土偶と呼ばれた女は異世界でオッサンを愛でる。R18

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ

文字の大きさ
171 / 256

リーシャ、修羅場を乗り越える(仮)

しおりを挟む
「やっほー!手伝いに来たわよ~♪………あらやだリーシャ、眼が血走ってるわよ?」


 フランがリアーナを連れて朝から屋敷にやって来てくれた。

「フラン………待ってたわ………」



 もう感謝祭は明日なのである。

 そしてまだケーキは全然必要量に届いていない。

 そら血走るってものであろう。

 だってなま物だもの。
 ギリギリまで作れなかったんだもの。


 昨日は朝からクッキーと、ドライフルーツをこれでもかと贅沢にぶち込んだパウンドケーキを焼きまくった。

 ウチの屋敷はオーブンだけはバカでかい。亡くなられたお義母様がお料理好きで、台所の設計にはかなりこだわられたらしい。

 トレイを前後に10枚並べてもまだゆとりがあるオーブン。お義母様は豚の丸焼きでも作っていたのだろうか。

 あ、私は全然やらないけど、お客様呼んでパーティーとかをしてたのかも知れないわ。貴族だものねぇ。

 家族の食事だけだとそこまで大量のモノを作る事もなかったので、普段使い用の小さなオーブンの方ばかり使っていたが、今回はフルに大活躍である。


 ありがとうございます助かります天国のお義母様!なむなむなむ。
 

 ジュリアやサリー、ミルバも総動員して、焼いた大きめのクッキーの粗熱を取り、2枚ずつビニールの小袋に入れて渡すと、ルーシーがモールのような物できゅっきゅっ、と捻って止めて箱に詰めていく。今回のイベントの参加賞である。

 本当は子供たちだけに用意するつもりだったのだが、運動すると甘い物が欲しくなる事もあるだろうし、ましてや大人げない行動をする人間が出て面倒事になるといけない、と言うことで参加者全員にもれなく配る事になった。

 まあ要らない人は子供や甘い物好きな人にあげたらいい。


 しかし、3人でクッキーを袋に入れるスピードよりも、捻って止めて箱詰めしてその箱を積み上げて行くルーシーの方が早いというのは一体どういうトリックだろうか。

 ルーシーは料理だけは苦手というか、得意ではないようなので、今回は雑用を嬉々としてこなしている。

 そして、何とか昨日の内に参加者全員に回るだけのクッキーを焼き、袋詰めを終え、パウンドケーキもカットして袋詰めした。こちらは2位、3位用の賞品だ。

 ちょいと皆でつまんでみたが、疲れも一瞬飛ぶほど美味だった。

 あれよねー、やっぱり良いものを惜しみなく使うと、素人でもプロレベルの味になるのね。


 後はショートケーキやチーズケーキ、ムースやタルトなど、12センチ程の小さな型を大量に購入してあるので、スポンジケーキやタルトもそのサイズに合わせて作っていく。

 生クリームの泡立てや、小麦粉やバターなど材料を練り込む力仕事は、体力的に力尽きそうなのでアーネストやアレック、マカランなど男性陣にも参戦して貰った。

 ダークも仕事から早めに戻って手伝うと言ってくれている。



「かーさま、ボクたちもてつだいます!」

「リーシャおばさま、ボクもいがいにきようなんですよ」


 オーブンでの………えーと何度目か忘れたが、ケーキの焼き上がりを待ってアイスティーを飲みながらルーシーたちとひと休みしていると、カイルたち4人とレイモンド王子が私の周りにワラワラやって来た。

「小さい子が動き回ると大人が作業しづらいからいいわ。貴方たちはダンスの練習でもしてなさい」

「でも、リアーナはおてつだいしてませんか?」

 納得行かないようにカイルが言うと、私はふと笑みを見せた。

「リアーナは、少しだけ袋とじを手伝ったら疲れてとっくに爆睡してるわよ。
 ………ふうん、そこのお兄さんたちは、ダンスで鍛えた体力が有り余ってそうねぇ良く見たら。ねえどうかしらルーシー?」

「左様でございますね。つまめもしないイチゴのヘタ取りエンドレスですとか、悪夢の手がまっ黄色に染まっていくジャム用オレンジの皮剥きですとか、やることなら幾らでもございますので、男手があるのは宜しいのではないでしょうか?」

 私たちの荒み切った眼差しに、

「カイルにーさま。ぼくはダンスでどうしてもなっとくできないところがあったのをいまおもいだしました!」

 ブレナンがキリッとした顔でカイルを見た。レイモンド王子は深く頷き、

「かんせいどをあげてあすのかんしゃさいでゆうしょうしたいきもちはオレもおなじだぞブレナン。どうしてもというならきょうりょくしなくもない」

「アナとクロエもあのタタタン、というところでうまくいかないの。ね?クロエ」

「そう?………えーとそうです!まだカンペキではなかったとおもいます」

「………うん、みんながんばりやさんだな。
 かーさま、おてつだいできないのはつらいですが、ボクらはおジャマしないよう、もっとダンスのクオリティをあげてあすにのぞみたいとおもいます」

 先日の舞台の演技力はどこへ消えたんだお前ら、と思うような棒読みのセリフを言いながら、車エビのようにササササッ、と下がりつつ子供たちは消えていった。

 きっと屋敷中に甘い香りが漂ってるので手伝い名目でおこぼれを貰うつもりだったに違いない。

 つくづく私のDNAがまぶされている子供たちである。レイモンド王子まで染まって来ているんじゃないかと不安がよぎるが、まあ今さらである。


「………さぁて。出来たケーキのトッピングと箱詰めにかかるわよみんな」

「リーシャ様、私少々胸焼けしたようで、もう少しだけ休憩したいなー、とか思ったり思わなかったり………」

「あ!私も二の腕がぷるぷるしてますまだ」

「サリーもミルバも甘いわよ。ねぇ、主人より先に逃げられるとでも思ってるの?
 今夜はダークに商店街で片手でつまめる軽食を沢山買ってきて貰うように頼んであるのよ。
 ジュリア、良かったわねぇ夕食の心配しないで済んで?
 ふふふっ、うふふふふふっ」

「………リーシャ、いつもと違って黒いわよ笑いが」

「少なくとも50ホールは作らなきゃいけないのよ?心もささくれるわよ。当分スイーツなんか見たくもないわ。
 フラン………悪いけどギリギリまで助けてちょうだい」

「………え、ええまあ、夫には久し振りだから泊まるかもとは言ってあるけど………」

「嗚呼!こーころーの友よ~♪」

「呑気に来た自分を叱りつけたいわ………」



 そのままセルフドナドナで戦士たちは厨房へ向かい、新たな修羅場が始まるのだった。




 そして、私たちの辛い戦いは終わったが、参加者たちの戦いは明日からが本番なのであった。





 ………などと思っていたのはリーシャ本人だけで、実はまだ自分の戦いは序盤戦で、本当の戦いは始まってもいなかったのだと気づくのはまだ少し先の事である。



しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

【完結】男の美醜が逆転した世界で私は貴方に恋をした

梅干しおにぎり
恋愛
私の感覚は間違っていなかった。貴方の格好良さは私にしか分からない。 過去の作品の加筆修正版です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!

ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
 異世界転生をするものの、物語の様に分かりやすい活躍もなく、のんびりとスローライフを楽しんでいた主人公・マレーゼ。しかしある日、転移魔法を失敗してしまい、見知らぬ土地へと飛ばされてしまう。  全く知らない土地に慌てる彼女だったが、そこはかつて転生後に生きていた時代から1000年も後の世界であり、さらには自身が生きていた頃の文明は既に滅んでいるということを知る。  そして、実は転移魔法だけではなく、1000年後の世界で『嫁』として召喚された事実が判明し、召喚した相手たちと婚姻関係を結ぶこととなる。  人懐っこく明るい蛇獣人に、かつての文明に入れ込む兎獣人、なかなか心を開いてくれない狐獣人、そして本物の狼のような狼獣人。この時代では『モテない』と言われているらしい四人組は、マレーゼからしたらとてつもない美形たちだった。  1000年前に戻れないことを諦めつつも、1000年後のこの時代で新たに生きることを決めるマレーゼ。  異世界転生&転移に巻き込まれたマレーゼが、1000年後の世界でスローライフを送ります! 【この作品は逆ハーレムものとなっております。最終的に一人に絞られるのではなく、四人同時に結ばれますのでご注意ください】 【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』『Pixiv』にも掲載しています】

処理中です...