土偶と呼ばれた女は異世界でオッサンを愛でる。R18

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ

文字の大きさ
135 / 256

ダークはデートに誘う。

しおりを挟む
【ダーク視点】

 丸3日かかって、何とかラブレターの体裁にはなったであろう手紙を書き上げた俺は、ライムグリーンの封筒に入れてきっちり封をした。


 読み返す度に、自分の文章のあまりの稚拙さに破り捨てては書き直すのを繰り返していたら、もう何が良くて何が悪いのかすら判断がつかなくなってきたので、いっそ2度と読み返せないようにと封印したのだ。

 ラブレターなど、生まれてこのかた書いた事もなかったのだ。
 良い文面など思いつく訳もない。

 まさかリーシャが俺のラブレターを今頃になっても欲しがるなんて、夢にも思わないし、一生書く予定もなかったのだ。


 自分で言うのも何だが、俺の文章力は始末書、報告書、申請書などの定型的な書類や公的なモノを書ける程度の能力しかない。
 ま、普段から手紙を書くような習慣もないのだから当然とも言えるのだが。

 リーシャが紡ぐ物語のように、行間から溢れだすドキドキワクワク感、などという引き込まれるような文章が書ければ良かったのだが、あいにく神は俺に文才など不要と考えたようである。


(よし。後は………)


 俺は以前家族で行ったのとは違う、海沿いのコンドミニアム形式のホテルを2泊予約していた。

 多分、釣りをする事になったら、釣った魚を自分で料理したいと言い出すに決まっている。
 リーシャはワサビをつけた新鮮な魚の刺身を好むのだ。


 デートの名目で釣り旅行に行こうと考えていた。
 今回子供たちはルーシーやアレックたちに任せて2人きりである。


 リーシャの方は、

「ダークだって今さら結婚して何年も経った妻なんかとデートしたいとは思わないだろう」

 と悩んでいたようだが、俺だって、

「大分年を食った不細工なオッサンと2人きりで出掛けてくれるとは思ってなかった」
 
 のである。

 ヒューイに一週間ぐらい休み貰っていいかと聞いたら「俺がしんどいだろうがふざけんなボケ」と言われ、ギリギリの攻防で4日をもぎ取ったのだ。

 なぜ溜まりまくっている自分の有休が希望するだけ取れないのか納得行かないところだが、俺はご機嫌なので今回はよしとしよう。

 リーシャと2泊して、戻ってきたら最後の一日は子供たちと目一杯遊ぶ日にしようとも決めていた。



 手紙については、アレを直接渡すのはどうにも照れ臭いので、旅の帰りにこそっと鞄にでも忍ばせようと思っている。
 

 リーシャを誘う前にルーシーがメモを手渡してきた。

「わたくしがラブレターを書けとか2人きりでデートをしろとか一切お伝えしていない事になっておりますので、全て旦那様が自主的に行動したていでお願い致します。
 その方がリーシャ様も喜ばれると思いますので」

 中にはそう綴られていた。

 
 ルーシーにとって人生の最優先事項が『リーシャ』であり、その次に同率で子供たち、ちょい下に俺とすぐ下にアズキといったランク付けである。
 新参者のアズキとランクがほぼ変わらないところが切ないが、アズキには俺も癒されるので仕方あるまい。

 だから、彼女の言う通りに行動すれば間違いないのは分かっているのだが、そうするとまるで俺が【よく気が回る思いやりのある良い夫】みたいで心苦しい。

 いつもルーシーの手柄、影の働きを俺が全部奪ってしまっている気がするのだ。

 俺はちっとも気が回らないし、自分勝手に物事を進めているだけで、お世辞にも良い夫とは言い難い。

 子供たちと率先して遊んでいたりするのも、早く疲れさせて眠らせたいからと言うのが気持ちの8割以上を占めている。

 勿論愛情もあるし、仕事で離れていた時間の穴埋めでもあるのだが、一番の理由は「リーシャと2人でいられる時間を増やしたいから」である。

 アズキのトイレ掃除をしたり、洗濯物を取り込むのを手伝ったりシーツカバーの交換をするのだって、リーシャのやることが減れば、その分俺に構ってくれる時間が増えるだろうという、優しさだけではない狡い計算が働いていたりもするのだ。

 とても40間近とは思えない子供のような独占欲である。

 天から舞い降りた女神を自分のモノにしただけでは飽きたらず、なるべく自分の側にいてほしいと願うなど、このツラで大変おこがましいのだが、年々美しく可愛くなるリーシャを他の男に奪われたくないと言う執着も加わって、俺を妻にマメで優しい男に仕立てているだけなのである。


 ルーシーには毎回感謝のしようもないが、お互いにリーシャ至上主義なので、協力体制は崩せない。

 御礼のつもりで数日休みをやろうとしたら、リーシャと離れてまでやりたいことが思いつかないと拒否られた。

 俺と同じ魂(ソウル)を持つ彼女は、既に我が家のメイドというより俺の頼りになる相棒である。



※   ※   ※



「………釣り旅行?」

「ああ」


 寝室でリーシャに週末のお誘いをする。
 ルーシーに仕事の空きスケジュールは聞いていたので大丈夫だとは思うものの、本当にOKが貰えるまでは不安である。

「2人で?」

「夫婦水入らずもたまには良いんじゃないかと思ってな。でももし、その、アレだ、行きたくないなら無理にとはーーー」

「やあね勿論行くわよ!わあ本当に凄く楽しみだわ!!ありがとうダーク」

 満面の笑みで俺の胸に飛び込んで来るリーシャを受け止めるとようやくホッとする。

「すまんな、オッサンと一緒で」

「ダークがオッサンなら私もオバサンだからね」

「バカ言うな。リーシャはどこもかしこも可愛いし綺麗だ!」

「………まあそれは言い過ぎだけど。
 ダークも何年経っても私のイチオシのイケメンだから」

 すりすりしてくるリーシャが可愛くて仕方がない。
 ウチの奥さんは最高である。

「ダーク、ところで今回も対決はあるのよね?」

「………ん?なんだまた俺にボコボコにされたいのか?技術は俺の方が上だが」

 本当は結婚してからは時間が勿体なくて殆ど釣りなんぞしていないので、昔の勘が取り戻せるか若干不安だが。

「ほほほほっ、前回負け越してるクセに。負け犬の遠吠えは見苦しくてよ?」

「………アレはたまたまだ。今回はアオリイカとクロダイ辺りを狙うが、大物は俺が釣るから、リーシャはちんまいのを釣っておけ」

「ちょっと言ったわね………私が勝ったら『師匠』と呼ばせるわよ」

「おう。俺が勝ったら『大先生』と呼べ」

「乗ったわ」





 俺たちはルーシーやアレックに子供たちの事を頼み、週末楽しい釣り旅行に出発した。



しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

召しませ、私の旦那さまっ!〜美醜逆転の世界でイケメン男性を召喚します〜

紗幸
恋愛
「醜い怪物」こそ、私の理想の旦那さま! 聖女ミリアは、魔王を倒す力を持つ「勇者」を召喚する大役を担う。だけど、ミリアの願いはただ一つ。日本基準の超絶イケメンを召喚し、魔王討伐の旅を通して結婚することだった。召喚されたゼインは、この国の美醜の基準では「醜悪な怪物」扱い。しかしミリアの目には、彼は完璧な最強イケメンに映っていた。ミリアは魔王討伐の旅を「イケメン旦那さまゲットのためのアピールタイム」と称し、ゼインの心を掴もうと画策する。しかし、ゼインは冷酷な仮面を崩さないまま、旅が終わる。 イケメン勇者と美少女聖女が織りなす、勘違いと愛が暴走する異世界ラブコメディ。果たして、二人の「愛の旅」は、最高の結末を迎えるのか? ※短編用に書いたのですが、少し長くなったので連載にしています ※この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

【美醜逆転】ポジティブおばけヒナの勘違い家政婦生活(住み込み)

猫田
恋愛
 『ここ、どこよ』 突然始まった宿なし、職なし、戸籍なし!?の異世界迷子生活!! 無いものじゃなく、有るものに目を向けるポジティブ地味子が選んだ生き方はーーーーまさかの、娼婦!? ひょんなことから知り合ったハイスペお兄さんに狙いを定め……なんだかんだで最終的に、家政婦として(夜のお世話アリという名目で)、ちゃっかり住み込む事に成功☆ ヤル気があれば何でもできる!!を地で行く前向き女子と文句無しのハイスペ醜男(異世界基準)との、思い込み、勘違い山盛りの異文化交流が今、始まる……

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

処理中です...