こっち見てよ旦那様

文字の大きさ
93 / 219
30

..

しおりを挟む


「ただいま」

「ぱっぱ!」

「湧~、お出迎えありがとう。…ママはどこだ」

かわいらしくリビングに繋がる柵越しに玩具を持ってお出迎えしてくれた湧を抱き上げる。
それにしても透が来ないなんて珍しい。忙しいのだろうか。

まさか倒れてないだろうな。

慌ててリビングに入ると洗濯物の前で寝落ちしてる彼を見つける。
よかった。

それにしても…とぐっすり眠る彼を見て口が緩む。
物音がこれ程するのによほど疲れたんだろうなと思う。
最近は俺自身、社長就任の引き継ぎで夜が遅かったし湧を任せ切りだった。
今日は早く帰れたから良かった。

「まま、ねんね?」

「そうだな、しーだぞ」

「ちー」

カバンと湧を下ろして透をソファへ寝かせる。とりあえずにとタオルケットをかけてやり、間接照明を消した。

「おやつにするか」

「くっちー!」

「クッキーか、じゃあお手手洗おうか」

湧を連れて手を洗い、椅子に座らせる。
ベビーチェアに座っているとはいえ、大人しく座っているとはいえない。
歌を歌ったりお話したりする。

透は優しいが時に厳しく湧を育てている。彼にばかり任せていてはだめだな、と思いながらもいつも透があげている分をお皿に出して、お茶と一緒に出してみた。
ここからが勝負。

沢山詰め込まないようにだとか適度にお茶を飲ませたり、慎重に。

「たぁましゅ」

「どうぞ、召し上がれ」

なんていい子なんだうちの子は。
透の教育の賜物か…!!さすがは透…!

今日入手した彼の雑誌写真を携帯で見返しながら可愛くクッキーを食べる我が子を眺める。
最高。

「美味しいか?」

「ん!」

もぐもぐと美味しそうにボロボロこぼす湧をカメラに収める。
可愛い。

「ちゃんとお茶も飲もうな」

「たゃたゃ」

なんとも言えない発音だな。
その後も夢中で湧を見ているとあっという間に時間も過ぎてしまう。

とりあえず洗濯物を畳んで、夕飯の準備か。
冷蔵庫を見たところ、まだ準備はしていなかった。
今日はハンバーグだろうか、合挽き肉が冷蔵庫で解凍されていたしハンバーグの素たるものが置かれていた。

ハンバーグの他には何を作れば良いのだろう。
冷蔵庫を見て考えれば野菜を使うべきだが、彼も彼で考えて買い物をしているはず、勝手に使っては如何なものか。
ダンボールにあるじゃがいもでマッシュポテト、野菜室の使いかけの野菜で野菜スープで大丈夫か。
マッシュポテトと野菜スープなら少量だけ分けて薄味やわらかめにすれば湧も食べられる。

確か湧用のやわらかめご飯は1人用の炊飯器で作る。
いつも透が自分達用に炊くのは3合。
大丈夫、いや大丈夫か。

自分も仕事に出ているとはいえ、透も働きながらこうやって毎日しているのも大変だ。
尊敬する。

そんなことを考えているとすかさず湧からお茶のおかわりコールが入ってしまった。

しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

運命じゃない人

万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。 理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

処理中です...