運命とは強く儚くて

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Ⅱ -6

2 皇帝目線

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 書斎で気を紛らわせるために執務を進めていると時計の鐘で顔を上げる。
もうこんな時間か…。

いつもなら部屋にいる時刻だ。
今は…部屋にいれない。

エディにあんなことを言ってしまった。
言葉足らずだったかもしれないが、ああ言わないと自分を抑えられない。
彼に大丈夫、と言われてしまえば大丈夫と思ってしまいそうだ。
もしそれで彼を失ってしまえば?

罪悪感のようなもので今はそばにいられない。彼の甘い匂いに共にいることを選んでしまいそうなので極力一緒にいられない。



「失礼致します」

今日はどこか別のところで寝るか、なんて考えていると少し急ぎ気味のカレルが尋ねてきた。
もうてっきり部屋に戻ってテオと過ごしているものと思っていたが…違ったのか。

「…なんだ」

眠いし、エディとは触れ合えないし、彼の事となると何もかも上手くいかない。
少しぶっきらぼうになったか。

「側妻を作ったのですか?」

「馬鹿なことを言うな…」

何故そんなことを?
こんな気持ちで側妻などありえない。

「…エディ様が酷く傷つかれている事はご存知てすか?」

う、と言葉がつまる。

「エディ様は、あなたに飽きられたと…あなたが側妻を持ったのではないかと思われています。」

「そんなことは…」

「あなたは知っているはず、あの方が自分を押し殺しやすいこと、皇帝と関係を持っているただ1人の自分が体を壊してしまったこと。…エディ様がご自身を責めていたことをあなたは知っているはず」

「そんなことはわかっている!」

わかっている、そんなことは十も承知だ。
思わず立ち上がり、声を荒らげてしまう。

「わかっている……だが…彼を失うのは彼に愛想を尽かされる以上に恐ろしい」

どさ、と椅子に座り頭を抱える。

「…失うのは恐ろしいことです。…ですが恐れるあまりに相手を囲い殺しては何もならない、ただ相手を殺してしまうのと同じと思いますよ」

いつもの仕事口調よりも少し同情するような口調。
カレルもわかるのかもしれない。何せテオは精鋭隊、一度は命を落としかけている。

エディと話さねば。

「…礼を言う。目が覚めた」

「いえ。…ところでこれらは明日の分のものですか?」

「あ、ああ。気を紛らわせたくてな、見直し頼む」

「…明日は面会などありませんから休みに致しましょうか」

「お前、テオと一緒にいたくなったんだろう」

「長く過ごせる時間が出来るのなら私は見逃しませんよ」

「…テオも休みにしておけ」

「かしこまりました」

しめた、とでも言いたげに笑みを浮かべたカレルを背に寝室へ急ぐ。
とは言っても、すぐそこなのだが。



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