ルキはやっぱり諦めが悪い。

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ

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ルキはやっぱり諦めない。

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 友人のマールが紹介してくれた人は、奥さまに先立たれた40歳位の男性だった。
 ジェイクさんという。

 私が図々しくも、

『お付き合いするのではなく、一時的に恋人に見えるよう何度かデートをして欲しい』

 というワガママなお願いを面白がって引き受けてくれた人だった。

 彼自身は亡くなった奥さま以外の女性と結婚するつもりもないようで、

「たまには若い女の子とお茶飲んだりご飯食べたりってのも気分が華やぐからね。気にしないで、妻も見逃してくれるさ」

 と謝る私にウィンクした。

 済みませんもうそんな若くないんですけども。33ですし。



◇  ◇  ◇


「………ほー、そうなんだ。それで、ボクとデートをするようにして、恋人が出来たと彼に諦めさせたいと?」

 週末、カフェで待ち合わせをしてお茶をしながら、私は偽の恋人になってもらうジェイクさんに理由を打ち明けた。

「いえ、諦めさせたいと言うか、勘違いを改めたいと言うか。
 多分、側に居すぎて彼の恋愛の基準が狭まりすぎたんじゃないかと思うんですよね。
 いくら親しくても、こんなおばさんとではなく、もっと若くて可愛いコと出会って、幸せな家庭を築いて欲しいんです。ルキは、彼はそれだけ素晴らしい人なので」

「ふぅーん。カスミさんはそのルキ君の事を好きじゃないのかい?」

「勿論大好きですよ。ただ恋人になりたいかと言うとよく分からないですし、彼の足かせになったりするのは嫌ですし。
 まあそれに彼よりずうっと早くトシを取っていきますから………」


 私がもしルキを受け入れたとしても、自分よりも先に老けていく女をずっと愛せるのかと言うと………まぁ捨てられるのが関の山だと思う。

 女が13歳上という年の差はそれほどの怖さがある。男が上なら全く問題ないのだろうけど。

「なるほどね………」

 ジェイクさんはふんふんと聞いていたが、

「そういう不安は、言ってみた?彼に」

「まさか!だって彼はたまたま身近にいたから私を好きだと思い込んでるだけですから」

「そうなのかなぁ………思い込みほど怖いものはないんだけどな。
 ………例えば、羊のような大人しいボクが実は狼だったりしてさ」

 ガオーっ、とおどけるジェイクさんに思わず笑ってしまう。

 その時だ。

「おい危ないぞ兄さん!」

 と言う男性の声がして、何事かと声がした方を見たら、馬車にはね飛ばされた男がいた。見覚えのある服。

「ルキ!!」

 思わず立ち上がり叫んだ。

「え?彼が例の子か?カスミさんほら行くよっ!」

 動揺してただ呆然と立ちすくむだけだった私をぐいぐい引きずって、止まった馬車の近くに倒れているルキのところまで連れてきてくれたジェイクさんは、周りの人を見渡した。

「おい医者は呼んだのかっ!?」

「ああ!この近所に住んでるジーさんがいるらしい。向かいに住んでる家の娘さんが呼びに行った!」

 ルキ、ルキ、としゃがみこんで私は声をかけるが返事はない。

 額からから流れる血と、有り得ない方向に曲がった右肘に頭が真っ白になった。


 まさか、このまま死んでしまうのか?

 私が彼の幸せを願って離れようとしてるって言うのに?

 まだ彼は結婚すらしてないではないか。

 それなら私のやることの意味はどこにあるのよ!

 ボロボロとみっともなく涙が出て止まらない。

「馬鹿ルキ!!死ぬなら結婚して何十年も経って子供も孫もいるくたばり損ないのジジイになってから老衰で死ねぇぇぇ!!」

「………カスミさんが結婚してくれる、なら、がんば、って、生き延びます………」

「全くもう諦めの悪い男ね!!私なんかで良きゃいつでもしてやるわよ!その代わり子供生めるか分かんないわよいいトシなんだから………え?ルキ!?」

 反射的に言葉を返してから気づくと、目を開いたルキが笑顔でカスミを見上げ、

「………言質は、取りましたよ、カスミさん………」

 と言って気を失った。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「いやぁ本当に綺麗ですカスミさん!!」

 馬車での事故から3ヶ月。
 今日は教会で二人だけの結婚式を挙げる日。


 ルキが事故のあと、私のアパートに寝泊まりすることになり、食事や風呂の世話をしつつ(利き腕使えないしね)、何度となく「あとできっと後悔すると思うから、私との結婚はよーく考え直した方がいいと思う」と説得してはみたのだが、絶対に首を縦には振らなかった。

「死にかけた人間の願いなんて本音しかないでしょうカスミさん!!」

「いや、でもねほら、たまたま近くに私しか居なかったからそう思ってるだけで、同じ年頃の可愛い女の子とか幾らでもいるじゃないの。私の年を考えてよ。ルキより13も上なんだよ?」

「全く気にならないです!むしろ僕には勿体ない位の女性です!!
 それに子供なんか幾つになろうが出来る人も出来ない人もいますし、僕が家族になりたいのはカスミさんですから!!一生二人でも別に良いじゃないですか」


 私ももう説得を諦め、腹をくくった。


 彼がそれで幸せだと言うのなら結婚しよう。

 そして、何年か後、他に好きな女性が出来て、そちらと結婚したいと言うのなら喜んで送り出そう。

 ババアの焼きもちなど見苦しいだけだ。

 きっと辛くて泣くだろうが、それは彼の前ではなく一人で泣こう。
 それまで幸せだった日々を糧にすればまた何十年かは生きられるだろう。
 こんな素敵な年下のダンナがいてくれただけでも私の人生は意味があるのだから。

 そしてまた、パン屋を営みながら、ただの仲の良い友人関係に戻るのだ。



「ウェディングドレスなんて、着ることがあるとは夢にも思わなかったけど………似合ってるなら良かったわ」

 私はドレスを着た私をべた褒めするルキに顔を赤らめる。

「いや似合うとか似合わないとかでなく、もう僕の奥さんは何着ても魅力的だと言いたいんです!」

「あ、ああそう。ありがとう。
 ………これからよろしくね、私の旦那様」

 ドレスの裾を上げ、礼をすると、タキシードを着たルキは、あぁ奥さんが可愛過ぎて危うくゴミ理性が焼き切れるところだった、などとブツブツ言っていたが、彼の価値観はまだ正常には戻ってないようだった。



◇  ◇  ◇


 親しい家族もいないルキと、全く家族のいない私は、ひっそりと式を上げ、正式な夫婦となった。

 ルキが式の後、二人で住む家を買ったんです、と言うので驚いた。

「当分は私のアパートなのかと思っていたのに」

 ルキのアパートは、眠りに帰るだけなので、本当に小さなワンルームだと言っていたので、まだ私のアパートの方が広いだろうと勝手に思っていたのだ。

「だって、夫婦ですから、二人で眠るベッドも大きい方がいいでしょう?それにカスミさんの料理が食べられるキッチンも使いやすい広さの方がいいですし。
 そのぐらいの貯金はあるんですよ!だてにカスミさんと会う予定がない時は全て仕事をしていた訳じゃないのです!」

「………私の方が年上なのに貯金が少ないって………」

 少し落ち込む私をおろおろと励ましながら連れてきてくれた新居は、広々としたキッチンがある日当たりのいいこじんまりとした一軒家だった。
 広くはないが柵で囲われた庭まである。

 風呂も広く、ゆったりしたソファーの置かれた居間もある。
 その上、キングサイズのベッドのある寝室とお互い仕事があるため各個人の部屋、そして子供が出来た場合のための部屋まである。
 ある程度の家具まで置いてある。私の好きな飾り気のないシンプルなものばかりだった。
 私が仕事で不在の間などに自分で色々と選んだのだろう。手も不自由だっただろうに。

「………ルキ、どうしよう。私すごく嬉しい………」

「気に入ってくれましたか!僕も嬉しいです!!
 まあアパートをお互いに引き払う手続きもありますし、実際の引っ越しはこれからですけど、………一応初夜なので、こちらに一泊しませんか?出来たら料理のしやすさもキッチン使って検証して貰いたいですし」

「そうね!早速買い物に行きましょう!………夫婦で一緒に買い物するのも新婚なら、いいわよね?」

「新婚じゃなくても喜んで行きます!」

 私たちは笑顔で商店街に買い物に出掛けた。


ーーーーーーーーーー

 キッチンも素晴らしく使いやすく、サラダやサーモンのカルパッチョ、大盤振る舞いで霜降りのいい感じの牛肉をステーキにして、ワインで乾杯した。

 ルキが先に風呂に入り、私と交代し、お風呂に浸かってゆったりしていると、扉の外から、

「カスミさんに是非着て頂きたい寝間着があるので、宜しくお願いします!箱だけ入れるので少しだけ扉開けますが、覗きませんから!僕は先に寝室にいますね!!」

 と何やら紙袋に入った箱をそっと忍ばせてきた。

 まだ20歳だ。お揃いのパジャマとかを着たいとかなのだろう。可愛いねー。

 私は風呂から上がり、タオルで髪を乾かしながら袋から箱を取り出した。

「………あの小僧………」

 中にはそれはそれはエロい、黒レースのベビードールが入っていた。

 三十路にこれを着て欲しいとかどんな拷問。

 すっけすけじゃないのよ。
 体を守る意思が全く感じられないってのはお腹のちょっとぷにぷにしてきたお肉も隠れないって事なのよ?
 少し太ったお蔭で胸にも贅肉がついたのは嬉しい誤算だけど。


 よし、いいじゃないの。
 旦那様の希望なら着てやるわよ。
 後で泣かないでよ………本当に。



 寝室の扉をそっと開ける。
 小さな灯りだけがついている。
 ルキがベッドに横になっていたので、

「ごめんね、少しだけ目をつぶっててくれる?」

 と急いでベッドに潜り込む。
 着たはいいが、処女にはかなりハイレベルだった。やたらと恥ずかしいのだ。

 私とルキが寝転んでもまだゆとりがあるベッド。寝相が悪くても転げ落ちそうにない。
 何となくお互いに背中を向けている。

「えーと、ねルキ」

「………はい」

「33にもなって申し訳ないのだけど、私初めてなので、こう、リードするとかそういうスキルが全くないんだけど、ルキは経験ある?」

「え?でも付き合ってた人がいましたよね?!」

「キスをしたけどそれだけで。
 ………このトシで処女っていうのもルキには面倒だとは思うんだけど」

「何言ってるんですか!嬉しいに決まってるでしょう!僕が初めてなんでしょう?」

「う、うんまぁそういう事に、なるわね」

「僕も初めてなので、お互いに初めてで良かったです」

 ルキが向きを変えて私を後ろから抱き締めた。
 お尻に当たっているのは、アレでしょうか。既にガチガチになっておられるようなのですが。

「ちゃんと見たいです。僕が贈った寝間着もカスミさんも」

 耳元で囁かれると、下半身に熱が集まるような気持ちになる。

 ルキから胸をやわやわと揉まれ、唇に舌を絡ませて来られると、思わず身体が反応してしまう。

「ああ、本当に綺麗だ。レースで身体の柔らかいラインが見えるのも本当に興奮します………ずっと今日という日が来るのを何年も待ってました………それで、1つお願いがあるんですけど」

「な、なに?」

「カスミさんと結婚するまではケジメのためにずっと丁寧に話すようにしてましたけど、………止めていい?」

「あ、うん勿論だよ。旦那様に敬語使われるのも変だし」

「分かった。じゃあ、カスミ。痛くないように俺頑張るから、少しでも気持ちよくなって」

 そういうとルキは立ち上がっていた乳首に吸い付いて軽く噛んできた。仰け反った身体を押さえ込むようにしながらベビードールも下着も脱がされる。

「ぁあっっ、んんんっ」

 感じたことのない胸への刺激の気持ちよさに、蜜壺からとろりと流れるものがあった。
 首筋から耳朶まで吸い付かれ、舐められる。身体が求められる喜びに震える。

「怪我して一緒に住んでる時が一番辛かった………毎晩同じ家に抱きたい女が寝てるのに何も出来ない気持ち、カスミには分かる?」

 そう呟きながら、私の足の間に手を伸ばしていくルキに、思わず足を閉じてしまう。

「駄目だよ、今夜は我慢出来ないから」

 無理矢理こじ開けられて、指を滑らせたルキは、すごく濡れてるね、嬉しい、とそのまま指を中につぷり、と沈めた。

「んっ、キッツい………。もう少し気持ちよくなって、緊張ゆるめないと入らないや。
 でも、ほんと他の男に取られなくて良かった。嫉妬で気が狂うか相手の男ボコボコにしてたわ俺」

「んんっ、ルキっ、そこは………あ、んっ」

「ここ気持ちいいの?うん、いっぱい気持ちよくなってね。俺としかこんなことしちゃ駄目だよ?カスミを気持ちよくさせるのは俺の役目だからね」

 花芯を摘まむように触れられて、私の頭がスパークした。

「んっ!、あぁっ………はっ………はっ………」

 荒く息をつく私の髪を撫でながら、

「いっちゃったんだね?カスミの喘ぐ声、本当に腰にくる。
 ………俺ねー、夢精した後からもずーっとカスミとしたらどんな感じだろう、胸を揉んだらどんなに柔らかいだろうとか思って自分でしょっちゅう想像してしごいてた。
 おかげで、俺カスミにしかチンチン勃たなくなっちゃった。責任取って」

「え?」

 ルキが蜜壺に自身のモノをこすりつけ出した。

「もうほんと無理。我慢無理。挿れるよ」

 そう言うと、彼の想像以上のモノが私の中へぎちぎちと音がしそうなほどの圧迫感と痛みを持って入ってきた。

「あっ………んんん………」

 痛みに唇を噛んで顔をしかめてしまう私に、ルキは指を口に入れて、

「唇切れちゃうからダメ。ごめんね、もう少しで全部入るから。痛かったら俺の指噛んでいいから」

 ルキはそういって、私の最奥まで挿れてきた。

「俺のが全部挿入った………あぁ………ぎゅうぎゅう締め付けてくる………すぐイっちゃうから少し力抜いてカスミ」

 私にキスをしながら、少しずつ抽送をするルキ。

「ああ、死ぬほど気持ちいい………ずっとカスミの中に入ってたい………」

 最初の痛みを乗り越えると、痛みだけではない鋭いような快感が時おり訪れる。

「ルキ、ルキ……」

「カスミ、ようやく俺のモノだ………カスミ、カスミ………」

 早くなる抽送に私が上り詰めそうになると、ルキも

「あぁ、駄目だカスミ!イくっ!!」

 グイッと突き込むと震えと同時に私の最奥に彼の白濁が強く放たれるのを感じた。




◇  ◇  ◇



 正直、2、3年もしたら飽きて若い女に気持ちが向かうと思っていた私だったが、何故か10年を過ぎてもルキは仕事を終えると真っ直ぐ帰宅し、私の料理が一番美味しいと褒め、私が誰よりも一番魅力的だと囁く。

 そして、出来るはずもないと思っていた子供も私が36歳の時に授かった。
 丸高と言われるトシに私もよく頑張ったと思う。
 出産は本当にキツかったが、ルキによく似て整った顔立ちのオスカーは現在7歳になり、家の手伝いも進んでする良い子に育ってくれた。


「ねえルキ」

「んー?」

「あなた、本気でまだ私の事好きなの?もう結構オバチャンよ私。おっぱいも段々垂れて来てるしお腹もぷにぷにだし。
 またルキは男盛りなんだから絶対女には苦労しないわよ?」

 いつでも好きな子が出来たら言ってね、子供の件は抜きにして後腐れなく別れてあげるから、と毎年のように言ってる私。

「うん。絶対俺が死ぬまで無理。未だにカスミ以外その気にもならないし勃たないし、全く興味も湧かないから」

 毎年のように同じ台詞を返すルキ。

「困ったものよねぇ………」

「毎年毎年、答えの決まっている質問をする奥さんにも困るんだけどね俺も。いい加減諦めたら?」

「ダメよ、さらりと夫を送り出せる大人の女でいようと決めてるんだから」

「あー、そういうとこが俺の好みだなー」

「んん?じゃあ逆においおい泣いて捨てないでー、とかいった方がいいのかしら?」

「それはそれで嬉しいから好みだなー」

「………ルキも本当に諦めないわね」

「カスミも諦めないねぇ」


 こうしてまた一年が過ぎていく私たちだった。






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