土偶と呼ばれた女は異世界でオッサンを愛でる。R18

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ

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リーシャのやりたいこと。

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「アズキ、お魚美味しい?」

「ンニャンニャ」

「そう、良かったわねえ」

 私はエサ入れに顔をぶつける勢いでガツガツとマスを焼いてほぐしたのを食べているアズキを眺めて癒されていた。

 カリカリもあるのだが、ジュリアが甘やかして焼き魚をよくあげるので、口が贅沢になってしまったのか余りカリカリを食べてくれないのだ。

 甘やかしてはいかんと思いはするのだが、短い前足で顔を毛繕いする可愛いポーズが魚を食べた後に多いので、ついそれを見たさにあげてしまう自分がいる。

「でも週に2度までよ?後はカリカリ食べなさいね」

「………ニャ」

「何よその不服そうな顔は。ほんと可愛いんだから止めてちょうだい」

「ンニャ」

「いえね、気持ちは分かるわよ?でもほら、子供の頃からそんな贅沢に慣れてしまうと危険だと思うのよ私」

「リーシャ様の独り言の方がよほど危険に思えます。近くに小人さんはいらっしゃらないですよね?」

 ルーシーがアイスミルクティーを私の前に置いた。

「あらありがとう。………アズキとの語らいタイムの邪魔をしないでちょうだい。意思の疎通は出来るのよ。ほらお手だって。アズキ、お手」

「………ミャ」

「………お腹だして撫でろ的な感じに思えますけれども」

「まだ10回に1回位の成功率だけれど、本当にやるのよこの子。お手をする猫ってスゴくない?」

 私はアズキのお腹を撫で撫でしながらルーシーに訴えた。

「スゴいですが、公称は成功率が9割を超えてからにしましょうか。1割だと気の迷いか勘違いに毛が生えた程度でございます」

「ぐうの音も出ないほどの正論ね。いつか驚かしてあげるんだから覚えてなさいよルーシー」

「秒で忘れましたので出来るようになってから改めてお願いいたします。
 フレッシュな気持ちで伺いますので。
 それはそれとして、原稿の進みも最近は早いですし、お時間もゆとりがあるんですから、何か他にやりたい事とか欲しいモノとかございませんか?
 近頃はお仕事も黙々とこなされ過ぎて、個人的にはいつものお元気がないように見受けられます。ちょっと位はパーっと気晴らしをするのも宜しいのではないですか?」

「やりたいこと………やりたいことねえ………」

 私は考える。

 確かにちょっと最近マメに表に出過ぎて疲れてはいる。
 でもこれはダークの為だし、延いては不細工連合の人権向上にも繋がるのだから自分が役に立つなら別にいいのだ。

 そんな連合あるのかも不明だがイメージである。

 そのためには、商店街の人と話してレベルアップしておかないと、貴族のお茶会みたいな修羅の道へは進めないのだ。


 でも………。


「………がしたいわね………」

「はい?何ですか?」

「………ダークと2人でデートをしたいわ」

「はあ。すれば宜しいのでは?」

「ほら、私たち付き合ってそんなに経たずに婚約して結婚したじゃない?
 最初の頃は避けられたりもしてたし、デート自体が少なかったと言うか」

「ですからすれば宜しいではございませんか」

「だって、結婚してもう7年以上よ?
 子供も4人もいるのに今更じゃない?
 ダークだって、新婚でもないのに見慣れすぎた妻とデートなんて、ちょっと引くんじゃないかしらね流石に」

「死ぬほど喜ぶと思いますけれど」

「またまた。そうねぇ、釣りもしたいわぁ………あ、あとすんごく欲しいモノが1つ」

「何でしょうか?」

「ダークから一度もラブレターを貰ったことがないのよねえ………これも今更なんだけど。
 貰えたら生涯のお宝として保管するんだけれど」

「どうでもいいですけれど、旦那様へのラブメーター未だに振り切っておられますね」

「え?あんな容姿端麗で優しくて素敵な旦那様のどこに下がる要素あるの?」

「そろそろ40」

「見えないわよねぇ。30で通用するわ。オッサン詐欺よね一種の」

「夜遊びもせず毎日毎日きっちり夕食までに帰ってくる真面目すぎるところ」

「真面目、結構な事じゃない。ご飯も一緒に食べた方が美味しいでしょ」

「休みもリーシャ様の周囲に可能な限りべったりで。鬱陶しくなったりされません?」

「いいえ別に。目の保養よね。
 子供たちの遊び相手もしてくれるわよ?アズキのトイレの掃除とかもやってくれるし、肩も仕事で疲れるだろうってよく揉んでくれるし」

「………いい旦那様ですわね」

「でしょう?!ほんと私のような腐女子のヒッキーには勿体ないほど素晴らしい人なのよ!
 だから私が頑張ってダークの印象を良くしたいの」

「………どちらかというと旦那様の方がラッキーだと思いますけれど。
 まあリーシャ様が無理をしない程度にしないと旦那様が心配されますから、社交も適度にこなして下さいませ」

「そうね。疲れた顔をしてたら商品価値も下がるものね。私には見た目の好感度しかダークに貢献できるモノがないんだもの。
 未だに壮大なドッキリ疑惑は消えないけど、………私は美人なんでしょ?」

「そりゃもう小さな子供からジジイまでたらしこめる美貌です。子爵夫人に収まってるのが不思議なレベルで………申し訳ありませんが、自分で聞いといてその遠い眼差しは止めて頂けますか」

「ああ、ごめんなさいつい。
 まあ、そんな訳で、まだ若くて使えるうちはこの美貌(笑)も使っておかないと彼に申し訳ないじゃない。あと10年もしたら立派なオバサンだもの」

「相変わらず美貌を棒読みするぐらい自己評価低いですけれど、まあ外に出るのも悪いことではありませんし、頑張るリーシャ様をわたくし応援しております」

「やっぱりルーシーは私の影武者兼ブレーン兼………、メイドだわ」

「ほら、何でもかんでも役職くっつけるから忘れてるじゃないですか」

「忘れてないわよ!ただちょっと記憶が迷子になっただけよ」

「見つかると宜しいですわね。
 ちなみにデートとラブレターの件、さりげなく旦那様にお伝えしておきますわ。
 リーシャ様から旦那様に直接は言えないでしょうから上手いこと申し上げておきます」

「そうね。私から言うのはちょっと恥ずかし過ぎるわよね………でも、可能であればでいいのよ。もし難しい顔をしてたらごり押ししないでね?絶対よ」

「かしこまりました」

 私は下がっていくルーシーを見送って、アズキと遊ぼうと猫じゃらしを掴むも、いやいや自分で言うのも人から言ってもらうのも恥ずかしいじゃないのよ、と冷静に思い直し慌ててルーシーを止めに行ったが、既に屋敷には姿が見当たらなかった。

 きっと本のリサーチついでに騎士団まで足を伸ばすのだろう。



 なまじ出来のいい人間を側に置くと、とても助かることも多いのだが、行動が速すぎて私の理性が里帰りした時にはもう手遅れになってる事もある。


 ………ダークにあんなバカみたいなお願いをしたいと私が思ってる事がモロバレになる。


「アズキ………お母さんしくじったわー………」

「ニャ、ニャ!」

 猫じゃらしを追いかけるアズキをぼんやりと眺めながら、せめてダークにドン引きされませんように、と心の中でただ祈るばかりだった。



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