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旅は道連れ
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俺がショーユとこっそりトランクから引っ張り出しておいた在庫を抱え、ご機嫌でホラールに帰った日の翌日。
アマンダの家でショーユのお勧めレシピを教えるついでに、パトリックも加えて夕食をすることにした。ジェイミーだけに教えてアマンダに教えないのは不公平だし。
「……で、モリーソースだとちょっと魚の匂いが気になるという時に使うのがお勧めです」
「なるほどねえ。私は肉も魚も好きだから気にならないけど、魚はあんまり食べないってお客さんもいるもんね」
「その味わいを好む方もいるんですけどね」
ショーユを用いて俺が作ったのは、豚バラの煮込みと肉じゃが、野菜炒めである。それを炊き立てご飯でいただく。ああ料理になるとひときわ美味しい。
肉じゃがはモリーソースでも作っていたが、同じ料理を作った方が違いが分かるだろうと思ってのことである。
パトリックも既に以前に顔合わせしており、ザックと同じぐらい酒をたしなめるということで気が合ったようで、陽気に話しながらご飯をパクついていた。
「アマンダの店の弁当をよく買うから肉じゃがも食べてるが、こっちの方があっさりしてて俺の好みに合うな。あっちはあっちで美味いんだけど」
「俺もカレールーをはじめ、モリーソースやミソが売られるようになってから色んな味を体験することが増えたけど、モリーソースは肉に使うと、少し魚の匂いが気になることがあるんだよな」
「分かります。でも魚を焼いた時にかけると美味いっすよね。あと汁物とかいいダシが出ますし」
「それはあるな。ショーユだと別にブイヨンか何か必要になるかもなスープの場合」
パトリックとザックが語り合っているが、彼らも自分で料理をするタイプなので、主婦が語っているのと同じで参考になる。
牛や鳥のブイヨンがあるように、のちのち魚のブイヨンも別途開発するのも手だよなあ。
顆粒ダシがあったお陰で、自分が作るうどんや鍋も美味しく作れたのだから。
ああうどんやそばも食べたいよなあ。ラーメンも。
また心の中でモヤモヤと日本で食べたメニューが浮かび上がってくるのを必死に抑え込む。
作りたいものは山ほどあるが、今の俺の目的はルルガだ。
「ショーユは何にでも合わせられるので、ベーシックな調味料なんですよニホンでは」
「モリーソースみたいな独特なうま味はないけど全般的に使いやすいって感じだな。最近じゃ俺も食事や酒のつまみを考えるのが楽しみなんだよな。さてショーユを何に合わせるかねえ」
だいぶ切ない感じだった頭髪もすっかり地肌が目立たなくなり、以前にも増して陽気さが増したザックだが、アマンダがテイクアウトの店をするようになったので、畑仕事のあとは彼が料理をする機会も増えたそうだ。
「まあ元から嫌いじゃなかったんだけどな作るのは。ただあんまりバリエーションがなかったってだけでさ」
調味料が増えたことで、色んなチャレンジが出来て楽しいらしい。
「実験してたまに味つけに大失敗もするんだけどさ、まあそれも勉強だもんね」
とアマンダが笑っていたが、お互いおおらかで夫婦仲が良いのは何よりである。
うちの子三人、いやウルミは既に眠っていたのでダニーとジローと二人は、居間の床に置いた皿に載せられた、小さくカットしたリンゴやブドウをもっもっもっ、と静かに食べている。
あ、と思い出してアマンダたちに報告する。
「それでですね、カレールーもミソも、モリーソースもホラールやサッペンスで知られるようになりましたし、ショーユの開発を機会に、新たな町に営業に行くべきだと思いまして」
「へえ、悪くない考えだと思うけど、どこを手始めにするんだい?」
「ひとまずはルルガに行こうと思ってます。近々、数日留守にすることがあるかもしれませんので一応ご報告まで」
アマンダに答える俺を見て、パトリックは不思議そうに尋ねた。
「どうしてルルガなんだ? 大勢の人が住んでる王都ローランスに行っちまう方が、営業するなら早いんじゃねえのか?」
「エドヤはまだまだ小さな店ですから。いきなり王都に乗り込むなんて畏れ多いじゃないですか。それに、支店を出すにしても、家賃だって高そうですし」
「なるほど。言われてみれば確かにそうか。サッペンスより少し小さな町で偵察って感じだな」
口からもっともらしい大ウソを吐いてるが、ぶっちゃけ今は都会なんて興味ないのだ。
新鮮な魚介類さえあれば、それだけでいい。
俺の海鮮祭りは誰にも邪魔させん。
すると、俺の顔をじっと眺めていたパトリックが、
「なあケンタロー、俺も付いてっていいか?」
と言い出した。
ジルの屋敷の雨漏り修理も明日あさってには終わるらしい。
次の仕事を入れるまでの間、気分転換で少し休みを入れる心づもりでいたようだ。
「俺、ルルガって行ったことないんだよ。それに、ダニーたちも一緒だろ? 何かあった時に、誰かいた方がいいじゃねえか。仕事の邪魔はしないからよ」
海鮮祭りパーリナイトのためにはパトリックがいない方がいいのだが、確かに町を見て回るにも、彼がいたらダニーたちを預けることも可能だ。
初めての町だし、友人がいれば心強いという気持ちもある。しかし魚介類シャワーの宴。
俺は心の中で様々な葛藤を繰り広げ、気持ちを固めた。
「それは頼もしいです。是非一緒に行きましょう!」
俺の出した結論は、何とかうまいこと海鮮祭りにパトリックを巻き込むことであった。
アマンダの家でショーユのお勧めレシピを教えるついでに、パトリックも加えて夕食をすることにした。ジェイミーだけに教えてアマンダに教えないのは不公平だし。
「……で、モリーソースだとちょっと魚の匂いが気になるという時に使うのがお勧めです」
「なるほどねえ。私は肉も魚も好きだから気にならないけど、魚はあんまり食べないってお客さんもいるもんね」
「その味わいを好む方もいるんですけどね」
ショーユを用いて俺が作ったのは、豚バラの煮込みと肉じゃが、野菜炒めである。それを炊き立てご飯でいただく。ああ料理になるとひときわ美味しい。
肉じゃがはモリーソースでも作っていたが、同じ料理を作った方が違いが分かるだろうと思ってのことである。
パトリックも既に以前に顔合わせしており、ザックと同じぐらい酒をたしなめるということで気が合ったようで、陽気に話しながらご飯をパクついていた。
「アマンダの店の弁当をよく買うから肉じゃがも食べてるが、こっちの方があっさりしてて俺の好みに合うな。あっちはあっちで美味いんだけど」
「俺もカレールーをはじめ、モリーソースやミソが売られるようになってから色んな味を体験することが増えたけど、モリーソースは肉に使うと、少し魚の匂いが気になることがあるんだよな」
「分かります。でも魚を焼いた時にかけると美味いっすよね。あと汁物とかいいダシが出ますし」
「それはあるな。ショーユだと別にブイヨンか何か必要になるかもなスープの場合」
パトリックとザックが語り合っているが、彼らも自分で料理をするタイプなので、主婦が語っているのと同じで参考になる。
牛や鳥のブイヨンがあるように、のちのち魚のブイヨンも別途開発するのも手だよなあ。
顆粒ダシがあったお陰で、自分が作るうどんや鍋も美味しく作れたのだから。
ああうどんやそばも食べたいよなあ。ラーメンも。
また心の中でモヤモヤと日本で食べたメニューが浮かび上がってくるのを必死に抑え込む。
作りたいものは山ほどあるが、今の俺の目的はルルガだ。
「ショーユは何にでも合わせられるので、ベーシックな調味料なんですよニホンでは」
「モリーソースみたいな独特なうま味はないけど全般的に使いやすいって感じだな。最近じゃ俺も食事や酒のつまみを考えるのが楽しみなんだよな。さてショーユを何に合わせるかねえ」
だいぶ切ない感じだった頭髪もすっかり地肌が目立たなくなり、以前にも増して陽気さが増したザックだが、アマンダがテイクアウトの店をするようになったので、畑仕事のあとは彼が料理をする機会も増えたそうだ。
「まあ元から嫌いじゃなかったんだけどな作るのは。ただあんまりバリエーションがなかったってだけでさ」
調味料が増えたことで、色んなチャレンジが出来て楽しいらしい。
「実験してたまに味つけに大失敗もするんだけどさ、まあそれも勉強だもんね」
とアマンダが笑っていたが、お互いおおらかで夫婦仲が良いのは何よりである。
うちの子三人、いやウルミは既に眠っていたのでダニーとジローと二人は、居間の床に置いた皿に載せられた、小さくカットしたリンゴやブドウをもっもっもっ、と静かに食べている。
あ、と思い出してアマンダたちに報告する。
「それでですね、カレールーもミソも、モリーソースもホラールやサッペンスで知られるようになりましたし、ショーユの開発を機会に、新たな町に営業に行くべきだと思いまして」
「へえ、悪くない考えだと思うけど、どこを手始めにするんだい?」
「ひとまずはルルガに行こうと思ってます。近々、数日留守にすることがあるかもしれませんので一応ご報告まで」
アマンダに答える俺を見て、パトリックは不思議そうに尋ねた。
「どうしてルルガなんだ? 大勢の人が住んでる王都ローランスに行っちまう方が、営業するなら早いんじゃねえのか?」
「エドヤはまだまだ小さな店ですから。いきなり王都に乗り込むなんて畏れ多いじゃないですか。それに、支店を出すにしても、家賃だって高そうですし」
「なるほど。言われてみれば確かにそうか。サッペンスより少し小さな町で偵察って感じだな」
口からもっともらしい大ウソを吐いてるが、ぶっちゃけ今は都会なんて興味ないのだ。
新鮮な魚介類さえあれば、それだけでいい。
俺の海鮮祭りは誰にも邪魔させん。
すると、俺の顔をじっと眺めていたパトリックが、
「なあケンタロー、俺も付いてっていいか?」
と言い出した。
ジルの屋敷の雨漏り修理も明日あさってには終わるらしい。
次の仕事を入れるまでの間、気分転換で少し休みを入れる心づもりでいたようだ。
「俺、ルルガって行ったことないんだよ。それに、ダニーたちも一緒だろ? 何かあった時に、誰かいた方がいいじゃねえか。仕事の邪魔はしないからよ」
海鮮祭りパーリナイトのためにはパトリックがいない方がいいのだが、確かに町を見て回るにも、彼がいたらダニーたちを預けることも可能だ。
初めての町だし、友人がいれば心強いという気持ちもある。しかし魚介類シャワーの宴。
俺は心の中で様々な葛藤を繰り広げ、気持ちを固めた。
「それは頼もしいです。是非一緒に行きましょう!」
俺の出した結論は、何とかうまいこと海鮮祭りにパトリックを巻き込むことであった。
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