こっち見てよ旦那様

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咲夜の恋路

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「…あるけど、どうしようもないしなって。幸せなことに僕自身は事件とか酷い目には会わなかったけど、僕らが学生の時はまだΩの偏見も多かったから」

「…Ωの人がΩってことを隠したいがために首輪を付けないなんてありますか?」

「ないとは言いきれないけど…凄く危険だね。…なんで?そんな子がいたの?」

真剣な面持ちで尋ねてくる透さん。話してもいいものか悩んでしまう。

「…僕が首突っ込んでいい話かは分からないけど、その子にはその子なりの理由があると思うよ。…けど軽い気持ちでそんなことするはずがない」

ありがとうございます、と透さんにお礼を言って部屋に戻る。
何度携帯を見てもれんからは何も来ていないし、SNSにログインした跡もない。何を送っても既読もつかない。

それでも蓮にメッセージをもう一度送った。
今は金曜日の夜。

2日間は会えない。…もちろん、会いたいが。





しかし、あろうことか俺は月曜日に熱を出してしまった。
理由は分かっている。

夜、寝ようとすれば考えすぎて寝れず、一旦落ち着くために勉強をすれば夢中になりすぎて寝ることを忘れる。
挙句の果てに机に突っ伏して寝落ち。

普段からそんな無理はしないから体調を崩すはずだ。


「今日は休みだから何かあったら携帯で教えてね」

「…ありがとうございます…」


…不甲斐ない。
蓮は学校に来ているだろうか、そんなことを未だに思いながら重い瞼を閉じた。












「…れ…ん…」

「…何」

どれほど時間が経っただろう。
熱のある頭で寝起きの中、呻くように蓮の名を呟くと返事が返ってくる。
遂に幻聴まで…

「…起きた…?」

幻聴…?!

「れ、蓮?!」

あまりの驚きに勢いよく起き上がると座っているにも関わらずよろめいてしまう。
頭が痛い…。

「…バカ…何してんの…寝て」

蓮、いつの間にこんなに力が強くなったのか。…俺が今非力なだけか。

「蓮…あのさ…」

ずっと考えていた事を話すべく口を開くとそのまま目を彼の手で覆われてしまう。

「…俺が先…。…俺が言わないと駄目…だから」

「…分かった」

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