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しおりを挟むふと時計を見ると6時。
潤也さんはいないし、適当に食べよう。
何を食べようかと冷蔵庫を見るが、それほどお腹も空いていない。昼はお手製サラダチキンのサラダしか食べていないが動いていないからだろう。
いつか買った冷凍の枝豆を見つけた。
枝豆とサラダの残りにしようと生地のカタログを見ながら手っ取り早く済ませてしまう。
バランスが悪いのはよく分かっている。が、1人だと作るまでもないから仕方がないのだ。
台所と仕事場を片し、風呂に入る。
お気に入りの入浴剤を入れて長時間入るのがお気に入りだ。風呂場も広くてのびのびと入れる。
なんだかんだしているといつの間にか時間が経ってしまう。
リビングのソファでお茶を飲みながらデザインのスケッチをしているとチャイムが家に響く。彼が帰ってきた。
スケッチブックとペンを置いて小走りで玄関に彼を迎える。
「おかえりかさい」
「あぁ、ただいま」
彼の顔が赤い。
心做しかいつもよりふわふわしている。酔っているのだろうか。表情も柔らかい。
「お風呂入りますか?それともお茶でも飲みますか?」
「風呂入る…」
「じゃあ用意しますね」
風呂の用意をしに行こうと踵を返すと後ろに重みがかかる。
ずっしりと背中にかかる彼の重みとふんわり香るお酒、彼の吐息。
「透…」
耳元で囁かれる。
心臓に悪い。こんなにも顔が近いだなんてまだ慣れてないのに。
「潤也さん…重いですよ、歩けますか?」
「歩ける…けど嫌だ」
低く掠れた声で駄々をこねる彼に母性が擽られる。
仕方なく、ソファに座ってもらおうとゆっくり誘導し、腰を下ろしてもらう。
水を持ってこようと立ち去ろうとした瞬間、手を引かれ彼の上にまたがる形になってしまう。いや、させられてしまう。
彼の膝に彼と向き合う形で…。
くい、と抱き寄せられる。
「潤也さん…?」
「透…可愛い…愛してる」
ちゅ、ちゅ、とショートキスを次々に落としてくる彼。…まさかキス魔だったなんて。
嬉しいのだが、いろいろ頭が追いつかなくてパンクしている。朝がやっと初めてのキスだったのに、こんなにも。しかも言葉まで…、その顔で言うのはずるい。反則だ。
「潤也さん、明日は仕事ですか」
「いや…休み…ずっと…一緒」
そう言い残してこてんと眠ってしまった。
なんて嵐みたいなんだろう。膝から降りように腕からなかなか抜けられない。
起きそうにはないし、抜け出しても彼を寝室まで運べない。
そっと彼から抜け出すと寝室から毛布を持ってくる。上着とネクタイ、ベルトを取って毛布をかける。明日休みなら大丈夫だろう。
なんだか1人残しておく訳にもいかず、彼の傍らに潜り込む。
キスの仕返しだ、と彼の腕の中に入る。寝れるだろうか…心臓が飛び跳ねている。
逞しい胸。
細身だが雄というものを感じさせる。シャツ越しに聞こえる彼の鼓動が落ち着いてしまったのかいつの間にか眠りについてしまった。
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