってるのかしらルーシー」

「リーシャ様は、『傾国の美貌を鼻にかけず、たおやかで心優しく控えめで、佇まいが絵画を見るような感動を与える御方で、その美しさをそっくり継承したかのような見目麗しく凛々しいお子様たちも、微笑み一つで国中の乙女が頬を染める程、既に縁談も掃いて捨てるほどだ』とか言われたいですか?」

「………さぶいぼ出たわ」

「じゃあ伸びたパンツで宜しいではございませんか。
 誉め言葉も実際本当の事ですけれども」

「中間地点の表現はないものかしらね………ところで、カイル達に縁談って本当に?」

「左様でございます。上は公爵から下は男爵、騎士爵のところまで、よりどりみどりでございました。概ね相手方の女性が10前後年上なのがアレですけれども」

「ございました、ってちょっと聞いてないわよ私」

「旦那様がことごとく断っておりますからね。『家訓で成長してからの恋愛結婚でないと認められない』と仰って」

「………うちのパパンみたいね」

「念のため相談したご実家の方でも『あの子達を幾つだと思ってるんだ!死ねばいいのに』と仰ってたそうで、旦那様と方向性はご一緒のようでございます」

「………いや、まあいいんだけれど。将来が少し心配だわ。実家もウチも」

「しょうがありませんわね。未だにリーシャ様の美貌を上回るご令嬢は現れておりませんから。お子様にも注目が集まってしまうのです」

「………やめてよもう22になろうって人妻をつかまえて。捜す気がないだけでしょ。いっくらでも転がってるわよ絶対に」

 ため息をつく。
 ヒッキーを持ち上げるのは本当にやめて欲しい。嬉しくも何ともない。
 私は常温か冷暗所で保管して欲しい生き物である。

「まあ子供たちが誉められるのは嬉しいんだけど。親バカよね」

 さて、新しいマンガのネームでもやろうかしら、と立ち上がった時に、急に目眩がしてうずくまる。

「リーシャ様!」

 ルーシーが慌てて駆け寄った。

「………大丈夫よ。暑くて貧血が起きたの、かしら………」

 そのまま足がふらつき床に倒れる。
 頬に伝わる床の感触に、


(あー、カイル達ってばすごいわ。本当に板がひんやりして気持ちいい………)


 と思ったまま意識が途切れた。




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