こっち見てよ旦那様

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「いただきます…」

「うん、召し上がれ」

ぽやん、とした雰囲気の子だ。独特の雰囲気というか、流されていきそうで自分の流れを持っているような…不思議な子だ。

けれど美味しそうにケーキを食べてくれている。
適度に細くて綺麗な骨格…美人さんだ。少し長めの髪も簾のようにかかっていていい雰囲気を出している。

…この子相手に服が作りたい…と思ってしまう。デザインの案が浮かんできてメモしたくなる衝動を抑えつつ、夢中でケーキを頬張るゆうがこぼさないように見ていると#蓮__れん_#君がおもむろに口を開く。

「…咲夜さくやは…元気ですか?」

「今は寝てると思うよ。…朝は熱があったけどもう下がってて、あとは回復待つだけかな」

湧を迎えに行く前に様子を見た時は、熱は下がっていた。
風邪ではなく、単なる体調不良だったらしい。

「…良かった…です…」

ほっとした様子だが、どこか思い詰めるような表情の蓮君。

「…何か考え事をしてたみたいで、それで体調悪くなったみたいなんだけどね。…何か学校であったのかな」

「…。」

なんて、話してはくれないかな。
2人は共通の事で悩んでいると何となく考えてしまう。
口出しするべきじゃ無かったしもしれない。

「…ご、ごめんね、変なこと聞いて…」

黙ってしまった蓮君のお皿を謝りながら下げようと立ち上がると再び彼が口を開く。

「…透さんは…Ωですよね」

「そうだね…」

「…俺もΩなんです…ほんとは」

「…首輪は?」

彼の首には首輪が見当たらない。
確かに、制服の下にはハイネックを着用しているようで、項は隠れているがそれで事故が防げるとは思えない。

「…俺は…6年生の時に…Ωって診断されて。…咲夜と会うまで首輪はしてました…」

「咲夜君と番なの?…」

「…違います」

「…お説教みたいになっちゃうかもしれないけど、Ωにとって首輪は大切だよ?…でも蓮君にも事情はあるんでしょ?」

「…」

迷いながらも小さく頷く蓮君。

「…咲夜君に、話さなきゃいけない事があるんだよね?」

「…はい」

「じゃあ、行っておいで。…これでも僕、Ωの先輩だから良かったらなんでも聞いてね」

「…ありがとう、ございます」

小さく笑って立ち上がった蓮君の顔は少しスッキリしていた。
廊下に出ようとした蓮君を「ちょっと待って」と呼び止め仕事部屋から首輪を持ってくる。

「これ、俺が昔に使ってたやつだけど…一応」

「ありがとうございます…」

大人しく首輪を受け取ってつけた彼を後ろから見守る。

…頑張れ…。


本人たちは深刻に悩んでいるようだけれど…なんだか青春、という感じで少し羨ましい。

「ままぁ」

「はーい」

なんて感傷に浸る暇もなく、湧に呼ばれてしまった。
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