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しおりを挟む「ただいま」
「ぱっぱ!」
「湧~、お出迎えありがとう。…ママはどこだ」
かわいらしくリビングに繋がる柵越しに玩具を持ってお出迎えしてくれた湧を抱き上げる。
それにしても透が来ないなんて珍しい。忙しいのだろうか。
まさか倒れてないだろうな。
慌ててリビングに入ると洗濯物の前で寝落ちしてる彼を見つける。
よかった。
それにしても…とぐっすり眠る彼を見て口が緩む。
物音がこれ程するのによほど疲れたんだろうなと思う。
最近は俺自身、社長就任の引き継ぎで夜が遅かったし湧を任せ切りだった。
今日は早く帰れたから良かった。
「まま、ねんね?」
「そうだな、しーだぞ」
「ちー」
カバンと湧を下ろして透をソファへ寝かせる。とりあえずにとタオルケットをかけてやり、間接照明を消した。
「おやつにするか」
「くっちー!」
「クッキーか、じゃあお手手洗おうか」
湧を連れて手を洗い、椅子に座らせる。
ベビーチェアに座っているとはいえ、大人しく座っているとはいえない。
歌を歌ったりお話したりする。
透は優しいが時に厳しく湧を育てている。彼にばかり任せていてはだめだな、と思いながらもいつも透があげている分をお皿に出して、お茶と一緒に出してみた。
ここからが勝負。
沢山詰め込まないようにだとか適度にお茶を飲ませたり、慎重に。
「たぁましゅ」
「どうぞ、召し上がれ」
なんていい子なんだうちの子は。
透の教育の賜物か…!!さすがは透…!
今日入手した彼の雑誌写真を携帯で見返しながら可愛くクッキーを食べる我が子を眺める。
最高。
「美味しいか?」
「ん!」
もぐもぐと美味しそうにボロボロこぼす湧をカメラに収める。
可愛い。
「ちゃんとお茶も飲もうな」
「たゃたゃ」
なんとも言えない発音だな。
その後も夢中で湧を見ているとあっという間に時間も過ぎてしまう。
とりあえず洗濯物を畳んで、夕飯の準備か。
冷蔵庫を見たところ、まだ準備はしていなかった。
今日はハンバーグだろうか、合挽き肉が冷蔵庫で解凍されていたしハンバーグの素たるものが置かれていた。
ハンバーグの他には何を作れば良いのだろう。
冷蔵庫を見て考えれば野菜を使うべきだが、彼も彼で考えて買い物をしているはず、勝手に使っては如何なものか。
ダンボールにあるじゃがいもでマッシュポテト、野菜室の使いかけの野菜で野菜スープで大丈夫か。
マッシュポテトと野菜スープなら少量だけ分けて薄味やわらかめにすれば湧も食べられる。
確か湧用のやわらかめご飯は1人用の炊飯器で作る。
いつも透が自分達用に炊くのは3合。
大丈夫、いや大丈夫か。
自分も仕事に出ているとはいえ、透も働きながらこうやって毎日しているのも大変だ。
尊敬する。
そんなことを考えているとすかさず湧からお茶のおかわりコールが入ってしまった。
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