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...
しおりを挟む「まま!」
「ただいま、おじさんと楽しかった?」
「おもちゃ!」
撮影日前日、この日は用事を済ませて美容院に行ってきた。久しぶりに髪を切って綺麗にしてもらったが、やはり気分が上がる。
明日は撮影日。
今からでも緊張している。
そんなわけで今日は、兄の家で湧を預かってもらっていた。兄は実家の会社を継いでいるが、実家には住まずに一人暮らしをしている。
どうやらショッピングモールに連れて行ってもらったらしく、新しいおもちゃを片手に出迎えてくれた。
「楽しかったよ」
「兄さん、今日ありがとうね。おもちゃまでかってもらって」
「いいよいいよ、俺は甥っ子が可愛いんだよ。…タクシーで帰るのか?」
荷物をまとめて持ってきてくれた兄と話しながら湧を抱き上げる。
「ううん、行きはタクシー出来たけど帰りはバスで、買い物したいし」
「じゃあ送ってくよ。俺も買い物しないとだから」
基本、あまり兄には遠慮しないので送って貰うことにした。
チャイルドシートが無いのでどうしようかと思っていたら部下が置いていった車のチャイルドシートを取ってつけていた。
大丈夫だろうか。
兄の家は謎に色々なものがあるからよく分からない。買い物を済ませ、結局そのまま家まで送ってもらった。
家族内で自分と両親の関係が良くない中、兄とは仲が良かった。自分の政略結婚も反対はしてくれていた。
まあ、兄が海外へ出張の時に話が勧められたわけだが。
でも両親の進めたお見合いと結婚がなければ潤也さんとは会えなかったわけだし、孫は可愛いのか会ったら会ったで湧のことは可愛がってくれる。
よく分からないが。
「ただいま…。髪切ったのか?」
「凄く可愛い」と帰るなり髪を褒めてくれる潤也さんに湧が玩具を持って飛びつく。
「えいえいしゅゆ」
「えいえいな、分かった。ちょっと待っててくれ」
えいえいは湧が最近ハマっている遊びだ。簡単言えば怪獣ごっことかチャンバラごっこだ。
柔らかいスポンジ性の長いポールを2本引きずって彼が着替えてくるのをソワソワ心待ちにしている湧が可愛い。
この時の子が可愛いのは、頭とかが重たそうな拙い動きにオムツでもこもこしたお尻。
その後ろ姿がなんとも言えないほど可愛い。
湧が産まれてから家政婦さんを雇うのを辞めたが、忙しい日になると少し懐かしく思う。
待つのに飽きたのかソファの上でゴロゴロし始めた湧を後ろに洗濯物を畳んでいると潤也さんがリビングへ戻ってくる。
「湧おまたせ…っと、寝たか?」
「え?…ほんとだ…。疲れたんですね」
どうやらゴロゴロしているうちに寝てしまったらしい。冷えないようにタオルケットをかけてやって
2人で洗濯物を片すことにした。
「撮影は明日か」
「はい、凄く緊張してます…」
「大丈夫。…お前は綺麗だ、自信持ってやればいい」
優しく頭を撫でられると少し安心する。そのまま彼の胡座に無理やり潜り込むと「珍しいな」と言いつつ洗濯物を横に避けてくれた。
「…でも出来上がったやつ見られるの恥ずかしいですよ」
「俺は発売日当日に買うけどな」
…なんてこった。
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