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しおりを挟む「湧、忘れ物は?」
「ない!!」
「残念、ハンカチと給食セット忘れてまーす」
「あちゃぁ」
あちゃー、と絵本のセリフがブームらしい。
幼稚園の肩掛けカバンには必要なものより、大事そうに昨夜書いたお手紙と折り紙が鎮座している。
海來君あてらしい。
2人で決めたのか、「みーくん」「ゆーくん」と2人だけの呼び名を作って呼びあっている。
幼稚園の話を聞けば必ず「みーくん」という言葉が聞こえてくるほどだ。
「透、やっぱり咲夜、熱がある。学校には連絡したが…たまに様子を見てやってくれると助かる」
しんどそうだったもんなぁ、と咲夜君の朝の様子を思い出す。
何か考え事をしているようだったし遅くまで起きていたから体調を崩したのだろう。
幸い、自分は今日は休みだから安心できるだろう。
「はい、任せてください。…じゃあ2人とも、行ってらっしゃい」
湧に行ってらっしゃいのハグをして、潤也さんにも行ってらっしゃいのキスをする。
2人が出ていったのを見届けると、咲夜君の部屋をノックする。
「大丈夫?…薬飲むのに何かお腹に入れなきゃいけないんだけど、食べれそう?」
「少しなら…多分…」
熱もあるし大変だ。冷えピタを替えて氷枕を置いて台所へと戻る。
朝ごはんの用意も片付けなくては。
潤也さんのお弁当に詰めたお米の残りを鍋にかけて手早くお粥を作って少し冷ましておく。
ミルク粥風に少し味をつけたのだが食べてくれるだろうか。
スポーツドリンクのペットボトルと薬と水、お粥を持って行くと少し食べてくれた。
無事に薬も飲めたし、あとは寝るしかない。
「じゃあ、僕は休みだから。なにかあったら携帯でもなんでも言ってね」
「ありがとうございます…」
先日咲夜君に聞かれたことが頭をよぎる。
何故そんなことを聞いたのかは気になるところではあるが、あれ以上は聞くべきじゃないのかもしれない。
とりあえず、やるべき事を終わらせなければ。
なるべく煩くならないように掃除や洗濯機を回したりして午前を過ごした。
昼頃に昼食をどうするか聞くために部屋を覗くと眠っていたので様子だけみてまた後から行くことにした。
結局、咲夜君は2時過ぎに朝のお粥の残りを食べて、薬を飲んでまた眠ってしまった。
「たぁいまー」
「手洗ってね」
3時半ほどだったろうか、湧を迎えに行って家に着くと家の前に蓮君がいた。
「蓮君、だよね」
「プリントとか…届けに来ました」
そう言ってファイルに入ったプリント類を手渡したかの目の下には濃いクマが。
心做しか疲れているようだ。
「…じゃあ…」
「待って、良かったら上がってって?…」
「でも…」
「ケーキあるんだけど食べきれなくて」
「…行きます」
これじゃあ怪しいおじさんだ。
なんて思っていたが、ケーキを出した途端に首を縦に振った蓮君。
それでいいのか…?!
早く早くと急かす湧を連れて蓮君を家に引き入れた。
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